見出し画像

政策が与党と野党で似る傾向は世界で起きている!?〜メカニズムを経済学の視点から考察〜

 10月は、選挙に関する報道が多数行われた月でした。そして、政治と経済の繋がりについても考えさせられる月でもありました。下記の記事にある通り、与野党が目玉に据えた給付金などの分配策は似たものが多く、何を意識して投票すれば良いのかと迷った方も少なくないと思います。実は、与野党で公約や政策が酷似するのは、世界でも見られる傾向なのです。なぜ、政策が似てくるのかをミクロ経済学の視点から考察してみようと思います。今回のコラムは、政治と経済の繋がりに関心がある方に、未来を考えるためのヒントになると思っています。


世界で見られる与野党マニフェストが酷似する現象

 与野党のマニフェストが酷似する現象は、世界で見られます。特に、二大政党の国の選挙で散見されます。例えば、2020年に行われた米大統領選挙では、バイデン大統領はリベラル寄り、トランプ元大統領では保守よりと報道されてきました。しかし、それぞれのマニフェストは、バイ・アメリカン政策という言葉が両氏から出てきて、米国製造業の復活、米国産業への投資など、とにかく米国を第一に盛り上げる政策がメインでした。両氏が掲げる経済政策は似ていました。

 更に過去に遡ると、2007年のフランス大統領選挙の決選投票で、リベラル派のロワイヤル候補も、保守派のサルコジ候補の政策が中道狙いの酷似した政策を発表したことも話題になりました。なぜ、このような現象が起きるのでしょうか?

二大政党は中道狙いになりがち?

 ミクロ経済学のゲーム理論の文脈から、上記の現象メカニズムについて考察します。例えば、その国には100人しかいないとします。国民の政治的専攻は、保守寄りからリベラル寄りまで、様々な人が存在しているとします。ここでは、一直線上に、右端に最も保守寄りの人から、左端に最もリベラル寄りの人まで、国民の選好が均等に分布しているとします。そして、各自は自分の好みに近いマニフェストを掲げた政党に投票をするとします。この時、各政党が最も票が取れるのは1/2の点であり、それがナッシュ均衡になります。ここでの、ナッシュ均衡とは、自分たちの政党だけが戦略を変えても、得票数が増えることはなく、得をしないというのが、全ての政党に当てはまる状態のことです。そして、この1/2の点というのは、二大政党の政策は、有権者の好みの真ん中を狙う、似頼ったものになるということです。これが、アメリカやフランスで起きていたと考えられます。こうした現象を、政治経済学の文脈では「中位投票定理」と呼ばれています。

日本では何が起きている?

 日本の場合は、二大政党制かというと微妙なところです。しかし、今回の選挙では野党の一部が共闘を掲げたことにより、与党と一部の野党間で、二大政党に近いような現象が起きたのかもしれません。それが、各党が似たような政策が出てきた背景にあるのかもしれません。もちろん、政治家の方々は、日本の現状を思って、分配ありきの政策をメインにしているとは思いますが、この状況で分配政策をメインにしないのは(成長ありき)、票が加算されることはまずないとの判断もあるのかも!?

今回は、ミクロ経済学目線で経済と政治について考察してみました。

ここまで読んでくださり、ありがとございます!

応援いつもありがとうございます!

崔 真淑

*画像は、崔真淑著『投資1年目のための経済・政治ニュースが面白いほどわかる本』より抜粋しました。無断転載はおやめくださいね♪

コラムは基本は無料開示しておりますが、皆様からのサポートは、コラムのベースになるデータ購入コストに充てております。ご支援に感謝です!