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人口減少・日本は死に行く国(dying country)なのか?

「日本は死に行く国(dying country)だ」というワシントンポストの記事を見かけました。

https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/08/29/japan-is-trumpian-paradise-low-immigration-rates-its-also-dying-country/

日本では、赤ちゃん用のおむつより高齢者用のおむつの売上が上回り、空き家だらけで、低出生率に伴う人口減少は不可避にも関わらず、移民を受け入れることもない均質性の国、そんな日本に未来はないと言い切ります。

こういう危機感を煽るような記事には賛成できません。そして、いわゆる人口維持が何より優先するような言説は、まったくの的はずれだと思います。

もちろん、日本の人口減少が不可避であることには完全同意しますが、人口減少は日本だけの問題ではありません。

世界の人口はアフリカ以外全部減少します。アジア人口も間もなく頂点に達し、あとは急激に減少していきます。2100年にはアジア人口はアフリカ人口に抜かれます。アフリカ人口も3倍増になりますが、それよりも深刻なのはアジア人口が今の半分になるということです。

国連の予測は、いつも見通しが楽観的なのですが、日本の社人研と予測値が近いLOW推計で見た方が現実的だと思います。

アジアの人口がこんなに減る最大の理由は中国の人口減です。

2015年の人口を100とした、国別の減少率を比較したグラフをご覧ください。

2100年には、日本の人口も今の1億2千万人から半分の6000万人になりますが、14億人の人口を抱える中国も半分以下の6億2千万人になります。インドも3割減です。

2100年までは人口増のアフリカでさえ、2100年以降は人口減少にシフトします。

全世界的に人口は減り続けるのです。出生率が多少あがるとかあがらないとかで変わるようなレベルの問題ではありません。

だからといって、じゃあ「死に行く世界(dying world)」になるんでしょうか?

そんなことはありません。

今後世界の人口が減り続けるかといえばそうはなりません。ある一定まで下がった段階で、静止人口(増えも減りもしない一定人口)で安定するでしょう。

なぜなら、人口が爆発的に増えたのは少死化によるものであり、人口が今後劇的に減るのもまた多死化によるものだからです。今、全世界的に膨張している高齢者人口が順次死期を迎えるまで人口は減り続けますが、底をついたら安定します。人口とはそういうものです。


また、日本が移民が少ないというのも間違いです。むしろ日本はもはや世界4位の移民国家です。

OECD加盟35カ国の2015年の外国人移住者統計によれば、日本への流入者は前年比約5万5千人増の約39万人で、ドイツ・アメリカ・イギリスに次いで4位に上昇しています。日本への移住者の多い順、国別では、中国、ベトナム、フィリピンです。

日本には現在約247万人の在留外国人がいます。これは、名古屋市民の数にほぼ匹敵します。総人口のもはや2%が移民なのです。


とはいえ、今後も日本への移民が増え続けるかといえばそうはならないでしょう。外国の人たちにとって、もはや日本は魅力的な働き場ではないからです。賃金を稼ぎたいなら別の国に行った方がいいし、日本語を無理して習得するくらいなら、英語で働ける国に行った方がいい。


人口減少の解決策として移民の大量受け入れを叫ぶ人もいますが、果たして自分たちの人口だけ増やせば、それでいいんでしょうか?移民受け入れが本当に正しいのかどうかはドイツを見てから言った方がいい。

ドイツの人たちは移民が増えて幸せなのか?ドイツに移住した人たちは本当に幸せなのか?

僕には決してそうは見えないのです。

長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。