NoCode(ノーコード)系の国産SaaSツールは生き残っていけるのか?
NoCode(ノーコード)が、いま熱いです。
少し前まではエンジニアを中心に一部のWeb界隈だけで話題になっていたノーコードですが、ついに日経新聞(正確には日経産業新聞)で記事になってました。
記事にも
「プログラミング言語の知識がなくても、ウェブサービスやアプリの作成ができる」
とありますが、ノーコードツールはその名の通り、通常Webサービスやアプリの開発に必須の「コード」を使わずにWebサービスやアプリが開発できてしまう魔法のツールのことを指します。
僕自身、昔プログラミングスクールに通ってみたものの、残念ながらコードを書けるようなプログラミングスキルは持ち合わせていないので、ノーコードツールには死ぬほどお世話になっています。
例えば、インタビュー力養成講座「THE INTERVIEW」のWebサイト(LP)も「STUDIO」というノーコードツールを使って作成しています。
無料でも全然イケるのですが、僕は独自ドメインを使いたかったので有料プランにしていますが、それでもたった月額1,280円。めちゃくちゃ安いですよね。
他にもNotionとかもフル活用しているのですが、ノーコードツールの紹介は以下の記事にゆずります。興味ある方はぜひ読んでみてください!
国産のSaaSプロダクトは生き残れるのか?
さて、今日の本題です。
僕が課金して活用しているノーコードツールは例えば以下。
・Notion
・STUDIO
・Canva
・formrun
などなど。他にもありますが、ざっくりこんなところです。
上記のノーコードツールはすべてSaaS・サブスクリプション(月額課金)型になっています。
中でも特に愛用しているのがフォーム作成+顧客管理ができる「formrun」なのですが、最近非常にショッキングな出来事がありました。
この値上げについてはTwitter上でも結構話題になってまして、
と、物議を醸しておりました。
とはいえ、formrunはカスタマーサクセスの皆様が素晴らしいので、以下の記事で「価格改定の経緯」について、とても丁寧に書かれています。
このたびの料金プラン改定の背景としましては、今後さらにサービス開発・連携を加速させるためです。
各種機能の改善及び追加を、formrunでは日々取り組んでおり、前回の料金改定(2018年3月)から約2年半が経過するタイミングで、formrunがお客様に提供している価値を見直す運びとなりました。
月を経るごとに機能の開発・改善を積み重ね、2020年の7月を迎えることができたことに、この場をお借りし、改めまして感謝申し上げます。また、下記に記載した開発・改善内容にとどまらず、現在お客様からお寄せいただいている多数のご要望・ご懸念点の解決を目指すにあたり、今回のご利用料金の改定を行うことになりました。
とあります。
要するに、「機能追加や他サービスとの連携を実装するための開発コスト」が、これまでの価格体系ではペイできない、ということですね。納得です。
確かに、formrunでできること・formrunの提供価値を考えれば、今までの価格では安すぎたのかもしれません。
では、競合となる外資系のフォーム作成サービスのTypeformを見てみましょう。
月額35ドル(約3600円)です。
formrunは…
僕が使っていたスタータープランの旧価格は4,980円とほぼ同価格ですが、値上げ後の新価格は12,980円。
なんと、Typeformの3.6倍。
これはさすがに高すぎますよね。
ということで、formrunからTypeformへの乗り換えを決意したわけです。
僕だけでなく、恐らく多くの有料ユーザーが、Typeformなど他の有料ツールや、Googleフォームなど無料ツールへの乗り換えを進めるでしょう。
では、formrunは値上げをするべきではなかったのか?というと僕は「値上げは経営戦略上正しい」と思っています。
先ほど書いた通り「機能追加や他サービスとの連携を実装するための開発コスト」が、これまでの価格体系ではペイできないという事情がある以上、値上げはやむを得ない経営判断です。
めちゃくちゃ簡単な算数ですが、
売上=客単価✖顧客数
ということで、売り上げは顧客数と客単価の掛け算で決まります。
顧客数が一定の規模が見込める(例えば100万社に導入できる!など)のであれば、客単価が安くても成立します。
Typeformは日本の企業のみならず英語圏を中心に、世界中のマーケットで戦えるので、100万社どころか以上に導入してもらうことも可能なわけですが、formrunは恐らく海外展開にはまだ着手できておらず、ユーザー企業のほとんどが国内でしょう。
マーケットが国内のみか、全世界か。
この「市場規模の差」はものすごく大きいです。
売上=客単価✖顧客数
なので、顧客数が限られる場合、客単価を上げるしか選択肢がありません。
これが、Typeformは35ドルでサービス提供が継続でき、formrunが値上げせざるを得なかった非常にシンプルな理由です。
国産SaaSツールが生き抜く2つの道筋
formrunは値上げによる顧客離れを乗り越えて、成功できるかどうかは、正直誰にもわかりませんが、iPaaS(Integration Platform as a Service)という異なるSaaSツール同士を連携・統合(Integration)するビジネスを提供しているスタートアップの経営者が言っていたことが非常に印象に残っています。
曰く、国産SaaSツールが成功するには、2つの道筋しかないと。
一つは、日本独自の法制度や仕組みに紐付いたSaaSツール。
日本独自の税制に適応しているfreeeやマネーフォワードクラウド、日本独自の労務管理体制に最適化されたSmartHR、名刺交換という日本ならではの商習慣にマッチしたSansanのようなSaaSツールに、海外のSaaSツールが取って代わることは非常に難しいでしょう。
例えば、弁護士ドットコムはクラウドサインの急成長により、株価が一時は3倍にもなったりしていますが、類似の海外SaaSツールであるDocusignが日本国内でも伸びていることに非常に脅威を感じているという話はよく聞きますし、日本独自の法制度や商習慣にロックインした機能の追加開発を急いでいることでしょう。
日本独自の法制度や商習慣にロックインしたSaaSツールは、海外SaaSツールに取って代わられる可能性が比較的低い、と言えます。
逆に言えば、formrunのように日本独自の法制度や商習慣にロックインしているわけではないSaaSツールは、「低価格なのに高品質」な海外SaaSツールに負けてしまいがちなのです。
国産SaaSツール成功のもう一つの道筋は、逆説的ですが、「世界で戦えるSaaSツールをつくり、グローバルでマーケティングをしていく」ことです。
もちろん、この道程は極めて厳しいです。グローバルマーケットに勝負を挑み、成功をおさめたSaaSツールが一体いくつあることか。
スタートアップでは、米国トップシェアの福利厚生サービス「Perks」などを提供しているFOND社くらいでしょうか。
①日本独自の法制度や仕組みに紐付いたSaaSツールを作り、国内ナンバーワンを目指す
②世界で戦えるSaaSツールをつくり、グローバルで高いシェアを獲るか
本当にこの二択しかないのか?という疑問は当然あります。
もしかしたら第三の選択肢があるかもしれませんが、考え方としては参考になるなと思い紹介しました。
formrunやSTUDIOはじめ、国産のノーコード系SaaSツールにはぜひ頑張って欲しいと、心から思っています。
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