2020年の経済展望
2020年の景気は、夏場にかけて東京五輪関連の消費特需が盛り上がる可能性が高いでしょう。2020年の訪日外客数は政府目標の4,000万人までは行かずとも3,500万人は超えそうであり、5兆円を大きく超える外国人旅行消費額の出現の可能性があると考えています。
また、東京五輪観戦のための国内旅行やテレビの買い替え等の特需が発生することも予想され、特に6月末にはキャッシュレスのポイント還元の期限を控えていることから、年前半に駆け込み需要が発生することが予想されます。
しかし、2020年の消費を占う上では、家計の負担増も大きなカギを握るでしょう。消費増税に伴う負担軽減の時限措置の多くが期限を迎えることに加え、年明けから給与所得控除の見直しや10月にたばこ増税といった負担増が予定されています。なお、税制改革が今年の家計に及ぼす影響を試算すると、トータルで昨年に比べて年間1.6兆円の負担増となります。
金融市場のバブルもリスクだと思います。98年のLTCMショック後の逆イールド発生時の様にFRBが金融緩和をしすぎると、99年以降のITバブルのように、今回も短期的に金融市場でバブルが発生し、その後崩壊する可能性もあり、その場合には日本経済への悪影響も無視できないでしょう。
また、今年11月に控える米国大統領選挙に対する不確実性にも注意が必要です。最大の注目は、トランプ大統領と民主党候補者の経済政策です。トランプ大統領の経済政策の特徴を勘案すれば、更なる拡張的な財政政策への期待と保護主義的な通商政策の懸念が残りますが、民主党候補者の一人であるバイデン前副大統領はトランプ政権の保護主義を批判しており、通商面で不透明感が少なく、企業に対する規制に対しても前向きでない点が、金融市場にとってポジティブだと思われます。しかし、同じ民主党候補者のウォーレン上院議員は、反自由貿易主義で企業や高所得者への増税、企業への規制強化を打ち出しているため、民主党候補者が誰になるのかも金融市場の大きな焦点となるでしょう。
2020年の相場環境については、トランプ大統領が再選を目指すべく経済重視に政策がシフトすることが予想されます。また、日本でも東京五輪特需が期待されることに加えて、中国のGDP倍増目標期限年でもあります。このため、リスクオン気味に推移するとの見方が強まれば、世界の株式市場の押し上げ圧力となる可能性があります。ただし、米国大統領選後に米中の覇権争いが再び激化することが懸念され、任期満了に近づく安倍首相が経済政策後回しで憲法改正に邁進するリスクも警戒されます。このため、年後半はリスクオフに伴う株価の下落が金利低下・円高を後押しする展開になるかもしれないと個人的には見ています。