新入社員のつなぎ止め施策に思うこと
2023年4月4日の日本経済新聞朝刊に「企業、新入社員定着へ投資」という記事があった。
またそれを受け、別の記事でも様々な企業の新入社員つなぎとめの取り組みが取り上げられた。
それを見て、僕は違和感を禁じ得ないのである。
僕の感じた違和感
僕の感じた違和感、それは「新入社員だけをそんなに扱うべきなのか?」ということ。
もちろん企業として、新入社員が居心地悪さを感じて、みんな辞めてしまうような体質にすることは避けなければいけない。
しかし、新入社員を特別大事に扱うことで企業にとって何かいいことが起こるかというと、別に何も起きない。
新入社員は他の会社を知らないから、いくら大事にされても、それが彼らの当たり前になっていくだけであり、ありがたみすら感じないのが実情だろうからだ。
辞めていくのはデキる社員から
それよりも企業がケアをしなければならないのは「デキる社員」の方。
会社を辞める社員の大半は「仕事が出来る社員」である。新入社員のように仕事のイロハから教えてあげないといけないレベルの社員は、外に出ていこうとしても行先が無く、動けない。能力がある社員だからこそ、他の企業から好待遇で欲され、辞めていくのである。
出来る社員を社内に留める策を取らず、新入社員ばかり好待遇にすることで生まれる歪みは計り知れない。それは会社にとって更なる「能力のある人材離れ」の加速リスクとなるだろう。
年功序列も人材離れのリスクの1つ
年功序列だって、デキる社員からすれば、転職の1要素だ。
日本の人口は高齢者が段々増えてきている。これに加えて年功序列を採用している多くのJTC(Japanese Traditional Company:伝統的な日本の大企業)では40代、50代の人口比が最も多く、どれだけ能力があろうと、評価されていようと、課長や部長などのポストに就ける30代はほぼいないと言っていいだろう。
一方、能力重視の外資系企業では、30代半ばで部長職についている社員もチラホラ。
これだけでも、30代のデキる社員で心動く人が多いのではないだろうか。
「バカにするな!俺はポストのために仕事をしているんじゃない!」という人もいるかもしれない。しかし、年功序列で若者はどれだけ仕事が出来てもポストは与えられず、逆に年齢を重ねれば仕事の能力関係なく上のポストに就けるというのを認めるということは、次のような2020年の台湾/日本のIT大臣の事例において、日本の状況を許容することに近いのではないだろうか。
「スマホでSNS投稿できるからIT大臣だ」と言われると、ツッコミどころが多すぎてどうしようもないが、実際これが日本の大企業の話になってくると、年齢が高いから課長や部長になっている人が山ほどいるのだ。
これを許容できないデキる社員から、会社を離れていくのは自明だろう。
会社を離れられて会社が困るのは、新入社員よりデキる社員の方。そちらを優先的に大事にしてほしいなと思うのだ。
大切なのは戻ってこれる文化
新入社員にしろ、出来る社員にしろ、出ていく人たちはいる。
ただ、その全員が会社に不満があるわけではない。
自分がやりたいと思っていた仕事に挑戦したり、人生の新たな経験を積むためだったりと、その理由は様々である。
そして、一番大切なのは、その社員たちが別の会社に動いたあと、「あ、元の会社良かったな、また働きたいな」と思ってもらえること。
そしてその時に「いつでも戻っておいで」という体制を整えておくことが大切なのだ。
日系企業だと一度辞めたら戻れない会社も多いが、外資系だと「あの人辞めたけど戻ってきたんだ」というケースは枚挙にいとまがない。
僕自身も、もしかしたらまた以前働いていた外資系企業で働きたいなと思うかもしれない。
元々何年も働いていた企業に戻れば、即戦力になるのは間違いない。
新入社員に限らず、そういう人たちを大切にする視点も持ってもらえたらいいなと思う。
企業にとって、人材の確保は大きな課題の1つ。
新入社員ばかりに目を向けず、より多くの社員にとって、会社が素晴らしいところになりますように。
参考
こちらは転職したい側の人の本。
外の世界で勝負して、色んな企業を渡り歩き、成長したい人必読です。