人手不足の今だからこそ、「新卒採用」ではなく「人材獲得戦略」という大きな絵を描くことが求められる
日本の採用環境と人材獲得戦略の変革
日本の主要企業における2025年度の新卒採用は、前年と比較して4.0%増加しているものの、全体の採用計画に対する「充足率」は過去2番目に低い水準にとどまっている。『日経採用状況調査』によると、特に理工系の充足率が著しく低く、全体平均を下回る87.4%にとどまっており、学生が売り手市場の中で複数の企業から内定を得て辞退するケースも目立つ。このような状況下で、企業は新卒採用のみに依存することが難しくなり、中途採用や他の人材獲得手段に力を入れざるを得ない。人口減少と少子高齢化の影響で働き手の絶対数が不足する中、日本の企業が今後どのように人材を確保していくかが大きな課題である。
採用市場の背景と現状
少子高齢化が進む日本では、年々就労人口が減少している。これに伴い、人材市場は売り手市場が続き、企業は新卒採用を中心とした戦略だけでは十分な人材確保が難しい。特に理工系分野においては、専門スキルを持つ人材が不足し、企業は高度な専門知識を持つ人材の確保に苦労している現状がある。製造業やデジタルトランスフォーメーション(DX)関連など、技術職の需要が高まる一方で、地方に志望者が集まらないといった問題も浮き彫りとなっており、各企業は新たな採用戦略の構築を迫られている。
人材獲得戦略の多様化
企業が持続的に人材を確保するためには、新卒・中途採用だけでなく、人材育成による内部労働市場の活用や、出向・転籍、カムバック採用、副業などの多様な入社経路を包括した人材獲得戦略が求められる。採用や育成などの機能別の縦割りの考え方では、必要な人員を確保することが難しくなっている。
また、効果的な人材獲得戦略を作成するには、職務設計や業務の再構築が不可欠だ。特に、採用難易度の高い職種において、効率的な職務設計が求められる。人材不足の中で人材を確保し、長期的に戦力化するには、人がやるべき仕事とDXによる自働化で省力化できるところを切り分け、人がやるべき仕事に集中できる体制作りが大切になる。
結語
日本企業が持続的な成長を実現するためには、少子高齢化による人口減少を見据えた長期的な人材戦略が不可欠だ。採用計画の充足率が年々低下していることからも分かるように、今後も必要な人材の確保は一層難しくなっていくだろう。このような状況下で企業が成長を続けるためには、柔軟で多様な人材獲得戦略が不可欠だ。新卒採用のみならず、中途採用や副業、出向、転籍など、さまざまな採用手段を組み合わせ、効率的な職務設計と育成環境の整備を通じて、必要な人材を確保し、育成し、活用することが、今後の企業競争力の源泉となるであろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?