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採用面接は、ただ能力を判定する場ではない。「なぜ」の繰り返しは相手をよく知る手段。

皆さん、こんにちは。今回は就活の「面接」について書かせていただきます。

面接でとんでもなく意地悪な質問をされることがある。俗に「圧迫面接」などと呼ばれるが、面接官はなぜそんな質問をするかを考えてみよう。
まず、本当に性格が悪い人たちが多いだけの場合もあるにはあるが、それは少数だ。
次に、意図的に「圧迫面接」をしているケース。実は圧迫面接で調べられることは、たった2つだけだという。1つは「度胸=ストレス耐性」、そしてもう1つは「小頭の良さ=機転」だ。この2つを調べたいと思う企業はそこそこ多い。
ハードな営業などをこなすような仕事ができるかどうかを見ているのだろう。適していなければそこで落ちる。合っていない人は、そうした企業に入るべきではないから「それで結構」と思うべきだ。
難しいのは、意図せずになされる意地悪な「圧迫的質問」だ。なぜそんなことをするのか。以下、事例で考えてみよう。
あなたが自分の性格について「協調的でみんなと助け合うのが好きです」と語ったとしよう。その時に「いや、うちではライバルを蹴落としてでもトップになりたいと考えるタイプじゃないと困るんだ」と言われたら、あなたはどうするだろうか。
多くの点で会社とあなたはアグリーな関係で、仕事内容も自分の大好きなもの。既に数名、面接官やリクルーターとも会っているが、誰とも関係は良い。さらに自分の仲良かった先輩も入社して、楽しんでいるという。そう、「合っている」面は多々あるのに、だ。
もし、どうしても入りたいからと「ええ、私、そういう指示があれば、頑張って一番を目指すタイプです。実際、サークル活動の時に…」と答えてしまったらどうだろう。協調的でみんなと助け合うという前言と真逆な話になってしまう。
そうすると、面接官には「相手に合わせてころころ話を変える迎合的な人物」に見えるだろう。かといって「私はあくまでみんな仲良くでいきたい」とでも答えれば、明らかにタイプ違いで評価は落ちる。
答えを言おう。こんな時も重宝されるのが、沈黙を打破する際にも役立つ「聞き返す」という行為だ。
この場面では、相手の否定的な発言に「どのような場合」「どのくらいの頻度で」「どのような理由で」そうした場面が発生するかを尋ねればいい。
その問い掛けに対する面接官の答えを反復し「つまり○○な状況で要望されるわけですね。日常は仲良しでいきますが、そうした状況ならば私も競争大好きです」などと答えるわけだ。
圧迫してくる難敵に対しては合気道よろしく、相手の力を利用して返すことに尽きる。


記事にあるような『圧迫面接』というものを、果たして今の時代にどのくらいの企業が意図的に実施しているのか、個人的には非常に懐疑的ではありますが、

「●●(会社名)、圧迫(面接)だったー」

というような学生さんたちの口コミをよく見ますので、実際にはそういった面接は多いのかもしれません。
または、企業側は決して“圧”をかけるような質問をしているわけではないのに、面接を受ける側が、「厳しい質問」「怖い雰囲気」などと感じることがあるのかもしれません。

どちらにせよ、「圧迫面接」という手法をとるかどうかは別として、企業側が採用面接を通じて「その人のストレス耐性」を見たい、というのは事実だと思います。

では、なぜ企業は、候補者の「ストレス耐性」を見る必要があるのでしょうか。

■面接でストレス耐性を見るのはなぜか。

まず前提として、ストレス耐性を見るために「圧迫面接」をするというのは間違っています。企業の印象が悪くなるだけでなく、候補者の本来の姿も見えづらくなってしまうと思います。プレッシャーをかけたり、意見を否定したりせずとも、ストレス耐性を見極められる質問方法はいくらでもあります

ストレスを受けやすい人や悩みを抱えやすい人は一般的に、働いていくうちに身体の不調が出やすくなります。身体を壊してしまうと、当然業務に支障が出て、能力を発揮できず、活躍や成長どころではなくなってしまいます。
だからこそ企業はメンタルヘルスの観点からも、ストレス耐性が高い人を採用しようとするのですが、一概に耐性が高い人材だけを採用する、というのも実は間違っていると思います。
大事なことは、「ストレスに弱い人を排除する」「一切採用しない」ということではなく、仮にストレスに弱い人であっても、その人の強みや得意なことが企業の成長につながるのであれば積極的に採用すべきであるということです。さらに、その能力を発揮させてあげられるチームや組織体制をいかに作るかということに尽力する必要もあります。
「ストレス耐性の高さ」だけを採用基準に設定すると、「圧迫面接」のような手法を招きやすく、多様性のない、間違った採用につながりかねません

■圧迫面接のように見えるのは「なぜ」を繰り返すから

冒頭で申し上げた通り、「圧迫面接」という手法が企業にもたらすメリットはほぼありませんが、もし実施している企業があったとして、またはそんなつもりがないのに候補者が「圧迫面接だ」と感じやすいのは、それは一問一答形式の面接ではなく、一つの質問に対する答えから、さらに質問を繰り返すことで、より深い思考を探ろうとしているからではないでしょうか。

たとえば

「志望動機を教えてください」

というシンプルな問いに対して、その返答を踏まえて、

「そう思うようになったきっかけは何ですか」
「他の会社でもそれは実現できそうだけど特に当社を希望している理由は何ですか」
「その目標を達成するために、入社してどのようなスキルや経験や身につけていきたいと考えていますか」

というように、「なぜ」「何を」「どのように」など、さらに質問が飛んでくるような面接を経験したことのある人は多いと思いますが、それはむしろ「候補者のことをもっと知りたい」という興味関心の表れだと思います。

逆を言えば、マニュアルに沿った一問一答式の面接では十分に候補者の性格や人柄、考え方などを理解しきれず、面接以外の評価項目(たとえば学歴や過去の実績、エントリーシートの内容)を重視して面接の合否を決めている会社だと言えるでしょう。

「なぜ」を繰り返し質問されるからと言って、決して「考え方にダメ出しをされている」とネガティブに受け取らず、「もっと自分を理解しようとしてくれているんだ」とポジティブに捉えると良いと思います。

面接では、コミュニケーション力や思考力などのスキルの高さを判断していることは事実ですが、どちらかというと、その人の思考や行動パターン、どんな価値観を持っているかを把握しようとしているだけなので、「圧迫面接に耐えられればストレスやプレッシャーに強い人だと思ってもらえる」「このワードを言えば確実に合格できる」「コミュニケーションさえ上手なら面接は百戦錬磨」というようなことはないのです。

■ストレス耐性以外に面接官が見るポイントは?

ストレス耐性以外に面接官が重視しているのは、以下のような項目です。
(各企業の採用基準によって当然異なります。)

・会社のビジョン/ミッション/バリューに共感しているか 
・会社のカルチャーにマッチしそうか
・会社での活躍イメージが沸くか
・将来やりたいこと、実現したいことがあるか
・中長期的な目標が明確か
・目標を達成するために考えて行動できるか
・自分の考えを明確に言語化できているか
・強みや得意なことを自分で把握できているか
・チャレンジ精神があるか
・過去の失敗経験から学びを得ているか
・自分本位ではなく、チームで成果を最大化するために行動できるか
・自ら考え行動するなど、自走できるか

このように書き出してみるときりがないくらいたくさん出てきますが、「高いストレス耐性を備えているか」というのはたった一つの項目に過ぎません。もちろんその項目が一番重要であると考える企業はあるかもしれませんが、それは会社の企業風土や業務内容との関連性が高いからだと思います。

採用選考の面接は、「候補者が企業に必要な能力を備えているか」の見極めを目的としていますが、能力の見極めは、面接の30分程度の時間では限界があります。そこで、最低限見ているポイントは、「カルチャーにマッチするか」です。その会社のビジョンや企業風土に合っているか、入社後のミスマッチはないか、という軸を特に重点的に見ています。
当社の新卒採用の場合は特に、「必要な経験やスキルがある」よりも「自社の社風やカルチャーに合いそうか」をよく見て選考活動を行っています。

知識やスキルなどの見えやすい情報だけでなく、思考パターンや価値観などの見えにくい情報を引き出すようにすると、より自社に合った活躍確率の高い人材の採用につながるだけでなく、価値観のミスマッチを抑制することにもなります。

このように、各企業が重要視している評価項目(面接での質問項目)を知ると、その会社がどんな人を採用しようとしているのかがよく分かります

『面接』というプロセスは、企業が候補者を見極めるものだけでなく、候補者もその企業が自分に合っているか見極めるものでもあるのです。面接官として出てくる社員は、会社の顔としての役割を担っていますので、面接を通して、どんな会社であるかの判断材料にすると良いと思います。

■良い面接官とは

面接官は会社の顔としての役割を担っていると書きましたが、面接をする側に必要なスキルを記載します。

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▽学生が話しやすい存在になる
・相手の本音を引き出せる
・相手が話しやすい雰囲気を作れる

▽学生に気づきを与えられる存在になる 
・相手にとって必要な情報を適切に提供できる
・相手に適切なフィードバックができる

▽学生に会社の魅力を伝えられる存在になる
・相手を会社のファンにさせられる
・相手の意思と会社の意思(ビジョンや目標)をリンクさせられる

▽学生に決断を促す(背中を押してあげる)ことができる存在になる
・迷いや悩みを払拭し、意思決定を促せる
・入社への動機づけができる
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一回の面接で一人の面接官が上記全ての役割を担うことは難しいですが、基本的に面接は複数回あることが一般的なので、それぞれの面接官で役割分担をしながら、学生に“選ばれる”ための場にすることを意識する必要があります。面接官は「選ぶ」立場であると同時に、「選ばれる」立場でもあること常に理解しておかなければいけません。

面接を受ける側もこの状況を理解した上で、変な言い方になってしまいますが、面接官をうまく利用すると良いと思います。本音で話し、悩みを相談し、適切に情報を収集し、適切にフィードバックを受け、本当にその会社が自分に合っているか、面接や面談を通して意思決定のための材料を増やしていくといいでしょう。


最後に、これから就活で面接を経験される学生の皆さんに知っておいていただきたい点を、簡単にまとめます。

① 「なぜ」を繰り返される面接は決して珍しくない。自分の考えをまとめておく。
② 面接は、お互いが自分に(自社に)合っているかを見極める場。
③ 面接は、正しい答えを言う場ではなく、自分とはどんな人間かを伝える場。
④ 面接官は、「能力」よりも「人柄/人間性」「価値観」を重視している。
⑤ 本気の想い(熱意や熱量)は、人の心を動かす。

是非、これからの就職活動における面接の参考にしていただき、面接を「合否をつけられる怖い機会」と捉えるのではなく、「会社をより深く知る機会・自分という人間を知ってもらう機会」と捉え、楽しみながら臨めると、良い結果につながる可能性が高まるのではないでしょうか。



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