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就職活動は、スマホでエントリーボタンよりも、ピンポンを押した方がいい。ー 教え子Sさんの一言より

今年も有難いことにいろいろといいことがあった。いろいろ振り返ってみてる。いま。

せっかくだから、誰かの役に立ちそうな話をここに載せておきたい。

2017年から、故郷佐賀の佐賀大学の芸術地域デザイン学部の非常勤講師として授業をしている。夏の集中講義の4日間。

これが、実は恐ろしいほど、優秀な学生が多い。優秀を何と定義するかによるけど、発想力、行動力、チャーミングさ、言語力、などのどれかを持つ学生が、確実にいる。

僕の担当は、「コミュニケーションデザイン論」と「コミュニケーションデザイン実践」。中身は、コミュニケーションデザインなんて人類始まって以来やってることを最近の人がタグ付けしただけでそんなのまやかしだから、自分で定義して、って授業。ま、それは、またどこかで詳しく書く機会があれば。

最初の年。2017年の夏に僕の講義を取ってくれた学生たちとは、いろんなカタチで連絡を取り合って、たまには背中を押したり、たまには助けてもらったりしているが、その中のSさんについて今日は書きたい。

夏の講義も終わって5ヶ月たった、2018年1月だったと思う。Sさんからメールが来た。「会社でお話を聞かせてくれませんか?OKでしたら、2月東京に行きますから。」と。何の話を聞きたいの?と書くのも野暮だなと、内容は楽しみにして、もちろん来てよ、と返事をした。一人じゃ不安だから、同じ授業を受けていた大親友について来てもらうらしい。

2月。Sさんは本当に会社に来た。親友と二人で。
ちなみに二人は大学2年生。就職活動のOB訪問といえば、まあそうなんだけど、短期間だけど教え子なわけで、ちょっと違う気持ちで迎えた。

「で、何の話聞きたいの?」

お台場の海の見えるビルの25階で、コーヒーをすすりながら話は始まった。

「年末年始、家でお父さんとゆっくり話す機会があって、『何かやりたい仕事とか、好きな会社とかあるの?』って聞かれたんです。」
「ふんふん。」
「1つある、って答えたら、父から宿題を出されたんです。『1月の終わりまでに、そこに話を聞きに行く連絡を入れてみない?』と。」

僕は、そのお父さん凄くいいなぁって思ったんですね。その宿題の出し方。
大学2年生に、好きな会社があるとしても、「1月中に会って来て」だと、階段が高すぎて、1歩なかなか踏み出せない。「連絡する」までをミッションにするっていう、20歳の目線に立ったスモールステップが愛。だなと。

Sさんはその宿題を了解。やってみることになったそう。

「お父さんが『ちなみに、その好きな会社ってどんなとこ?』と聞くんで、その場で検索して見せたんです。そしたら、、HPに連絡先が載ってない。。電話も、アドレスも。二人でがっかりしんですけど、お父さんに『その次に会いたい人とか会社は?』って聞かれたんで、2番目は佐賀大学に授業しにきた電通の倉成さん、と答えたら、『じゃあその人でいいから1月中にアポを取ろう。』となり、1月中に連絡して、今日会いに来たんです。」

そんなストーリーがあったのか、ってのと、2番(だとしても)に選んでくれたことが嬉しかった。

「ちなみに、その1番行きたい会社って?」と聞くと、検索して教えてくれた。

それは渋谷にあるグラフィックデザイン会社(仮にLとしておこう)。CDのジャケットとかを多く作ってる方の会社で、僕もその方の名前は存じ上げている。
で、、そのHPの下の方を見ていくと、、住所は書いてあった。
「Sさん、住所書いてあるじゃん。」
いまどきの若い子にとっては、メールアドレスが書いてないと、連絡先が載ってない、ってことになるんでしょうね。無意識に、だったかもだけど。「あ。」

ま、そのおかげで、僕のところに会いに来てくれてよかったけど。

「住所あるなら、手紙書けば?」

「確かに、そうですね。」

「その方が返事くる率高いかもだしさ。」

一旦、L社へ連絡取る話はそこで終えて、せっかくだから、授業ではしゃべってないいろんなことや僕の20年前の就活の話をし(ちなみに生涯受けた10社中、1社しか受かったことがない)、せっかくだから社食でランチを食べ、せっかくだからすれ違ういろんな若手を紹介したりして、応援してるよ、頑張ってね、と送り出した。

それから約2年が経ち。

どうなったかなあ、、って、思ってたら、こないだ。

Sさんより久々の連絡があった。


就職が決まり、あの時のお礼を伝えたいので、東京で時間をくださいとのこと。

12月12日。朝9:30。

神谷町のコーヒー屋で会うことに。

あのあとどうしていたか、そしてどうやって就職したかというストーリーを報告してくれた。

2018年、僕に会いに来た直後。例のデザイン会社Lの社長さんが福岡でトークセッションをするイベントを見つけて、行ったらしい。モデルさんとの対談で、終わったあと、みんなモデルさんに握手に向かったそのスキを狙って、SさんはL社社長に話しかけに行き、名刺をもらう。

その後Sさんはまた東京へ行くチャンスを伺い、渋谷のL社へ。
受付のインターホンを押す。アポなしでピンポンしたらしい。
社長さんが出てきて、覚えていて、話を聞いてくれて、2018年夏はL社でインターンが決定。無心で頑張ったらしい。

そうしているうちに、新たにもう1社、映像関係の気になる会社を発見。2019年夏はそこでインターン。気に入られ、そのまま就職が決まったらしい。そしてさらに卒業前なのに、すでに月の半分は佐賀から東京に出てきて、バイトで制作進行業務をしていて、就職セミナーには社長と2人で出て(まだ学生なのに)、ブースに来た学生に面談&アドバイスしたりしているらしい。ほぼ同い年の卒業前の社員がブースにいて、学生も驚いていただろう様を想像するのはとても愉快だった。

そう語る彼女の目は、ほんとにダイヤモンドの輝き以上。
少女漫画みたいに目の中に3つ、星が見えた。

2年前は、行きたい会社の住所がHPに載ってることすら気づかなかった女の子が、2年後は、こんな風に僕に律儀に報告に来て、
「早く自分の企画を実現させたい」
「すでに働いてる同級生に負けたくない」
「学生時代もいろいろ作ってたけど社会の真似事に過ぎなかったから」
なんて言っている。

人ってほんと凄いな。

同級生は、何十社受けて全部落ちたとか、何社受かったとか言っているそうだけど、彼女の就活は1/1。打率100%。

そんなSさんから就活生へのアドバイス。
「スマホでエントリーシートを送るボタンを押すより、
 入りたい会社に直接行って受付でピンポンを押した方がいい。」

神谷町の駅を降りて、その日も制作進行のバイトへと
颯爽と去る彼女の背中の写真を撮った。

数年後、何を作って、報告してくれるか、楽しみだな。
こういうのが先生の一番の楽しみなんだろうな。

がんばってね。俺も頑張るよ。

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