存在意義を問え! LEGOに学ぶ、勝ち続ける組織のつくり方
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
誰しも一度は遊んだことがある「LEGO」。ブランドの信頼力、そして玩具メーカーとしての売上高も世界一であり、その収益力はGAFAも凌ぐという圧倒的な勝者ですが、その経営は波乱含みだったことを本書で知りました。
特許切れで直面した模倣商品との戦い、時代の流れによりテレビゲームに子供の興味を奪われる等々、幾度となく訪れた経営の危機をどう舵取りしたのか。CEOへの直接インタビューや工場内部への潜入を含めた丁寧な取材によりその秘訣をあぶり出した良書です。
私自身も幼少時代はLEGOでよく遊んだ思い出があります。そして、息子が生まれてからは小さいころから「デュプロシリーズ」を買い与えて、一緒に遊んでいた思い出もあります。まだ言葉では完全に意思疎通ができないながらも、本人がつくったものをみて「なるほど!こういう見立てもあるのか」と感心したりもしました。
本書ではLEGOがイノベーションのジレンマからどう立ち直ったのかを順に解説しています。大胆に絞り込んだビジネスモデルやヒット商品を生み続ける製品開発の仕組み等はすべての経営者・管理職の参考になるものだと思います。その中でも特にわたしに響いたのが「企業の存在意義を問う」という部分でした。
近年日本でも「パーパス経営」という言葉で広く知られるようになりました。
企業が向かう方向を明確にし、広く発信をする。究極的には、このパーパスに賛同する社員のみに働いてもらう。それが社員自身の働きがいやモチベーションを高め、ひいては企業の業績につながっていくという経営手法のことです。ビジョン、ミッション、カルチャー、バリューと行動規範にまで落とし込むことで、誰もが日常業務の中でも意識し、考えながら行動することができます。
LEGOの場合も、ミッション、ビジョン、バリュー、スピリットといった複数の行動規範を「レゴランドフレームワーク」と定義し、会社の進むべき方向を明確に打ち出しているとのことです。特にミッションが素晴らしく、以下のようになっています。
LEGOをつくる人を「ビルダー」と呼び、レゴ社公認の「プロビルダー」は世界に24人います(日本にも唯一のプロビルダーである、三井淳平さんがおられます)。つまり、つくる人が第一であり、それも未来のつくり手である「子供」にフォーカスしていることが一目瞭然です。
この写真は、LEGO本社近くにあるレゴハウスの中央にある「Tree of Creativity(想像力の木)」です。高さ15m超(ビルの5階相当!)で、631万6611個のレゴブロックが使われているそうです。すごいですね!ビルダーの無限の可能性を象徴するシンボルツリーとして本社に根を張っているのです。
また、本書で紹介されていたもので初めて知ったものが「レゴ シリアスプレイ」です。最近ではワークショップ型(体験型)の社員研修も増えていますが、それにLEGOを適用したものです。
学びの道具として誰もが簡単に使える性質は子供だけでなく、大人の世界にも広がっています。自己啓発や組織活性化、さらには戦略策定まで。「あなたの一番の強みを、レゴで表現してください」。このような問いかけと共に、目の前のブロックを組み立てながら形にしていきます。
例えば「アヒルをつくってください」と言われたとしましょう。出来上がったものを見せあってみれば、実に様々なアヒルが目の前に並んでいることでしょう。「レゴ シリアスプレイ」では、作り〜説明し〜共有し〜再評価する、という手順を繰り返すことで、抽象的な概念の可視化を促していくというアプローチをとっています。
「アヒル」という一見明確な言葉であっても、そのアウトプットはさまざま。これが「チームワーク」や「リーダーシップ」だとしたらどうでしょうか。よりバラエティ豊かな作品が並ぶことでしょう。
仕事において可視化や言語化というのは重要なスキルの1つですが、うまく言語化できないからといってその方が意見がないわけではありません。ダイバーシティ経営が叫ばれる昨今において、言語以外の方法でもお互いを理解し合うというのはとても意義のあることだと思います。
みなさんはLEGOでなにをしますか? ぜひ想像力をもって、もう一度向き合ってみてはいかがでしょうか。
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※ タイトル画像は筆者撮影。
※ 情報開示: 本書の著者はリンクトイン・ジャパン株式会社の同僚です。しかし、上司部下での関係はなく、本書も彼の個人プロジェクトであることから利害関係はありません。本を出したというので冷やかし半分でどれどれ読んでみるかと思ったら、ものすごく良い内容だったのでこちらでも紹介した次第です。