銀行部門の「機会の限界」~異業種参入への期待について~
最近、銀行部門に対する異業種参入、言い換えれば「銀行を買う企業」のニュースを散見するようになっております。本日も福島銀行がSBIからの出資を受け入れるとの報道がありました。
異業種からの参入は一般的にイノベーションを期待するものになりましょうから、善し悪しで言えば「善し」ということになろうかと思います。しかし、銀行部門というのは基本的に経済全体の資金仲介機能を担う役割であり、その収益環境はマクロ経済(より正確には金利)に対して受け身です。このように書くと「経営努力が・・・」という反駁が必ず待ち受けていますが、事実は事実として理解する必要があります。
「銀行の役割は貸出。その貸出を脇において国債投資ばかりしている」、そのような声を専門家を自称する向きからも耳にすることがありますが、これが間違いであることはかつてのnoteでも書かせて頂きました(大変多くの方に読んで頂きました。有難うございました)
敢えて繰り返しますが、銀行の本業は貸出ではありません。銀行の本業は「経済における資金過不足の調整」であり、資金不足の経済主体と資金余剰の経済主体を繋ぐことにあります。政府債務の累増が明示するように、「失われた20年」で最も資金不足が激しくなったのは政府部門ですから、銀行部門が国債保有を増やすという形で資金過不足の調整をしてきたわけです。理論的には誠に正しいことが起きていた、という話です。
前置きが長くなりましたが、結局のところ、「マクロ経済環境」という「機会の限界」が銀行部門には厳然とあり、これは「そういうもの」として私は基本的に理解しています。銀行部門への異業種参入を機に「旧態依然とした業界に喝が入る」という期待は小さくないように見受けられ、実際にそういうことが起きれば良いとは思いますが、「ではどうやって?」という論点については今のところ、あまり見られません。こうした雰囲気はWeWorkが「単なる又貸しでは?」と呼ばれる声がありながらも、持ち上げる雰囲気が勝っていた頃と似たものを感じます。
もちろん、ビジネスチャンスは誰しも想像しないところから生まれるのでしょうから、ここで論じて「無理だ」というつもりも毛頭なく、むしろどのような展開になるか楽しみに拝見していきたいと思っています。