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FRB、もっと高そうな中立金利~日米金利差相場の賞味期限~

2025年はやはり「利下げの終わり」が争点化~
12月17~18日に開催されたFOMCは市場予想通り▲25bpの利下げに踏み切り、FF金利誘導目標は4.25~4.50%となりました。メンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)で示された2025年の利下げ回数は前回(9月)の4回から2回へ半減しているます:

筆者は9月以降、2025年のFRBの利下げ回数について順当なケースで2回、最大で3回と考え、「2025年は利下げの終わりが争点化する年」と論じてきました。今回はその予想通りの数字が示されたと受け止めています。

パウエルFRB議長が会見で「(利下げの)プロセスは新たな段階に入った」と明言していることに現れるように、米利下げを前提とする円高地合いに持続性は乏しいと考えておいた方が良いでしょう。これを受けた米株式市場は大幅下落を強いられ、米金利上昇に伴ってドル/円相場は一時155円に肉薄する動きが見られています。円安修正の頼みの綱でもあった米金利低下が望めない以上、日銀の政策運営はますます通貨防衛色を強める恐れがあります:

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL18EEF0Y4A211C2000000/

 中立金利が3%台後半から4%台前半ということも?
なお、9月から始まった利下げについて12月に「新たな段階に入った」というのは如何にも朝令暮改に聞こえますそもそも中立金利の想定が低過ぎたのではないかという疑念は自然と抱かれます。

今回、ドットチャートで示された中立金利と見なせる長期見通し(Longer run)は3.00%で前回から+15bpほど引き上げられています。しかし、これでも客観的に見て低過ぎるかもしれません。例えば アトランタ連銀のGDP Nowは2%強と目される潜在成長率に対して3%超えの成長が常時示唆されるような状況にあります:

この状況下、個人消費支出(PCE)デフレーターが常時、2%台を維持していることにも鑑みれば、利下げの必要性は基本的には正当化しかねます(フォワードルッキングに必要という判断はあるとしても)。

今春の米議会予算局(CBO)の推計によれば潜在成長率(実質)は+2.2%と推計されています(2027年までは+2.2%でした)。現実のインフレ率が2%近傍で上下動するならば、中立金利が3%台後半から4%台前半という発想もあり得ます。とすれば、利下げがあと1~2回(▲25bp~▲50bp)で終息しても不思議ではないでしょう。今回のドットチャートで示された数字と大きく乖離しないイメージです。

さらに言えばCBO推計の+2.2%という潜在成長率も過小評価かもしれません。下図を見る限り、パンデミックを契機とした労働市場の変容などを背景として米国の労働生産性(≒時間当たり実質GDP)は明らかに主要国の中で頭抜けて上昇しています。パンデミックで職を失った人々がより賃金の高い業種へ不可逆的にシフトしたという指摘は散見されるものです:

その分、潜在成長率ひいては中立金利も押し上げられている、という考えたは論理的です。少なくともドットチャートで示されるlonger runを中立金利と見なす議論に関しては、相当の幅を持って評価すべきであり、その「幅」もどちらかと言えば、上方向に想定した方が良さそうに思えます。

冒頭述べたように、今回の結果は筆者が2025年為替見通しの前提として抱いていたものと大きく乖離しませんでした。よって、見通しの「方向感」に大きな影響はありません。しかし、米金利市場を中心として思ったよりも市場のリアクションが大きいため、見通しの「水準感」には影響が出る可能性も検討したいところです。総じて、FRBの利下げは2025年1~3月期に1~2回、同じ期間に日銀が利上げ方向に動けるとしてもやはり1~2回、というのが現時点での置きになりましょうか。もちろん、細かな時期や回数は可変的ですが、「両者の金融政策の接近が円高をもたらす」という論点は25年に賞味期限を迎えるというのが重要なポイントになるのではないかと思います

需給に関しての考察は別
もっとも、常々口酸っぱく申し上げている通り、より重要な論点は需給構造の変化だと考えるのが筆者の立場です。この辺りは下記に論考を重ねておりますので、宜しければご笑覧くださいませ:



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