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日本の労働生産性を高める勝利の方程式とは?

最近、日本の労働生産性について考える機会が増えました。
物価や税率が上がる中、従業員の給与が増えていないため、生活が厳しくなっているという問題意識から、労働生産性が着目されています。

今日は、日本の労働生産性を上昇させる方法を提案します!


伸びない労働生産性

日経によると、この25年間、日本の労働生産性は伸びていないようです。

国内総生産(GDP)を就業者数で割った1人あたりの「名目労働生産性」は96年を100とすると2021年に101.6だった。米国は241.0、英国は200.3と2倍以上に膨らんでいる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA282M70Y3A920C2000000/

1996年って、Windows95が出たばかりで、まだ職場に一人1台PCがなかった頃です。「その頃と生産性変わってないってどういうこと??」と悲しい気持ちになります。

労働生産性は本当に伸びていないのか?

ここにはカラクリがあるように思います。
ここでの労働生産性は「GDPを就業者数で割ったもの」で算出がされています。分子のGDPは、人口増が止まり内需が横ばいとなった結果、おおよそ横ばいで推移しています。だとすると、就業者数もほぼ横ばいのはずですね。
ただこの分母の就業者数は「人数」なので、人数はほぼ横ばいとしても、「労働時間」が同じとは限りません。

共働きで時短の人が増えたり、働き方改革によって残業が減って、一人当たりの労働時間が減ったということですね。就業者数は同じだけど、一人当たりの労働時間が減って、それでもGDPは維持できているとも言えます。

つまり、この25年間を総括すると、IT投資などで生産性は少し向上し、その分で多様な働き方を受け入れたり、残業が減ったりして、労働者の時間的な豊かさは向上したと言えるのではないでしょうか。
ここまで見ると、実はそんなに悲観的にならなくても良いかもしれません。

このままでは迎えられない未来

しかし、未来は違います。
人口が減ることは誰もが知ってると思いますが、下図の勢いで落ちるのです。高度経済成長期の熱狂的な伸び方と同じスピードで、落ちます。

https://coralcap.co/2023/11/japan4-0/

※このグラフは、Coral Capitalの西村賢さんがまとめられた素晴らしい記事から拝借しました。(おすすめです!ぜひご一読ください↓)

人口が減るということは、同じことをしていてもマイナス成長するということです。先の労働生産性の方程式においては、分子のGDPが減りますが、就労人口も減るので、労働生産性は維持できるかも?という気がします。

しかし、現実はそんなに甘くはありません。
1万人の町を100人の公務員が支えてるとします。人口が半分になり5000人になったら、公務員は50人にする必要があります。しかし、50人にして同じサービスが提供できるか?というと、そうはならないですよね。人口が半分でも、必要なサービスと業務は半分にはならないからです。

このことは、「人口が減り需要が減る分、就労人口も減って供給を減らして全体を維持する」というアプローチでは、社会インフラが持たなくなることを示唆しています。
だとしたら、僕たちは社会全体として、今以上に労働生産性を向上しなければならないということです。

「25年間、上がることのなかった労働生産性を、人口が減少する中で上昇に転じさせる」ということを僕たちはやらないといけないのです。


労働生産性 勝利の方程式!

では、どのように行うのかを方程式を分解しながら考えていきます。

労働生産性のキホン

まず、労働生産性とは、投下した労働量(人数や時間、人件費)に対して、生み出した付加価値量で算出されます。

「生産性を上げる」というと、つい「業務効率化!」とか、「残業減らす!」とかって話になりがちですなのですが、実は分子の方の付加価値の方を上げることでも生産性は向上できます

日本でも昨今でこそ物価高での価格転嫁が進んでますが、ここ30年物価は上がってこなかったので「値上は悪」とされる文化があるように感じます。
しかし、労働量は削減しなくとも、提供する価値を向上させ、それを価格転嫁することでリターンを大きくする。そうすることで、労働生産性を向上させることは実は可能なのです。

既存事業と新規事業に分けて捉える

これを、日本社会全体のマクロで見るために、「既存事業」と「新規事業」の二つに大きく分けてみたいと思います。既存事業で行う生産性の高め方と、新規事業とでは大きく異なるためです。

このように分解し、(1)既存事業と(2)新規事業とが生み出した価値量に対して、日本全体の労働量(ここでは人数)で割ったものが、日本全体の労働生産性となります。
日本の総労働力を結集して、既存事業領域での価値創出と、新規事業での価値創出、それぞれがなされているということです。

実際は、一人で同時に両方をやってるケースはあまりないので(私のようにスタートアップと行政組織を兼業してるケースも一部ありますが)、このように労働者数を二つに分けておきます。(分母の総数は一緒です)

(1) 既存事業での生産性向上

ではまず、既存事業についてみていきましょう。既存事業では、市場が縮小している以上、付加価値量を高めることは難しくむしろ減っていきかねないと言えます。
その環境下で労働生産性を向上させるには、労働者数を減らしていくしかありません。より少ない人数で、同じだけの価値を生めるようにしていくということですね。
図にするとこのようになります。

より少ない人数で同じだけの価値を生み出すということは、業務の効率化が欠かせなくなります。
だからこそ、デジタル化による効率化が重要だというわけです。デジタル庁が行政のデジタル化を推進する背景にも、中央省庁・自治体を含めあらゆる行政組織において、労働人口が減少する中でもサービスの質を保つということも意義の一つとして挙げられます。(もちろん、より付加価値の高いサービスを提供していくということが一義的にありますが)

ChatGPTをはじめとする生成系AIの活用や、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による業務プロセスの顧客起点での抜本的見直しなどによって、劇的に業務効率を高めることが求められるという訳ですね。

(2)新規事業による生産性向上

次に、新規事業です。新規事業では、全く新しい市場を創造したり、これまでにない産業を創出したりします。そうした、成長産業に参入することによって、これまでにない新たな付加価値を大きく生み出していきます
だとすると、労働者数は減らすことなく、なんならもっと労働者を新規事業に増やしながら、成長領域でそれ以上に高い価値を生み出していくということが労働生産性の高め方です。

この図のように、労働者数を増やしたとしても、生み出す価値を圧倒的に多くしていけば、トータルでの労働生産性は高められますよね。
中・大企業であれば、社内の新規事業部門や子会社が該当しますが、社会全体で見たらスタートアップのような、そもそも新規事業のみを扱っている企業がこちらに含まれます。

大企業だとトヨタは、「ウーブンバイトヨタ」という新規事業子会社を設立し、ソフトウェアを軸にした自動運転といった成長産業に参入し、研究・実装を進めています。スタートアップは全体的に成長産業ですが、特に、宇宙だったり、グリーンと言われる環境領域だったりは、これから伸びることが確実視されています。

(3)人材流動性を高める

上記の(1)と(2)の方程式を成り立たせるには、人材を新規事業側に流動させないとなりません。つまり、既存事業を効率化することで削減できる労働力を、新規事業領域に振り向けるということです。

日本の労働生産性向上には、この人材流動性の向上がセットで必要となります。

岸田政権の成長戦略の柱の一つにスタートアップを置いていることは、まさに「成長する産業に投資していこう」ということなので、こちらに人も金もあらゆるリソースを寄せていきたいという意志の表れです。
他の成長戦略の柱は、DXGX(グリーン・トランスフォーメーション)です。DXは(1)のために必要ですし、グリーン自体は成長産業ですので、DXにより社会全体の効率性を高めながら、スタートアップとグリーンで成長していこうというのが日本全体の戦略だと言えます。

そして、それを実行するのは他でもない「人」。その人材が新規事業領域にどんどん挑戦して、失敗もしながら大きな成功をおさめ、成長していく。
それこそが、これからの日本の未来に欠かせないことと言えます。

日本には「挑戦を奨励する」というカルチャーが欠けていると感じます。失敗すると色々なところに叩かれて「あの人はダメだった」と言われてしまうケースをよく目にします。しかし、欧米では「ナイストライ!」と言ってまた次に向かうんですよね。

日本のカルチャーそのものを根底から変えていく時が来たのだと思います。

もちろん、既存事業領域でDXを推進する人材も重要です。DXとは、デジタルを通じた「トランスフォーメーション(=変革)」のことですので、時間もかかりますし、難易度も高いです。こちらにも日本の優秀な人材が多く必要です。
変化の激しいスタートアップや新規事業で最先端の仕事をしたのちに、その経験を既存事業領域で活かすという生き方もあると思います。

どっちの挑戦も、困難なことに取り組むのはカッコいいと思いませんか?

人材流動性というのは一方通行なわけではなくて、相互に交流しながら回転ドアのように、行き来しながら相互に学び合う環境が最適だと思います。(デジタル庁でも、官と民が行き来しながら学び合う組織づくりのコンセプトを「リボルビングドア」と呼んでいます)

つまり、既存事業も、社内新規事業も、スタートアップも。産官学もみんな揃って総力戦で取り組むしかありません!

誰もが挑戦できる社会へと、総力戦で日本のカルチャーをアップデートしていきましょう!!



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