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無症状者のPCR検査のあり方

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内で流行し始めた時期に比べると検査体制は劇的に改善しました。発生当初は渡航歴があったり、明らかに発熱があった患者であっても、検査の選択肢はPCR検査のみで、保健所に伺いをたてた上で行政検査としてのPCR検査を行うしか手立てはありませんでした。しかし現在では医師が診断に必要とした場合にはほとんどの患者さんがPCR検査(または抗原検査)を受けることができるようになっています。

 このような背景もあり最近では、無症状でも自費でも良いから検査を希望する方が急増している現状があります。「周囲で感染者が出たが保健所からは濃厚接触者に当たらないと言われてしまったが心配なので検査をしたい」、「帰省するので高齢の家族に感染させてはいけないと思うので検査をしておきたい」、「風邪をひいて休んでいたので職場から検査が陰性であることを証明しないと出勤できない」など、現在COVID-19に感染している可能性がほとんどないのに「心配だから」、「念のため」などといった理由で検査を希望される方々が後を絶ちません。もともとPCR検査は「感染症の精密検査」の位置付けで検査費用も高額であり、何でも構わず行う検査ではありません。

 しかしながら無症状でも検査が陽性になる方が一定数確認されることから、無症状者の検査のあり方も議論されています。一般的に無症状の方への検査の考え方には次の二つがあります。                ①感染リスクおよび検査前確率が高い場合(濃厚接触者などの場合)   ②感染リスクおよび検査前確率が低い場合(検査希望者の多くが該当)
 検査前確率が低い無症状者から感染者(検査陽性者)を発見する可能性はきわめて低く、膨大な検査をしても陽性になる確率は僅かです。従って感染拡大防止に対する効果も相対的に低いことがわかっています。また検査は万能ではなく、偽陽性(実際には感染していないのに陽性となる)や偽陰性(実際には感染しているのに陰性となる)が一定数確認され、検査前確率が低くなればなるほどその確率が増えることがわかっています。時に正しくない結果を受け止めて陰性であれば感染対策がおろそかになる、陽性であれば不必要な隔離をされるなどの問題も生じます。検査はあくまで検査を実施した日の状態を反映するものであり、結果が陰性であっても翌日に陽性になることもあり得る訳です。これは検査を繰り返し行っても問題は解決せず、実施すればすれほど医療機関の物資、資金、人材、廃棄物は膨大なものとなります。また無症状の方が医療機関に殺到し検査数が膨大になれば、症状がありすぐにでも検査をしなければならない方が受けられなくなるという事態が生じる可能性もあります。今後さらなる感染者の増加が懸念される中で、検査のあり方をしっかりと理解する必要があるのではないでしょうか。

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