レームダック化するメイ政権でも、ソフトBrexitでポジティブ!
英国議会両院は20日にEU離脱法案をようやく承認した。18日に上院が可決した修正案は下院により否決され、原案のまま下院で賛成319票対反対303票で承認され、その後上院もこれを承認した。この先、国王の裁可を得て、成立することになる。
今回焦点となったのは上院が提案した「意味のある採決(meaningful vote)」条項を法案に盛り込むかどうかだった。これは「2019年1月21日までに政府がEUとの交渉で合意できなかった場合、5日以内に書面による声明を通じて対応策を下院に提出して、承認を得る必要がある」というもので、議会の発言権を大きく拡大する条項だ。結果的に下院がこれを否決したことで、EUとの交渉におけるメイ政権の主導権は強化される。
だが、メイ首相はこの条項への反対票を確保する上で、保守党内の親EU議員に対して「交渉決裂時には議会で審議する時間を設ける」という言質を与えざるを得なかった。そもそもメイ首相と保守党の大半がハードBrexitに傾いた強硬姿勢を取るのはEUとの交渉を有利に運ぶ戦略に基づいているためだが、野党と保守党内部の親EU議員は関税同盟残留を望むソフトBrexit 志向を持っており、政府に交渉を完全に委託することに懸念を隠せないでいる。今回は辛くも自民党内の造反議員の取り込みに成功したメイ首相だが、賛成票のリードが小さいことからも、ソフトBrexit志向の議員たちの圧力が身に染みたはずだ。一方で、親EU派の議員たちにしても、メイ政権の存続を危うくして保守党内の亀裂を深めるよりは、「ここまで追い詰めて言質を取った以上、今回はもういいでしょう」と感じたのかもしれない。
今回の法案の差し戻し合戦を経たEU離脱法案の議会承認は、来年3月29日のデッドラインに向けた離脱交渉を控えて、議会の発言権が強まっていることを示唆した。自民党内のみならずEUからも圧力を受けるメイ首相の苦境はさておき、英国のEU離脱がソフト路線に向かうとすれば、金融市場にも中長期的にポジティブである。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32043120R20C18A6EAF000/
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