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実例で学ぶ: フラット&信頼が織りなす「コミュニティ型チーム」が導くイノベーション

これまでコミュニティ醸成について、様々な角度から記事を書いてきましたが、最近特に「コミュニティ型チーム」づくりについて注目しています。

以前から続けているコミュニティづくりに関わる方とのトークセッションシリーズである"コミュつく!"でも先月、そして今月「心理的安全性あふれるコミュニティ型チームのつくりかた」というテーマで、第一人者であるソニックガーデン代表の倉貫義人さん、仲山考材 代表の仲山進也さんとも深掘りをしています。(仲山さんとは今夜お話しします!)

今回は、改めて、「コミュニティ型チーム」について整理していきたいと思います。


組織におけるコミュニティとは?

通常、企業では従業員が集まった状態を「チーム」と表現することが多いのではないでしょうか。そして、組織づくりにおいて「コミュニティ」を意識することはこれまでそれほど多くなかったと思います。では、組織における「チーム」と「コミュニティ」にはそもそもどのような違いがあるのでしょうか。(私が以前紹介した内容と同じになりますが)その違いについて倉貫さんが書いた記事の中でとても分かりやすく整理してくださっています。

チーム
・ミッションから始まる
・目標・ゴールのために集まる
・終りと解散がある
・活動(doの価値)
・メンバーは役割を果たす
・事業と貢献が価値
・提供の目線は外向き(社会や顧客)
・よりスキルを重視した採用
・即戦力で働ける人材が好ましい
・チームの段階を進めることが大事
・戦争や冒険に似ている

コミュニティ
・ビジョンから始まる
・価値観・理念に共感して集まる
・続くことが前提である
・状態(beの価値)
・メンバーは居るだけで良い
・安心と安全が価値
・提供の目線は内向き(中の人)
・より人間性を重視した採用
・将来のための人材が好ましい
・定期的なイベントの開催が大事
・国や街の統治に似ている

ソニックガーデン代表 倉貫義人のサイト「SocialChange」より

チーム」は、共通の目標や目的のために協力して行動する集団であり、 「コミュニティ」は関わる一人ひとりが主体的に動き、それぞれが目的を持ってつくる場であり、ビジョンに関心を持ち、共感したメンバーが集まるのです。

そして、コミュニティ型チームは、メンバーがビジョンを実現するために能動的に動いていくのです。

「コミュニティ型チーム」の特徴

コミュニティとチームの違いについては上述の通りですが、組織のあり方として、大きな違いがあります。それは、従来はチームがピラミッド型の組織形態であり、上下の関係がはっきりしていたのに対して、コミュニティ型チームは、関係が「フラット」であることが特徴となっています。そして、メンバー間の「信頼」関係も重要な要素です。

特徴1 : フラットな組織

メンバーとの関係がフラットな組織は最近、様々な企業でも注目されています。

JINS社ではニッチな市場を見極めるために行っている取り組みの鍵は「組織のフラットさ」が鍵だと言います。商品企画チーム以外の社員の意見でも、「お客様にとって本当に価値がある企画だと思ったら、チームの垣根を越えて採用する文化がある」とのことです。意見というより雑談から商品化に進むこともあるようで、おうち眼鏡のJINS HOMEや、話題となったウエアラブルデバイス「JINS MEME」、そして最近ではサウナ用眼鏡 JINS SAUNAも、JINS社のフラットな組織によって生まれたとのことです。

特徴2: メンバーの信頼関係

そして、新たなイノベーションを生み出す源泉として、メンバー同士がフラットな関係であることに加え「信頼」関係も重要です。大ヒットしたゲーム機である「プレイステーション」の開発した中核チームは、お互いに言いたいことが言い合えるフラットな組織であり、プロジェクトの中核メンバー同士の「信頼」があったと言います。当時、同プロジェクトを牽引していたソニー・ミュージックエンタテインメント元社長の丸山 茂雄さんとソニー・コンピュータエンタテインメント元会長兼グループ最高経営責任者の久多良木 健さんはプロジェクトチームは「二度と無い信頼のチーム」だったそうです。久多良木さんは下記のように語っています。

「このチームはもう絶対、二度とないチームだと思う。例えば僕は開発の担当で、外部にある技術系の会社と話をする。ほかのメンバーもそれぞれに役割がある。みんな外に向かって、いろんな活動をするわけです。自分の持ち分以外は一切関係ないといったことはなくて全部、共有です。『今日、こんなことがあった』『相手はこんなふうに言っているけれど、どうしようか』とかね。みんなが互いに背中を合わせていて、すごく固い絆があった。うしろから撃つようなやつはいません。何だろうな、もう本当に何とか同盟みたいな形です。すごく信頼感が高い。お互いを信頼している」

日本経済新聞「Do it会議」が生んだゲーム革新 久多良木氏と振り返る
丸山茂雄氏、黒子のリーダー論㊦

フラット × 信頼関係 = 心理的安全性

前述のとおり、コミュニティ型組織においては、フラットな関係であることに加え、信頼関係が築かれていることが大切です。結果として、組織の中で自分の考え・意見を相手が誰であっても安心して発言できる状態、つまり心理的安全性が高く、共通の目的を達成するため遠慮せず議論ができるコミュティ型チームになっていくのです。

このフラット×信頼関係の組織は理想的ですが、簡単に生み出せるものではありません。こうしたコミュニティ型チームを生み出す施策として、資生堂の取り組みがあります。

かつての資生堂はありがちな「組織の縦割り」「年功序列」が強く、年の離れた社員同士のコミュニケーションは活発ではなかったと言います。しかし、リバースメンタリングという研修制度を導入したことで、若手が役員や部門長のメンターとなりSNSやデータ活用などの最新のデジタル技術、美容やファッションなどのトレンドを共に学ぶことで、「日常業務で生まれにくいオープンでフラットな対話だからこそ、双方が視野を広げて成長できる」心理的安全性の高い環境がつくれたのです。

まとめ

フラットな関係であり、信頼のあるメンバーで構成されるコミュニティ型チームは、心理的安全性が高く、能動的に動くので、イノベーションも生まれやすい組織だと言えます。そして、そうしたチームのつくり方は企業ごとのメンバーやカルチャーによって異なります。コミュニティ型チームのつくり方は様々です。皆さんの組織づくりについても是非発信していただけたらと思います。

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