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ファストファッションの予想以上の闇

日本でも若い女性から人気を集め、アメリカではティーンや大学生を中心にカルト的な支持を得続けているブランド、Brandy Melvilleの悪質なビジネス、上層部の人種差別や若い女性の搾取、ファストファッションによる地球環境破壊など重要な問題を暴いた今年4月に公開されたドキュメンタリー、「Brandy Hellville & the Cult of Fast Fashion」。凄まじい事実を暴きながらも、それでもなおブランドの人気が衰えないなのが恐ろしい。

Z世代に人気のブランドBrandy Melville幹部がティーン女性の社員(アルバイト)に対して残酷なセクハラや人種差別、ルッキズムに基づいた雇用差別をしていたことを暴いた、2021年9月に公開されたBusiness Insiderの記事。この記事がきっかけとなり、一時的にはブランドのイメージが急落し、大きな波紋を呼んだ。

このブランドのワンサイズしか展開しない体系差別や店員、モデル起用の人種差別は昔から指摘されていた。 白人で美人で細いティーンだけを雇用し、賃金もルックスの良し悪しで差別化。上層部がヒトラーのミームをグルチャでシェアしたり、モデルやインフルエンサーになりたいティーン女子たちを性的に搾取していたことが暴かれ、このブランドがここまで若い女性の間で広い支持を集めていること自体が危険だとさえ言われた。

記事やドキュメンタリーで語られた内容は大まかに以下だ。

14歳くらいの子も応募する、人気かつステータスシンボル的なバイトでもある「ブランディーの店員」。応募する際には社長がルックス審査をし、細くて美人じゃないとクビにしたり、黒人が多いと白人と入れ替えるよう命令するという。 雇用の合否や賃金の値段は、写真やインスタグラムのスクショだけで幹部が判断、細くて白人で美人だと賃金も高い。

有色人種の店員のことを排除したり、多いと「ゲットーみたい」と侮辱。 差別に抵抗した上層部の社員はクビに。

社長を含む上層部のグルチャでは人種差別的なジョークやヒトラー/反ユダヤに関するミームをシェア、150枚の証拠写真がある。

17歳でアルバイトを始めた女性は服を試着する時、トイレで着替えず幹部の前で服を脱いで着替えることを強制されたと告発。言うことを聞かなければクビになる危険性を感じたという。

来店した客スナップ写真を撮ってその服を丸パクリして商品化したり、Tumblrで見つけた画像を(社長等の許可を得て)店内で服に印刷してそのまま売ったり。これは単純に他社のブランドやデザインの盗作だ。

元店員たちは「ブランディーメルヴィルサバイバー」などと名付けたグルチャを作って、恐ろしい実話をシェアしていたという。若くて細くてブロンドでブルーアイの女子だけがブランドの顔になれる、2013年みたいな価値観は古すぎるし、時代遅れだとも。

この記事の筆者が最も驚いたのは、シフトのたびにスタッフが全員「全身画像」を幹部に送らなければいけなかったこと。1日に社長が2000通ものメッセージを受け取っていたこともあると言う。

調査に参加した元店員の話で、メンタルヘルスや摂食障害を著し悪化させる環境だったという発言も出ている。店全体でダイエットを強制したり、太ったらクビになることを恐れて摂食障害が加速。 そもそも法律上、見た目や人種で雇用差別をしてはいけない状態でこれが横行していることに唖然となる。

さらに、ドキュメンタリーではBrandy Melvilleだけではなく、ファストファッションやファストファッションの普及に伴う服に対する人々の価値観の変化によって、いかに世界中で取り返しがつかないほどの環境破壊が起きているのかについても着目している。この点を含めて、非常に出来の良いドキュメンタリーであると感心したし、ぜひ日本でも公開してほしいとも思う。


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竹田ダニエル
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