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中小アニメ販売会社の生存戦略=ドイツ編

TVアニメ『School Days』(スクールデイズ)のドイツ語版が発売されます。今月、ドイツのアニメ販売会社AniMoon Publishing(アニムーン)は、ディスク(DVD/Blu-ray)化ライスセンスを取得したと発表し、ドイツのアニメニュースサイトが報じました。アニムーンによると今年末の発売を予定しているそうです。

今回は日本国外のアニメビジネスは好調だといわれる影で、中小および新興企業の動向についてアニムーンを例に考えてみたいと思います。

日本国外のアニメビジネスといえば、世界的な動画ストリーミング大手のネットフリックスやアニメに特化したクランチロールの動向は日経新聞本紙も注目するところです。

ストリーミングだけでなく、ディスク化も世界各国で現地語版が販売されています。ドイツでも、日本のアニプレックスとの合弁会社ペパーミントや、資本関係をさかのぼると日本の企業にたどりつくドイツのアニメブランド「Kazé Anime」がヒット作品のローカライズを手掛けています。

大手企業、ブランドが攻勢をしかける一方で、筆者が関係筋から聞いた話しによると、大手による寡占が進み新たにローカライズ・ライセンスを取得するのは難しくなっているそうです。

冒頭で取り上げたアニムーンは2016年にスタートした新興のアニメ会社です。このほど発表された『スクールデイズ』は日本で2007年にTV放送された作品で、放送当時は残酷描写が大きな議論を呼ぶなど「尖った」作品としても知られるアニメです。

ドイツでも、『スクールデイズ』発売の報せは、アニメファンたちの間で非常に話題になりました。アニメニュースサイト「Anime2you」の当該ニュースには100件を超えるコメントが寄せられ、読者間でも議論が活発に行われました。その残酷なストーリのために、「見るべきではない」、「見たほうが良い」と反響は真っ二つに割れています。これだけ見ても、話題を集めるという作品選びですでに成功したといってよいでしょう。

筆者がアニムーンに注目したのは今回だけではありません。現地語版の販売者として丁寧なローカライズが目にとまったことがありました。

『ひぐらしのなく頃に』と続編の『ひぐらしのなく頃に解』のディスク版を発売した時には、作中に登場するナタやバットのミニチュアが特典として付属しました。(以下の写真はアニムーンのHPからスクリーンショットを作成)

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『スクールデイズ』も『ひぐらしのなく頃に』も今から10年以上前の作品です。アニムーンは、旧作の掘り起こしを丁寧に行い、話題になりやすい「尖った」作品に注目し、コアなファンに響くようにパッケージデザインや特典にこだわる、というスタンスが見て取れると筆者は考えます。大手が積極的に展開してこなかった作品に注目する、ここに中小のアニメ販売会社の生存戦略があるのではないでしょうか。

こうして考えると、日本のアニメは現行のヒット作品以外にも、少し前の作品にもまだまだ世界で稼げる作品があるのではないかと思えます。今回取り上げたのはドイツの事例ですが、こういったケースは世界のどの国でも起こりえるのではないでしょうか。世界的に旧作の掘り起こしがさらに進むことに期待したいものです。

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注:『ひぐらしのなく頃に』に関してはシリーズ新作が今年発表されましたが、旧作のドイツ語版はそれ以前にリリースされています。つまり、新作とのコラボではなく、純粋な旧作の掘り起こしと考えることができます。

タイトル画像:アニメ『スクールデイズ』の発売を知らせるニュースの冒頭部分のスクリーンショット。(記事本体


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