政府の公的家族関係支出(子供手当、出産・育児休暇手当など)を増やしても少子化は解決しない
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政府の公的家族関係支出(子供手当、出産・育児休暇手当など)を増やしても少子化は解決しない

荒川和久/「結婚滅亡」著者

成人の日の「新成人人口、過去最低」と並んで、子どもの日の「子どもの数、過去最低」という定番のニュース。

当たり前というか、出生数が毎年減っているのだからそんなの前からわかりきっていた話で、別に驚くことでもないし、ニュースにすることのほどの事実でもないのだが、新聞社にとっては、節分の豆まきみたいな、もはや風物詩としての話題なのだろう。

あのイーロン・マスクにさえ心配されている。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN081QC0Y2A500C2000000/


こちらのニュースでは、野田少子化担当大臣の会見も取り入れて、より突っ込んだ話をしている。

野田氏は26日の会見で、少子化が進んだ原因について「少子化が国にとって大きな問題ではないという空気があった。スルーしてきたことが一番大きな問題だ」と指摘した。

野田さんは、少子化問題は「政治が逃げてきた」というが、そうではない。ズレていたからだ。

そもそも子どもが生まれない問題ではなく、その前段階の結婚の問題であるにもかかわらず、今までの少子化は既婚夫婦に対する子育て支援ばかりだったからだ。子育て支援を否定しないが、申し訳ないが、それは少子化対策にはならない。

問題は、少子化ではなく「少母化」という話はさんざんしてきた。結婚している女性単位でみれば、1980年代と産んでいる子どもの数は変わらない。子どもの数の問題ではなく、その前提となる母親の数が減少しているのであり、その原因の最たるものは未婚化であり、もっといえば、もはや1990年代に第三次ベビーブームが発生しなかった時点で、49歳までの女性の総人口が毎年減り続けることは確定しており、今後二度と出生数が劇的にあがることはありえない。

いい加減、もうわかりきったことに蓋をして、適当なこと言うのやめたらどうです?政治家も新聞社も。

「どうにかしなきゃいかん」なんて時期はとうに過ぎた。「どうにもならない」状態に突入している。

実際、FNNの記事にもある通り、官僚はもはや「少子化の原因は未婚化・非婚化」であり、婚姻数が増えなければ何の意味もないと悟っているし、正しい事実認識である。統計的には、離婚リスク含めても1婚姻で1.5人の子どもが生まれる。そして、結婚して子ども産む人間というのはいつの時代でも若いうちに勝手にする。つまり、少子化対策と銘打った子育て支援は、それがなかったとしても子を産む「恋愛強者」たちを支援しているだけであって、何ら新たな出生には貢献しないのである。

2人産んだ夫婦が3人目を産もうかという動機にはなるかもしれないが、それで増える出生率と1婚姻が増えることで増える出生率とでは後者の方が高い。

要するに、少子化を解決するには婚姻増しか道はない。

そして、何度も言うように、婚姻が増えることは今後もないので、結局少子化は解決などされないのである。

2020年の不詳補完値計算による生涯未婚率は、東京では男32%、女24%になった。3人に1人の男、4人に1人の女は、東京では生涯未婚なのである。

そういうといつもお偉いさんに怒られるわけですが…

この中で、政府の公的支出としての家族関係支出(子供手当、寡婦手当、出産・育児休暇手当、保育支援など)GDP比が、欧州のフランスなど少子化対策がうまくいっている国に比べて、低いからだという指摘があります。

少子化問題に対して各国がどれくらいカネを使っているかということで、家族関係社会支出の対GDP比率を見てみると、OECD平均は2.34%です。それに対して、日本は1.79%で、最も深刻な国であるはずなのに、予算はあまり使っていません。ちなみに、韓国はもっと使っておらず、1.30%です。

しかし、表層的にはそうだが、そう短絡的に結論づけられない。では、家族関係支出GDP比と合計特殊出生率に相関があるかといえば、何の相関もないわけです。

これ厳しい見方をすれば、政府が支出を増やしたところで出生率はたいしてあがってないし、米国やトルコなどは日本より支出率低いのに日本より出生率高いじゃないかとツッコミみたくなります。

こちらの記事も話題になりました。

ま、現実問題として実現性は皆無だと発言者本人も思いながらのものだと思いますが、これとて多分効果はないでしょう。効果がないというか、金をもらわなくても産んだ夫婦が棚ぼたの金を手にするだけに過ぎない。

別に今だって子ども一人産めば約200万円支給されている。子どもの誕生から中学校卒業まで、支給される児童手当の総額は、1人あたり198万円(第1子、第2子の場合。第3子以降は1人あたり252万円)。世帯主が1200万の年収まではこれがもらえる。加えて扶養控除など税制優遇もある。

誤解ないように言っておくが、子育て支援を否定していない。それはそれで考えるべき重要なこと。子育てしているそれぞれの親からすれば支給されれば助かる。産む意欲のある人にはどんどん産んでもらいたいし、そのための支援はあってしかるべき。しかし、ここをさらに拡充しても全体的な少子化は解決しないってこと。

そして、万が一、婚姻数が激増したとしても(しないと思うが)、前述した通り、もはや子を産める対象年齢の49歳以下女性の絶対人口が減り続けているわけなので、母数が少ない以上出生数が増えることはないのである。

そもそも人口減少に至っては、もう間もなく「50年戦争」がはじまるわけで、太平洋戦争時に匹敵する年間150万人以上の死亡者が50年間続く多死時代を迎える。70万人しか生まれないのに倍以上の150万人死ぬ。人口が増える道理がないのである。

そろそろ私たちは、その現実を直視し、「人口は減り続ける」という現実を前提に適応戦略を考えないといけないフェーズに来ている。人口が今の半分の6000万人になってしまう未来を「恐ろしい」「危機だ」と言っていれば未来が変わるものではない。「恐ろしい未来」ではなく「当然やってくる未来」としてとらえ、6000万人になってもやっていける道筋を構築する。そうした視点に考え方をシフトしていくべきだろう。

人口動態ほど予測可能な未来はない。現在の事実を知れば当然的中する未来がそこにある。今やるべきことは、「国が亡ぶ」などと情緒的な話で危機感を煽ることではなく、不可避な現実をきちんと把握して、それに対処するという姿勢だ。

知床の事故は、まさに予測可能な未来を見誤ったがゆえの悲劇ではなかったか。少子化対策すれば、子育て支援を拡充すれば少子化は解決するなどという妄想は捨てて、「出生は減る、人口は減る、その中でどうするか」という船長が必要なのであろう。

思い起こせば、2015年くらいに「未婚化は不可避」と書いたら、ヤフコメでもツイッターでも叩かれまくったのだが、当時は「結婚して子ども生み育てて一人前。できないのは人間失格だ」というコメントが当然のように書かれたりしたものである。あれから7年しかたっていないが、結婚に対する意識は随分と変化したのを感じる。少子化についてはもう少し時間が必要なのかもしれない。



同じような話は以下に書いた。若者の数は減るに決まっている。問題はその前提でどうするかという話。


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荒川和久/「結婚滅亡」著者

長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。

これからも更新しますね!
荒川和久/「結婚滅亡」著者
11/13に新刊「結婚滅亡」が発売です!他著書「ソロエコノミーの襲来」 「超ソロ社会」「結婚しない男たち」等。東洋経済等でコラム執筆したり、テレビ・新聞によく出ます。独身研究家として活動させていただいてます。メディア出演・執筆・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージから。