電力自由化して、再エネが増加すれば起きる「当たり前」

世界の多くの国ではもともと電力事業は国営・公営企業が担ってきましたが、1990年頃から電力自由化が進みました。日本は民間企業が規制産業として担ってきましたが、震災前には部分自由化という形で一部に市場原理を導入していました。それが震災後、全面自由化に踏み切ったわけです。自由化を否定するわけではありませんが、諸外国で自由化した成果がどうなっているかの分析が十分ではないまま、自由化ありきで走ってしまったという感があると思っています。

諸外国で自由化した結果を見てみましょう。

自由化による成果として、消費者が最も期待するのは「電力価格の低下」でしょう。しかしながら、日本エネルギー経済研究所が行った欧州6か国、米国4州、日本を対象とした調査で「日本を除く調査対象国では、電力自由化開始当初に電気料金が低下した国・州もあったが、おおむね化石燃料価格が上昇傾向になった2000年代半ば以降、燃料費を上回る電気料金の上昇が生じている」と指摘しています。なぜ「燃料費を上回る電気料金の上昇」が生じてしまったのでしょう。

革新的なサービスが生まれたか。最近急速に進歩したデジタル技術によりこれからには期待したいものの、自由化でそれが生まれたという事例はほとんど無いでしょう。

安定供給については、いくつかの評価軸がありますが、社会にとって必要な発電設備の量が確保されるか、といった点は重要です。電気は貯められないので、必要な時に必要とされる量を発電する設備を持っておかねばなりません。もちろん、そうしたときには大口の工場などに電力の使用を控えてもらって、必要とされる量(需要)を減らすという手段もありますが、今年の冬、東京電力管内では2週間で12回も需要家に電力の使用制限を発動して、さすがに需要家からは悲鳴が上がったといわれています。(この件の詳細については「電力は足りている」のか?をご参照)

しかし、自由化すれば「今ある設備を使い倒して安い電力を作って売ろう」というモチベーションはありますが、莫大な設備投資をしようというモチベーションは低下します。その上、政策補助を受けて大量に再生可能エネルギーが入ってくると、電気(kWh)を作って売るということ自体は主に再生可能エネルギーが担い、その調整役に回る火力発電の稼働率は下がってしまいます。ただ、稼働率が低い設備でも持っておかねばならない(kWを維持)することが必要で、kWに対して適切な価値が認められるような制度設計が必要なわけです。

「電力自由化と再エネ増加で止まる火力発電所建設」は、おおむね正しい記事で、というか、こうなることはとても当たり前のことなのです。

>火力発電が減っても供給を満たせるなら、それに越したことはない。問題は天候や時間で出力が変動する再エネを、需要にあわせて供給するには過不足を補う別の電源が必要になることだ。その役目は当面、火力に頼らざるをえない。再エネが増えるほど調整用の火力電源が必要になる一方、新設投資は難しくなるジレンマがある。

いま議論されている容量市場(kWに価値をつける)の制度設計をどう進めるか。「自由化の修正」をどうするかが正念場です。

http://ieei.or.jp/2018/04/takeuchi180425/

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33984340Z00C18A8X12000/

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