観光再開、でもどうやって?=ドイツ版「GoTo」から考える
ドイツでは鉄道乗り放題キャンペーンがこの9月、2週間にわたり実施されました。新型コロナウィルスの感染者数が減少に転じると、社会の関心は諸々の再開に向かいます。
今回は、今必要なことは何なのか、ドイツの例を取り上げて考えてみます。
日本では緊急事態宣言の解除が発表され、
経済再開に向けた様々な支援策が話題に上がるようになりました。
観光といえば、ごっそり姿を消してしまった訪日外国人に代表されるいわゆるインバウンド戦略をどうするのかも、先日の自民党総裁選のテーマのひとつになっていました。
筆者は日独の状況を見ていて、諸々の経済活動を再開させることに異論はありませんが、
一方で、「どのように」という問題意識は改めて考えてみるべきなのでは?
と、感じています。
ドイツ版の「Go To トラベル」?
というわけで、まずは冒頭で触れたキャンペーンを紹介してみます。
キャンペーンの正式名「Deutschland Abo-Upgrade」は、訳すなら「ドイツ・定期券アップグレード」でしょうか。内容は、通学・通勤用の定期乗車券が2週間のキャンペーン期間(9月13日から26日まで)、「アップグレード」されて、通常の有効範囲地域を超えてドイツ全土で利用できるようになるというキャンペーンです。驚くことに追加料金は不要。オンラインによる事前登録のみで利用可能でした。
ただし、乗り放題になるのはICEとICという長距離列車を除く、列車(各停や地域快速など)とバス、地下鉄などの公共交通(一部例外有り)です。日本の「青春18きっぷ」に近いものです。(公式サイト)
この乗り放題キャンペーンは、ドイツの国と州、各地域の交通公社によるイニシアティブ団体「#BESSERWEITER」(およそ、「より良く、前に」という意味)によるもので、国が主導した乗り放題企画といっていいものだと思います。
鉄道の移動を促進するという意味では、ドイツ版の「Go To トラベル」と言ってもいいのではないでしょうか。ちなみに独誌『シュピーゲル』の記事によると、70万人を超える人がキャンペーンを利用したそうです。
科学的知見を丁寧に説明
乗り放題がすごい!と言いたいのではないです。驚いたのは、このイニシアティブのホームページにおける鉄道乗車を促す理由の説明の仕方です。
キャンペーンの動機として、
鉄道やバスの移動による感染リスクは高くない、
つまり、他の場所と比較して鉄道やバス内での感染リスクが特段に高いわけではないという科学的な知見に基づいたものだと説明されています。もちろん大前提として、医療用マスクの着用義務やソーシャルディスタンスの確保は守られる必要があります。
ホームページから転載になりますが、以下の画像は、ドイツ政府の感染症機関ロベルト・コッホ研究所やベルリン医科大学シャリテといったドイツ国内から、オーストリアや英国、フランスのものまで、研究時期とその結果がまとめられています。サイトにはさらに詳細な情報も網羅しています。
観光を再開するために。。。。
こういった科学的知見を丁寧に見せられて筆者は非常に納得してしまい、実際にキャンペーンも利用してしまいました。
ここで改めて考えてみたいのは、経済の再開を急ぐあまり誤った行動をしてしまうのではという可能性です。(筆者はドイツを見習え!などと主張しているわけではありません)
ただ、今一度、世界各国がどのように経済や観光を再開しているのかを見渡し、場合によっては参考にする「賢さ」が求められている、そういう局面にあるのでは、
と昨今のニュースを見ていて思いました。
今回は以上です。誰かの参考になれば幸いです。
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タイトル写真:ネルトリンゲンのマルクト広場。今回のキャンペーンを利用し訪れた観光ルート「ドイツ・ロマンチック街道」の町のひとつ。中世の面影を色濃く残す円形の町を囲む市壁とその町並みはマンガ/アニメ『進撃の巨人』の舞台なのではと度々噂されるだけでなく、古くはTV番組『水曜どうでしょう』にも登場したり、近年では教会塔「ダニエル」に住む猫ヴェンデルシュタインが日本でもTV番組が取り上げるほど注目されているドイツ観光を代表する町のひとつ。(フランクフルトからの日帰り旅を実況した筆者のツイートも参考になるかも)