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日本の田舎で「1%の革命」が起きている…!

「マジでか…😨」

2014年に「増田レポート」を読んだ時の衝撃は忘れもしません。

元・岩手県知事の増田寛也氏が座長を務め、各界の有識者が集った日本創成会議が発表したものでした。


2040年までに、全国約1800市町村のうち約半数にあたる896市町村が消滅する恐れがある、と。

これを「消滅可能性都市(※)」として、具体的な自治体名までリストアップされていました。

2010年から2040年にかけて、20〜39歳の若年女性人口が 50%以下に減少する、人口が1万人以下の市区町村です。



話の筋はとてもシンプルでした。


地方から都心、特に東京圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)に若者が大量に流出していて、地方の高齢化が爆速で進んでおり

しかも、若者がいないということはそこで子どもが生まれないということなので、少子化も加速度的に進んでしまっている、というもの。


なぜ若者が東京に流出してしまうのかというと、地方の経済が弱く、若者が就職して生活することができないからです。

東京圏と地方の有効求人倍率の格差と、若者の東京圏への流出との間には明確な相関関係がみてとれます。

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出典:「地方消滅 東京一極集中が招く人口急減」増田寛也 編著


じゃあ、その流出先の東京で子どもが生まれるかというと、そうはならない。

東京の合計特殊出生率(※)は全国最低レベルの1.20(2018年度)です。

※ : 一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均


子育て世代にとって、東京は子どもを生んで育てるのに適していない模様。

特に、地方から出てきた人々にとっては家族や助け合える知り合いも少ないわけで、尚更でしょう。


そして、いっけん一人勝ちしているっぽい東京ですが、さにあらず。


今は若者が地方から流入してきているから賑わっているようにみえますが、その若者たちの多くは子どもを持たないまま歳をとっているのです。

つまり、あと30年もすれば東京は空前絶後の超高齢化都市になる運命(高齢者人口は2005年の599万人から2050年には1,122万人とほぼ倍増予定)。


地方が元気になることが唯一の活路なんだけど、「 人がいなくなる ⇄ 経済が縮小する 」という負のループにはまっていてまったく希望がみえん。


結果、日本全体が急激に衰退していく、、、そんな話でした。



「え、これどうすんの…😨」と思いましたが、増田レポートには具体的な処方箋は記載されておらずでして、ただ落ち込むばかりでした ⤵️



それから約6年の月日が流れまして

2020年2月のこと。

私は家族で長崎県は五島、福江島に旅行に行く機会をゲット。

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美しい海や自然、美味しいご飯。そして興味深い歴史と文化、たくさんのことを期待してワクテカしてました。


が、心配事がひとつ。


例の増田レポートによれば、五島市は2040年に若年女性人口が75.9%も減少する予定のまちです😇

若者、ほぼ消えるやん…


実際に、五島市の人口は1950年と比較して既に半分以下になってます。

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出典:五島市 人口ビジョン総合戦略


そんな消滅に向かって突き進んでるまちだから、きっとさびれてて、切ない感じなのかな…


ところがどっこい


美しい自然やご飯、文化や歴史は期待通り(というか、それ以上😆)だったのですが、まちも活気があるように感じたし、何より地元の人たちが元気。

子連れの親子も普通に歩いてる。


あれ?

と思って調べてみると、五島市はなんと2019年に人口の社会増を達成していたのです。

しかもその多くが子育て世代。


島から出ていく人より、島の外から移住しにやってきた人の方が多かったんです。転出は1,256人だけど、転入は1,289人でした。

(こちらのサイトで移住者のストーリーがたくさん紹介されとります!)


さらに調べると、社会増減(転入者 - 転出者)は2007年くらいから上昇トレンドに入っていたことが判明(※)。

※ : 社会増減でプラスなのに、人口減少が継続してしまうのは自然減があるから。自然減とは、死亡によって人口が減ること。現代日本では高齢者が多いので人口増減に占める自然減の割合が大きい。


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出典:長崎新聞, 2020/1/8


なんか、増田レポートに書いてあることと違うことが起こってる…?

でも、なんでだ?🤔



と、思っていたら、そんな疑問に真正面から答えてくれる本に遭遇❗️

藤山浩氏の「田園回帰1%戦略」です。



実は、今回私が五島で体感した子育て世代の流入は、全国の島嶼部や中山間地域でも起きていたのです。

地方の中でも市役所などがある「田舎の都会」ではなく、ガチの田舎、いわば「田舎の田舎」でみられる現象です


著者である藤山さんは島根を拠点にされています。

そこで人口分析をしてみたところ、なんと、島根県の1/3の地域で4歳以下の子どもが増えていました❗️

30代の子育て世代が親子で移住してきていたのです。

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出典:「田園回帰1%戦略」


こんなことが起こっている理由としてまずあげられるのが、地域の努力です。

島根県は「過疎」発祥の地といわれています。

それだけに、各自治体と地元住民はこの問題に早くから向き合い、様々な対策をうってきました。


その努力が、近年少しづつ身を結んでいるのです。この成果は2000年代後半から顕著になってきています。


実は増田レポートでは、2010年の国勢調査までのデータしか使われていません。

つまり、こういった地域の努力による社会増を正確に捉えていないのです。


例えば、増田レポートではばっちり消滅可能性都市に指定されている海士町。

こちらのレポートでは2040年の人口は2010年の約半分、1,294人と予測されています。20~39歳の女性人口も1/3になって52人になる、と。

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ところが

「ないものはない」をスローガンとして、海士町の自治体と住民が一体となって実践した定住戦略で社会増を実現 🎉🎉🎉

(この海士町の革新的な戦略はここでは語りきれないので割愛。概要はぜひ下記リンクでご確認を!島根県立隠岐島前高校の事例なんかは超有名)


これを加味して将来の人口を推測すると下記のようになります。

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出典:「田園回帰1%戦略」


社会増が継続することで2024年から人口増が始まり(社会増が自然減を上回る)、2044年には現在よりも多い2,520人になります。

高齢化率も23%まで減少しており、活気あるまちを取り戻している想定なんですね!

すごいっ😆


… とはいえ


そう。これは数少ない稀有な事例といわねばなりません。

日本中の地方では圧倒的に社会減&人口減に苦しんでいる自治体が多いのが現実。


それに、増田レポートが指摘する地方の経済力をどうにかしないと現役世代は生活できません。

もう、何から手をつければよいやら…


こんな疑問に対して、本書はスパっとこう回答しています。

「1年に1%の人と仕事を取り戻していけば、地域は、安定的に持続し得る。消滅はしない」



例えば、島根県益田市二条地区の事例です。

現状のままいけば、人口は2009年の660人から、2044年には1/3近い230人になってしまいます。高齢化率も高いままです。

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出典:「田園回帰1%戦略」


う〜ん、絶望的ですね 😇


日本の地方の現状はおおよそこんな感じです。

わかっちゃいるけど、どうすればいいかわからない…


でも藤山さんは言います「1%でいいんです」と


2009年時点の二条地区の人口660人。その1%といえばおよそ7人。

この内訳を典型的なUターンやIターンで移住してくる人の年代に合わせて考えます。

大学を卒業してすぐの20代前半 男女2人

子育て真っ盛りの30代夫婦に子どもが1人で合計3人

そして、定年退職してからの60代夫婦2人

全部合わせて7人です。


このたった7人がなんなの?って感じですが


もしこの7人が毎年二条区に移住してきたとすると、人口予測はこう変わります。

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出典:「田園回帰1%戦略」 


高齢化率は28%まで下がり、人口は485あたりで安定して推移することになるんですね❗️


確かに、これなら消滅しそうにない ⤴️⤴️⤴️

実際に海士町はこの1%増をやれたわけだし。


藤山さんはこのシミュレーションを各自治体、そして地元の人々と共有し、具体的な目標設定をしています。


「2040年に人口が半分になってまちが消滅するよ😈」って言われたら絶望するだけですが

「毎年7人の移住者をゲットできたら地域が存続できるよ👼」って言われると、なんかやれそうな感じがしてきます…!



でも、毎年増えるこの7人、就職先とか大丈夫なんですかね…?

結局それがボトルネックなんですけど…


ここでもやっぱり藤山さんは言います

「1%でいいんです」と


1%の人を増やすんだから地域の所得増も1%でOKなのです。


っていうか、そもそも、なんで地方には仕事が少ないのでしょうか。

それは、実は地域の皆さまが頑張って稼いでいるお金が地域の外に流出してしまっているからです。


藤山さんが所属する島根県中山間地域研究センターが地域を徹底的に歩いて調査をしたところ、地元の人々の支出の半分以上は域外で行われていることが判明。

また、域内で行われている消費にしても、その商品/サービスの約9割は域外で生産されているものでした。


例えば、パン 🍞

先の研究センターの調査によれば、中山間地域の人々は一世帯あたり年間3万円をパンに使っています。

仮に300世帯、1,000人の地元で考えるならば、そこには1,000万円分のパンの需要があることになります。

もしパン屋さんがこの地域にあれば、この需要を地元で丸ごと吸収できます。


でも、このパン屋さんで売っているパンが域外で製造されたものなら年間の「地元所得創出額」はたった110万円に過ぎません。


ところが、もしこのパンが地元の原料を使い、地元で製造されていたとしたら、なんと「地元所得創出額」は460万円になります。

これは、英国のシンクタンクNEF(New Economics Foundation)のLM3という域内乗数の考え方です。

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このLM3の考え方は地域の産業全てに当てはまります。

大規模な新規産業なんてなくとも、人々がほんの少し意識して地元の商品/サービスを選択すれば、所得1%増は実現できるのです。


でも、ここでポイントがひとつ!

それは、ひとつの仕事でひとりの雇用をまかなうという固定概念に囚われないこと。


先ほどのパン屋の事例にしても、これまで9割域外で確保していたものをいきなり100%地元でまかなうなんてちょっと現実的ではありません。


でもそうすると、パン屋だけでは生活できないことに…


でも大丈夫 🙆‍♂️🙆‍♀️

別の仕事と掛け持ちすればよいのです。

地方の人々の多くは既にそうして生計を立てています。


最近話題の「半農半X(※)」なんかはまさにこれですね。

※ : 自分や家族が食べる分の食料は小さな自給農でまかない、残りの時間は「X」、つまり自分のやりたいことに費やすという生き方


東京なんかでは、人のフルタイムの労働力を1とした時に、0.3や0.2にしかならない仕事は切り捨てられていました。


でも、そうじゃないんです。


こういう0.3や0.2を組み合わせることによって地域経済に大きな可能性が生まれます。

産業別の縦割りを廃し、限られた人のリソースを最大限効率的に使うわけです。


実際、近年地方ではこういった多くの事業を少人数で手掛ける企業体が大活躍しています❗️

有限会社グリーンワークのご活動とかすごいです。

農林水産省のHPでも紹介されているので詳細が気になる方はぜひご確認を📝



もちろん、東京と比べたら所得水準は下がるでしょう。

でも本来、人生の豊さとは所得だけで換算されるものではありませんよね。


「田舎の田舎」には東京に住んでいる人がいくらお金を出しても買えない美しい自然や食、伝統、文化、地域活動を通じた人との繋がり(ソーシャルキャピタル)があります。

僕が今回お邪魔した五島もそうでした。


もちろん東京での生活を否定するわけではありません(私も東京在住ですし)。ただ、色々な豊さの基準があってもよいはずです。

所得を優先する人もいれば、豊かな自然と地域の人々に囲まれた暮らしを選ぶ人もいたっていい。


そんな人々が地方でイキイキ生活できるようになった時、増田レポートの予言を覆す「1%の革命」がこの国で起こります。


こりゃ、この戦列に加わらないわけにはいかない。

脳内でレ・ミゼラブルの「 Do you hear the people sing 」がこだまする⚡️



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