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コスパからタイパへ。さみしさが再生産される今どきの仕組みとその対策

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

#本記事は日経COMEMO投稿募集企画への寄稿です。

コスパがよい・悪い、という言葉を聞くようになって久しいですが、最近ではそれを時間に適用した「タイパ」なる言葉が使われているようです。

電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬さんによると、コストパフォーマンスが「費用対効果」を表すとすれば、タイパは、「かけた時間に対する満足度」のことを指す。例えば動画のコンテンツなどについて、「時間をかけて見たのにつまらなかった」と思ったときは、「タイパが悪い(低い)」というように使われる。

日経電子版

コスパを意識するようになった背景は非常にわかりやすいと思います。ここ何十年も経済成長がフラットでかつ給与上昇がそれほどしていない日本において、消費の対象となるものがモノに加えて様々なインターネットサービスなどに広がり、限られたお財布に対して消費対象が爆発的に増えたことが要因でしょう。結果としてモノの値段は下がっていき、いよいよスタグフレーションかというレベルになってきています。

時間消費という観点で見ると、やはり本やテレビなどが主体だったころから様変わりし、いつでもオンデマンドで楽しめるネットサービスの消費時間が急拡大しています。SNSなどのサービスがそれを加速させており、いつでもつながっていることが当たり前になり、テレビを見ながらSNSを楽しむなどのマルチタスキングも日常になってきています。

最近では「FOMO(Fear of missing out: 取り残される恐怖)」と呼ばれるように、見逃すことへの恐怖から中毒的にスクリーンを見続けてしまうことの悪影響も議論されています。

ファスト映画(切り抜きダイジェスト)や倍速再生などという行動は、世界中がつながったことで一生をかけても見終わらないほどのコンテンツが身の回りに溢れたこと、またコンテンツ制作の敷居が下がったことで誰しもが消費者であり製作者であるという環境から生み出されたものだと考えています。

また、つながっているコミュニティの中で流行しているものは抑えておきたい、逆に知っていないと取り残されるという恐れもあるでしょう。当初はさみしさを埋めるためにつながっていたSNSが、いつしか「他人の動向が気になってしょうがない」というさみしさ再生産のツールへと変貌してしまっているのです。

こうなるといくら時間があっても足りないと感じることが多くなり、タイパを求める風潮が広がっていたのだと思います。

個人としては、仕事についてはぜひとも倍速で終わらせたいと思いますし、スキルの取得にかける時間なども倍速にしたいです。一方で、ぼーっとする時間や趣味にかける時間はむしろスローモーションにしたいとも感じます。

また、ひとつひとつの出来事の「あいだの時間」がより重要だと考えています。日本では昔から「間が悪い」「間があわない」といった言葉があり、空間についても適切な間を意識したつくりにする文化があります。

日常生活ではつい時計をベースにした時計時間に支配されがちな我々ですが、面白いことはあっという間に過ぎてしまうというような「出来事時間」の大切さについても、今一度思いを巡らせる必要があるのではないかと思います。

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タイトル画像提供:Graphs / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #倍速で楽しみたいこと

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