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未来学者エイミー・ウェブが示す315のテックトレンド〜 #SXSW 動画アーカイブ

現在テキサス州オースティンで開催されているテクノロジーとスタートアップの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」では、数多くの注目のプレゼンテーションが行われていて、ありがたいことにそのうちのいくつかはアーカイブ動画として既に公開されています。

その中の一つ、未来学者であり、ニューヨーク大学のビジネススクールの教授、そしてシンクタンク「Future Today Institute」の創業者であるエイミー・ウェブさんによる、2019年のテックトレンドについてのプレゼンテーションが気になり、視聴してみました。

エイミー・ウェブさんのことを国内で知らない人もいるかもしれませんが、彼女は毎年秋に開催されるデジタルジャーナリズムに関するカンファレンス、そしてSXSWで10年以上もテックトレンドについての人気プレゼンテーションを継続して行っていて、2017年には邦訳された『シグナル:未来学者が教える予測の技術』の著者でもあります。

幅広い分野に渡り圧倒的な情報量を科学的に分析して、そこから未来に向けての戦略的アドバイスを多様な業界向けに提供していることで知られているまさにフューチャリスト(未来学者)です。動画はこちらから視聴可能です(60分)

今回で12年目を迎えるSXSWでのプレゼンテーションに併せたタイミングで公開された『2019Tech Trend Report』には26業界、315もの注目テックトレンドがカバーされています。プレゼンテーションの中ではその中でも特に注目の29のトレンドに触れ、自分が所属する業界、のみならず関連する業界、テーマに関するトレンドに注意を払いながら、5年後、10年後に向けて戦略を立てることの重要性が述べられています。

315ものトレンドは目次を見るだけでもくらくらしそうです。ただ、過去3年ほど毎年彼女のプレゼンテーションを視聴する中で目にして、耳にしたものが、その後半年後、1年後など経ってから実際にニュースや街の中で目にするようになる、という経験は何度も経験しています。興味ある方は是非チェックしてみてはいかがでしょうか。

レポートの主要な点としては以下の7つのテーマが紹介されています。

①プライバシーの死
②VSO(ボイス・サーチ・オプティマイゼーション) は新しいSEO(サーチ・エンジン・オプティマイゼーション)
③ビッグ9(AI関連のビッグプレイヤー9社)
④パーソナルデータの記録(Personal Data Record)
⑤AI分野だけにとどまらない中国の躍進
⑥世界中の政治家が新しい科学技術のから新たに生まれる課題に対処することの準備ができてない
⑦2019年を通じた更なる合併・統合

プレゼンテーションの中で印象的だったのはウォルマートが一件小売業界と関係なさそうなゲノム編集、4Dプリンティング、スマートファーミング(レタスの室内栽培など)、グリーンテクノロジーに注意を払っていて、その理由がアマゾンによる世界的な食物供給分野での巨大な影響力の可能性につながる点です。
また、音声への注目という点に関してはアメリカの家庭のおよそ40%が2019年末までにスマートスピーカーを持つようになるという調査や、2021年までにマシンとのやりとりの半分は音声でされるようになるという調査を紹介しています。

電子レンジにポップコーンを温めることから...

なんと「アマゾン・ホーム」まで既に存在して販売されている、という事実に驚かされます。

エイミー・ウェブさんのプレゼンテーションはいつもシナリオプランニング的に楽観的な未来、中立的な未来、そして破滅的な未来が起こる可能性を示すことで注意換気を促します。今回もこのままでいくと巨大IT企業にすべてのデータを奪われ、プライバシーを失い、民主主義が脅かされるリスクを指摘しています。そして、そうした破滅的な未来を回避するためにも今から未来に備え、一人ひとりが未来学者として将来のテックトレンドに注意を払い、行動していくよう訴えかけています。

そのためにも『2019Tech Trend Report』の全文、そして付随する資料がオープンソースとして誰でもダウンロードして活用、シェア出来るようにウェブで公開されています。

また、AI分野に関して今後注目すべき9社(マイクロソフト、グーグル、フェイスブック、アマゾン、アップル、IBM、バイドゥ、アリババ、テンセント)についてに分析を描いた「The Big Nine」も今月始めに出版されています(未邦訳)。

圧倒される情報量ですが、少しずつレポートと書籍を読み進めてみたいと思います。一人ひとり、誰もが未来学者になれる、というエイミーさんの視点にはとても共感します。量が多いこともあり、もしブッククラブ的に一緒に読み進めることに興味ある方がいらしたらぜひお気軽にご連絡ください

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