10月3日、首相所信表明「インバウンド消費5兆円超えを目指す」は可能なのか?
本日、臨時国会がスタート。岸田首相は所信表明演説の中で、「円安メリットを生かした経済構造の強靭(きょうじん)化を進める」と表明し、具体策の1つとして、11日からの査証(ビザ)なし渡航・個人旅行再開によりインバウンド観光を復活させ、「訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の達成を目指す」と述べました。
岸田内閣誕生時の骨太方針にはインバウンドは殆ど触れられていませんでした。コロナ禍真っ最中だったので配慮もあったのだと思います。そのため、今日の所信表明演説の内容は、個人的には嬉しい限りです。^^
…しかし、2年半以上、「ほぼゼロ」だったインバウンド市場、「年間5兆円の達成」は現実的なのか?それを達成するにはどうすればいいのか?を、今日は、書いてみたいと思います。
2019年(コロナ禍前)のインバウンドによる年間消費額は「約4.8兆円」
2019年のインバウンドによる年間日本国内消費は約4.8兆円でした。つまり、2019年並みに戻ることができれば、5兆円を越えるというのは、達成可能な目標と言えます。
香港・台湾・韓国や他東南アジアは2019年を上回る伸びになる可能性が高い
インバウンド旅行者は日本が隔離0日になっても、いざ、自分の国・地域に戻る時に隔離があると、仕事や生活に支障が出るため気軽に旅行に来ることができません。
そのためインバウンド市場においては日本の水際政策のみならず、相手国・地域の水際対策が重要になります。
香港は先日、2022年9月23日に記者会見をし9月26日から「隔離0日」に移行しました。最近は同化政策がすすめられている香港は中国と歩調をあわせてしばらくゼロコロナ政策が続くと考える向きもありましたが、夏ごろから香港政府からは「コロナ対策については、1国2制度の原則を元に、中国政府は香港に同じ対応を求めていない(香港は独自のコロナ対策でOK)」という声明が出ていました。
しかし、もともと出ていたニュースでは「隔離0日」のターゲットは11月だったのです。
それが急遽、9月26日からに早まりました。これは日本の水際対策緩和制限が少なからず影響したと思っております。
▼政府の公式発表、23日に記者会見、26日から隔離0日のニュース
こうなると外資エアラインはめちゃくちゃ動きが早く、キャセイパシフィック航空や香港エクスプレスは、さっと増便を発表しています。
9月23日に記者会見で、翌、26日から隔離0日を発表した香港。
9月24日、25日の土日は、キャセイパシフィックや香港エクスプレスはアクセスが集中しすぎて一時サーバーダウンを起こしたほど。
どれだけ香港っ子が訪日旅行を待ち望んでいてくれたかがわかります。
台湾も、それに続いて正式な「隔離0日」を10月13日~、と発表しました。日本が10月11日から開国なので、まさに、香港も台湾もそれに呼応してくれたような状態です。
台湾の人も、訪日旅行再開を待ち望んでいてくれました。ありがたいことです。
日本に住んでいると、なかなか感覚がわからないかと思いますが、香港や台湾には「国内(地域内)旅行」という概念があまりありません。香港の面積は東京都の約2分の1であり、47都道府県でもっとも小さい香川県の1,877平方キロメートルよりも小さいのです。もちろん中国本土は大きいですがゼロコロナのため当然旅行にいけません。日本では、2020年秋にはGOTOトラベルなどが始まりまして、日本国内旅行は楽しむことができました。しかし香港の人は2年半以上、東京都の約2分の1の大きさの中から、1歩も出ずに過ごしてきたわけです。そりゃあ、航空会社のサーバーがダウンしても仕方のないことだと思います。
台湾の面積は、日本の10分の1,九州の0.8倍ぐらいの面積です。
上記記事でも、以下の記述があります。
そもそも日本のインバウンド旅行者は8割以上がアジアですから、彼らの旅行欲が爆発し、2019年を上回る伸びになることは間違いないでしょう。
鍵を握るのは中国の開国
しかし、カギを握るのは中国の開国です。以下の円グラフは2019年の訪日旅行者の内訳です。
見ての通り、来訪者ナンバーワンは959万人がきた中国。全体の3割を占めています。さらに中国の方は日本国内での消費額が大きいのです。
それもそのはず、959万人は14億人の中国人口のうちの、わずか0.7%程度。
日本に来る、特に個人旅行者の中国人は、いわゆる「富裕層」です。
中国は、米国の18.9万円を上回り、1人1回あたりの訪日旅行で21.3万円のお金を使っているのです。
逆の言い方をすれば、人数も、消費額も多い中国。ここが戻らないと、年間消費5兆円越えは難しいでしょう…。
そこで先日、自民党の観光産業振興議員連盟 幹事長の岩屋毅先生を訪問し、日中観光交流の正常化は経済対策のみらなず、国と国との友好関係構築にプラスになるため国の安全保障にもつながることだとして、正常な国際交流に向けて日本からも働きかけていく必要性を訴えました。
中国のゼロコロナ政策はいつまで続くのか?これは神のみぞ知る…というか中国共産党と習近平氏のみが知ることかもしれません。
しかし転換のきっかけとなるのは、近日、開始する「共産党大会」と、5年に1度の「国家主席選挙」であることは間違いありません。
国家主席は今まで2期10年が慣例でしたが、2018年に習主席は憲法改正を行い「任期撤廃」を実現しているのです。そのため習近平氏の3期目続投を世界も予想しているところです。
インバウンド旅行者が経済復活のカギとされる日本と違い、中国と日本では旅行者について、中国が「貿易赤字」の状態です。つまり、日本から中国に観光旅行へ行く人よりも、逆の流れ(中国から日本へ観光旅行へ)のほうが多い。つまり中国にとっては「資産の国外流出」と捉えることもできるため、そこまでインバウンド開国には積極的ではないのです。また14億人という人口と広大な国土を擁する中国は内需が強いため、他国ほどは開国が喫緊の課題ではありませんでした。現に中国のGDPはコロナ禍の鎖国中もプラス成長しています。
しかし、いくら内需が強くとも、このグローバリゼーションの中、ゼロコロナと鎖国を永遠に続けるわけにはいきません。
あくまでの私の推測ですが、共産党大会・国家主席選挙がつつがなく終了した後には、香港と同じように「深センだけ」や「上海だけ」といったように都市ごとに区切って少しずつ開国していくのではないでしょうか。
中国はこの2年半以上、「都市ごとロックダウン」を多くやってきましたし、それを見られるアプリもあります。(中国のビジネスマンたちは、そのアプリを見ながら「ああ、●●は今ロックダウン中だから出張できないな」など話していました。)
都市ごとに完璧なロックダウンが出来るノウハウが蓄積されているということは、都市ごとに完璧な開国も出来るということです。
そしてなんと、中国の経済団体が「コロナ規制をもっと柔軟に」という提言を出しました。
日本と政治体制の違う中国。いくら、「在中国の欧州企業」といえど、公式にこのような提言を党大会前に出せるということは水面下で党大会後の徐々なる開国について交渉成立しているからではないか?と期待してしまいます。(※個人の推測です)
まとめ
はい、最後にタイトルの「10月3日、首相所信表明「インバウンド消費5兆円超えを目指す」は可能なのか?」に対する加藤の見解は以下です。
・中国以外のインバウンド旅行者は、2019年を上回る勢いで伸びるだろう。いわゆるリバイバル需要となる
・そうはいっても3割を占める中国が「完全ゼロコロナ維持」だと、5兆円超えを実現するのは難しい。なぜなら中国が人数も消費額も1番で、全体の3割を占めていたから
・共産党大会・国家主席選挙が終われば、中国の部分的な開国は期待できるのではないか。そもそも14億人のうちの959万人、人口比0.7%しか訪日していなかったので上海や北京、深セン、杭州、広州などが開くだけで、十分すぎるインパクトがある
です。
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