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日経電子版で、「私の新人時代」という新社会人に贈る言葉的なコーナーに取り上げていただきました。

社会人になったころの話など、もはや「にほん昔話」の域で、記者さんのご質問に記憶を掘り起こしながらなんとかお応えしたという感じでしたが、久しぶりに当時自分が何を考えていたか、どんな心理状態だったかを思い出すことで、今取り組んでいることの目的意識もよりクリアになった気がします。記者さんとの会話も楽しく、貴重な機会を頂いたことに御礼申し上げたいと思います。
一方で、新人時代に特化したテーマには合わなかったり、紙幅の関係などでお伝えしきれなかった思いもあるので、すこし補足させていただければと思います。

この記事では、「公益事業、インフラ企業と呼ばれる会社の仕事が地味だけれど誇りをもって社員の皆さんが取り組んでいる」ということにフォーカスして伝えていただいています。これはとても大事なことで、インフラ企業の現場の地味さ・泥臭さ、そして間違いが無くて当たり前で批判されることはあっても褒められることはないことに疲れを覚えている新社会人もおられるかもしれないと思えば、このテーマ設定には意義があったと思います。
一方で、他のインフラ企業と一律で「誇り」を語り切れないのは、東京電力は、あの福島原子力発電所事故を起こした責任を負う企業であるということです。
多くの社員が新人時代に感じたであろう、地域や社会への貢献に対する喜びや誇りをすべての社員が持ち続けていたら、あの福島原子力発電所事故は防ぐことができたのではないか、といった忸怩たる思いは、退職して10年以上たつ今も持ち続けており、そのことは記事にも書いていただいた通りです。
東京電力が自らの事故検証を行った「福島原子力事故調査報告書」では、かなり踏み込んで自分たちの責任に言及しており、そうした忸怩たる思いは私に限らず、多くの社員・元社員がもっているのだろうと想像します。
新社会人の皆さんには、「地域や社会に貢献する仕事に誇りをもってくださいね」というエールと同時に、「その気持ちをいつまでも持ち続けてくださいね」という願いもお伝えしたいと思います。

そして今回記事ではほとんど触れられていませんが、これが退職して10年以上たつ会社での新人時代であることについて感じたことがあります。
日本は人材の流動性が低いせいでしょうか、メディア等でのプロフィール紹介なども、新卒で入った会社にこだわる向きが強いと感じています。これは私が東京電力という、特殊な立場の会社にいたことが強いのでしょうが、私のエネルギー政策に関する提言や論考、発言をご覧になって「この人は元東電だから」と入り口で聞くことを閉ざす方もおられます。そのような方は、退職してもずっとその会社への帰属意識をお持ちなのだろうかと不思議な気がします。昭和はそれが普通だったんですかねぇ?給料をもらうわけでもない無関係な会社のために物申すなんて割に合わないだろうと思うのですが。
新しい社会人の皆さんには、終身雇用を前提とした「永続的帰属意識」とでもいうような風潮をどんどん変えていっていただきたいと思っています。
「私の新人時代」というコーナーは、「新人時代辛かったり苦労したりしても、その経験は後で役立つよ!」といったエールを送ることが基本的な目的なのだろうと思いますが、私のように退職した後にその経験に助けられるということも多々あるわけで、せっかく辛い時期を頑張ったんだからとその会社にしがみつく、あるいは、縛られることはモッタイナイと思います。
エネルギー業界に特に顕著ですが、日本は人材の流動性があまりに低い。米国などのエネルギースタートアップを見ていると、大手事業者の部長クラスまでいった方が創業者であることも多いのですが、日本では若手クラスでそうした動きも出てきたもの、まだまだです。そうした現状を変えたくて、私は、エネルギー・温暖化に関する政策提言の仕事のかたわら、スタートアップと協業した“Utility3.0の創出”を目指して、U3イノベーションズ合同会社を起業しました。
やりたいこと、やるべきだと思うコトが見つかれば、皆さんもどんどん新しいチャレンジをしてくださいね。新しいチャレンジをするたびに、「新人時代」です。

そして最後に。

このコーナーは、若干スポ根ドラマ的に、新人時代は辛かったと書かれていますが、それは私が根性なかっただけです(断言)。通勤するだけで疲れ果ててしまい、金曜夜ごはんの後に寝落ちして目覚めたら土曜日の夕方5時だったり、入社半年して定期券がきれたとき「あと半年はもたないだろうから、定期券を買うまでもない」と回数券で通ったりしていましたが、日々いろいろなことが起きる現場での仕事は楽しかったですし、会社の同僚・先輩だけでなく、お客さまにも育てていただいたなぁと思います。
電気工事店さんは東京電力にとってお客様ですが、「また新人が入ってきたな」と腕まくりして、いろいろ教えてくださいました。荒っぽい口調の方もおられましたが、近所の鯛焼きを差し入れてくださったり、現場での立ち合いではお客様側の設備について詳しく説明をしてくださったり。自分を育ててくれるのは、会社の人だけではないということもぜひ知っておいてください。少なくともそうやって育ててもらった私は、新社会人の皆さんを、みんなで後押ししていく社会にしたいと思っています。

新社会人の皆さん、就職活動中の皆さん。皆さんが手ごたえのある社会人生活を送ってくださることを心から祈っています。一緒に「良い日本」を作っていきたいですね。




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