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住まいかたの民主化

篠田真貴子| エール |『LISTEN』監訳

昨日『unito』(ユニット)を展開する近藤佑太朗さんと対談をしました。

『unito』は、借りている住まいの家賃が外泊するほど安くなるサービスです。

『unito』のことをきいて、私はかつて3年ほどアメリカの大学院に留学をしていた時のことを思い出しました。1年目は夫は東京にいて、私は単身渡米していたんですね。ですので、大学院の夏休みの3ヶ月や冬休み1ヶ月、東京に戻っていました。その間、アメリカの住まいは借りっぱなしです。家賃がもったいないなと思っていました。その後、東京で仕事をするようになってからも出張が多い時期がありました。あの頃に『unito』があったら私も利用したかったな、と思いながら、近藤さんのお話を伺いました。

近藤さんは、サービス立ち上げ時は私がイメージしたような、出張が多いビジネスパーソンの利用を想定していたそうです。ところが蓋を開けてみたら、利用者は東京の郊外に実家がある20代の独身者が多かったそうなんですね。そういう人は、実家から通おうと思えば通える、だけど通勤に片道一時間半以上かかるのは結構きつい。通勤に便利れな都心のおしゃれエリアに暮らしたいけど、家賃が高い。こういう人たちがいわばセカンドハウスのように都心にある『unito』を借りているんだそうです。また、恋人と時々一緒にいたいけど同棲はずっと一緒だからいや、というニーズもあるとか。

外泊する場合は、事前に届けておくと、その期間その部屋は宿泊施設として使われます。その場合は3日前までにアプリで登録するだけでオッケー。物件には家具や家電が備え付けられていて、入居も退去も身軽です。物件から退去する場合は、20日前までに申請すれば良いとのこと。つまり、家賃が下がるだけでなく、手続きや家電の購入・運搬といった「住まいを移ること」にまつわる面倒なことがラクになっているのですね。

ここまで近藤さんに教えてもらって、私は「そういえば…!」と思い出しました。

昔は洋服は、今よりずっと高価だったことを。

ユニクロやファストファッションが広まる前の時代、ざっくり25年前とかでしょうか。カジュアルな服もスーツも、肌感覚としては今の3倍ぐらいの価格帯でした。男性のリクルートスーツ、今だと2〜3万円ぐらいだと思いますが私の世代が就職活動した頃は7〜10万円ぐらいしたんじゃないでしょうか。ユニクロがフリースを1900円で売り出したのは、衝撃でしかなかったです。肌着より安い…って思いましたもん。

私よりさらに1世代前の私の母が若い頃は、洋服は地元のお裁縫の得意な人に縫ってもらっていたそうです。既製品の方が高価だったと言ってました。縫ってもらうということは、すぐに手に入らないし、手間がかかりますよね。一張羅という言葉がありますが、衣服が高価な時代は、外出用の服は本当に一着しか持てなかった。それを手入れし直しながら、ずっと着ていたようです。

現在のように洋服の価格が下がり、既製品が豊富にあってパッと買えるようになったことで、ファッションを多くの人が気軽に楽しめるようになりました。ファッションが好きな人は服をたくさん買えるし、そうでもない人もこざっぱりした服が簡単に安く手に入ります。

大家さんが住まいを貸す賃貸住宅のビジネスモデルは、江戸時代から基本的に変わっていないと、近藤さんは教えてくれました。『unito』のような、従来の賃貸とも持ち家とも異なるサービスは、私たちの家賃コストを下げ、パッと引っ越しをしやすくしてくれています。今、私たちが当たり前だと思ってる住まいかたは、洋服でいうと、かつての一張羅を長持ちさせようとすることに似ていると思いました。これからの新しい「住まいかたサービス」によって、私たちが服を複数持って毎日違ったスタイルを楽しむように、気軽に複数の拠点を利用するという選択肢が開かれていくんだと思います。

加えて、洋服が「試着」できるように「試し住み」がしやすくなる、という可能性もありますね。私は多拠点を移動したいという欲求はあまりないのですが、「試し住み」はしたいですね。その街での暮らしやすさを試したいし、その間取りも試したい。

ファッショニスタならぬ「住まいニスタ」は独自のセンスで素敵な多拠点生活をする。そこまでじゃない人も、自分によりフィットした住まいかたが簡単に安く実現できるようになる。

今でもスーパーセレブは世界各地に住まいを持ち、多拠点の生活をしています。プチセレブなら、平日は都心、週末は別荘、でしょうか。彼らは、複数の住まいを持っているから「試し住み」に近い体験もできています。「『unito』のようなサービスを通して、これまではセレブしかできなかった多拠点の暮らしを一般の人たちにひらく」のが、近藤さんがイメージする未来像です。

それを聞くと、今はまだ、賃貸であれ持ち家であれ、住まいを決めるのはおおごとでいろいろ考えて決断するもの、という前提が強いですね。

賃貸か持ち家か、という次元ではなく、これから起きるのは「住まいかたの民主化」なのかもしれません。楽しみです。

今日は、以上です。ごきげんよう。

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篠田真貴子| エール |『LISTEN』監訳
真(まこと)てふ 貴きものを心にて 永き世ゆかむ 人と和みて Listen, learn, and love life エール株式会社取締役 https://www.facebook.com/makiko.shinoda