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テクノロジーを使う気がない!?日本のサムライは国際競争で生き残れるか?

「在宅勤務、疲れ」と言っていて競争力を保てますか?

テレワークや在学勤務が本格的に広がりを見せ始めた3月から早くも4カ月が経とうとしています。その反応は、「なんだ、意外と在宅勤務も行けるじゃないか」という声もあれば、「やっぱり在宅じゃ駄目だ」という正反対の声も聞こえます。長引く現状に対し、「さすがにちょっと疲れてきたな」と感じる人も多いのではないでしょうか。

そのような中、テレワークによる過剰労働やテレワーク鬱と呼ばれる現象が社会的な関心を集めています。

このように突然の行動様式の変化についていけずに疲れを感じたり、酷いときには不適応を起してしまう現象は世界各地で見られているようです。米国でも在宅勤務による負の影響を問題視する論考が出ています。

このような功罪が明らかになっている在宅勤務ですが、ビジネスで重要なことはしっかりとした成果を出せているかです。特に、労働生産性の低さが問題となっている日本では、在宅勤務によって労働生産性が更に低下することになっているようでは目も当てられません。

在宅勤務の生産性について、レノボが興味深い調査結果を報告しています。2020年5月に、世界10カ国(日本、中国、英国、イタリア、フランス、アメリカ、ドイツ、メキシコ、ブラジル、インド)で働く企業・団体の従業員及び職員20,262名を対象として「コロナ禍における働き方の変化にテクノロジーが及ぼした影響」について調査が行われました。

レノボの調査の結果では、全世界的にテクノロジーの活用を上手くできている企業ほど、在宅勤務での生産性が高まる傾向にあるとわかっています。そして、今後、在宅勤務の比重が更に上がるだろうと未来予測が提示されています。このことは、Twitterが原則テレワークを働き方の基本とするように発表をしたことが象徴的でしょう。日本でも、富士通や日立をはじめとした企業が在宅勤務を基本的な働き方とすることを指針として打ち出しました。

それでは、現場で働くひとびとも在宅勤務を歓迎しているのでしょうか。残念ながら、この部分は判断が難しくなります。全世界的には、在宅勤務によって生産性が低下したと評価した回答者は13%しかなく、概ね在宅勤務は生産性に良い効果を及ぼすと判断されていることがわかります。

しかし、日本だけが明らかに他の9か国と異なる反応を見せています。日本の回答者のうち40%が生産性が低下すると述べているのです。次点の中国が16%であることを踏まえると、ダブルスコアを優に超えて、日本は在宅勤務の評価が低い国と言えます。

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「在宅勤務の生産性向上」をサポートしていますか?

なぜ日本だけが在宅勤務の評価が低いのでしょうか?在宅勤務でよく使われる Microsoft Teams や Google Drive、Zoomといったシステムは全世界で同じように提供され、日本はインターネット環境の整備も世界最高峰です。それにもかかわらず、日本の回答者は在宅勤務が生産性を下げると考えています。

このことを解釈するのに、役に立ちそうな結果がレノボの調査から提示されています。コロナ禍による在宅勤務開始時に新たに購入したIT機器・ソフトウェア等への支出金額について、日本は10カ国中で最低なのです。つまり、設備投資をしないために、日本の在宅勤務は生産性が低いのではないかという仮説が立てられます。

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生産性と予算の投入額は、密接な関係があることで知られています。ノースイースタン大学のアルバート・ラズロ・バラバシ教授は、大学教員の生産性に最も大きな影響を及ぼす要因について研究予算の大きさだと述べています。テレビ東京のように「低予算だからこそ工夫する」という言葉がありますが、マクロの視点でみれば潤沢な予算がないと優れた成果は導けません。

「生産性を挙げろ、方法は自分で考えろ」を続けますか?

生産性を上げるための特別な支援なしに、現場の創意工夫でなんとかしろという姿勢では問題解決できないのではないかという議論は昔から繰り返しされてきました。近年では、サービス残業廃止の文脈で何度も出てきています。「残業をするな。だからといって成果を下げてはいけない。無駄があるはずだから効率よく仕事をしろ。」という言葉を聞いたことがないという社会人の方は少数派ではないでしょうか。しかし、物理的な業務過多はどうしようもありません。

100年以上前に経営学という学問が産声を上げた当初から、生産性の向上は主要な研究課題の1つでした。そして、生産性が飛躍的に向上した切っ掛けの多くはテクノロジーの進化でもあります。これは産業革命で初めて起こったことではなく、中世・近世でも同じことが言えます。マスケット銃の登場が騎兵の存在意義を失わせたように、新しいテクノロジーを使いこなすことで古い組織が淘汰されていくことを歴史は教えています。

在宅勤務拡大のニュースを目にするたびに、生産性の観点から考えると危うさを感じることがあります。特に、在宅勤務導入とオフィス削減がセットで語られるときです。在宅勤務による経費削減への期待が大きすぎて、生み出される成果を増大させるストーリーがしっかりと練られているのか不安になるときがあります。

生産性とは、分母と分子の関係で考えられます。成果を出すために投入されるコストを分母として、生み出される成果の大きさが分子になります。そのため、生産性を向上させる方法は分子を大きくするか、分母を削るしかありません。そして、生産性の向上に大きく寄与するのは分子の増大です。なぜなら、分子はいくらでも大きくできますが、分母は削るのに限度があるためです。分母を削るとき、分子を増大させることに手を抜いてはいないでしょうか?

レノボの調査からは、残念ながら、諸外国と比べて分子を増大させることに消極的な姿勢が見て取れます。このままで、日本の企業は競争力を維持できるのでしょうか。PwCの予測では、2050年の購買力平価ベースGDPで日本は現在の世界4位から7位まで順位を下げると予測されています。7位というのは、アジアではインドネシア以下となります。

分子を最大化させるための在宅勤務をデザインする

在宅勤務に対して、私たちは世界の情勢と比べた時にどのように向き合っていくべきでしょうか。それは、この機会を好機として、在宅勤務によって生産性を最大化させる方法を真剣に考えることではないでしょうか。

コロナが蔓延する現在は楽観論を軽々に言える状態ではないことは重々承知しています。しかし、多くの仮説を立て、自分たちの組織や職場において最高の働き方を模索する実験の機会を与えられていると、逆境を好機として生かす姿勢が求められているのでしょう。

Googleをはじめとしたシリコンバレーの企業が魅力的な職場を創るために多大なコストを支払うのは、職場を最も生産性が高く発揮できる場としてデザインするためだと言います。分子を最大化させるための積極投資をできるかどうかが、アフターコロナで存在感を発揮する企業と言えるのではないでしょうか?

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