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陥りがちな失敗例から学ぶ、「変革」を成功させるために抑えておくべきこととは。

皆さん、こんにちは。今回は「組織変革」について書かせていただきます。

今回ピックアップした記事には、パナソニックグループの全社改革プロジェクトについて触れられていますが、どの企業にも長く会社を続けている過程には、「変革」が必要なフェーズが必ずあるはずです。

変革を行い、その状態を常態化させ、業績も組織も伸ばしていく。
無事に変革が完遂したと言えるのは、変革させようとした姿が常態化して初めて成功したと言えると思います。

企業経営におけるどのような場面で、会社全体や組織の変革を促すことが大事なのでしょうか。また、変革を行う際に、どのようなことに留意しておけば良いのでしょうか。具体的に考えていきます。

「パナソニックトランスフォーメーション」の略称が示すとおり、PXで目指すのは「事業戦略の基礎となる業務、プロセス、カルチャーそのものの変革」(玉置CIO)だ。働き方や企業文化をはじめとした組織風土、仕事の進め方やステークホルダーとの関係といった業務プロセス、これらを運営するための情報システムやデータを、一体で変革する。

■組織変革が求められる場面と変革へのアプローチ

こちらの記事には、40〜50代の転職動向が高まっていることを踏まえ、欠員補充だけでなく「事業変革のための専門知識を持った人材を求めるケースが増えている」とあります。

ミドル世代はスタートアップからの引き合いも強い。リクルートの7〜8月の調査では、23年度の40歳以上の新興企業への転職者数は15年度の7.1倍と顕著だった。20〜30代の2.7倍を大きく引き離している。

つまり、成長期のスタートアップにおいても「人手が足りないから採用する」という理由だけでなく、「会社をさらに成長させるため」「次のフェーズへと変革を推進するため」に、高度な知識や経験を有する人材を求める傾向が、職種問わず強まっているのです。

一般的に、組織変革が必要とされる場面は、内的な要因もあれば外的な要因もあり様々です。

たとえば、

  • 市場環境や競争環境が急激に変化した場面

  • 経営危機に陥った場合に、コスト削減や事業再編など抜本的な対策を断行する場面

  • 新しい技術の台頭により、既存のビジネスモデルやビジネスプロセスを進展させる場面

  • 組織や事業の成長に伴って直面する、業務の非効率や組織構造などの新しい課題に対応する場面

  • 顧客のニーズの変化により、既存のプロダクトやサービスの見直しが必要な場面

  • 社員の士気やモラルが低下するなど、組織内の文化の改善が必要な場面

  • 組織のビジョンや戦略が大きく変わる場合に、その方針に基づき組織全体に変化を持たせる場面

  • 予測不可能な外部要因により、組織の成長や存続が危ぶまれた際、その状況を打破する場面

  • M&Aなど他の企業との合併や買収が行われた場合に、業務プロセスなど必要な統合を行い新しい体制を構築する場面

このような場面においては、現状のまま手を打たないと競争力を失い、業績が悪化するリスクもあるため、適切なタイミングでの変革が求められます。

組織変革が必要な場面でどのようなアプローチ方法があるかについて、いくつか挙げてみます。

1、 組織全体の戦略やビジョン、方向性を大きく転換する変革
→事業のピボットやポートフォリオの変更、新規市場への参入、新しい技術やビジネスモデルの採用などを図る際に、戦略的な変革を実行。

2、新しい技術やシステム導入による変革
→デジタルトランスフォーメーション、AIの活用などにより、業務プロセスの自動化・効率化を図るなど大幅に生産性を向上させる際に、技術的な変革を実行。

3、組織の構造そのものを変更・転換する変革
→部署の統合や分割、またはフラットな組織構造への移行、組織の階層変更など、組織構造的な変革を実行。

4、組織内の文化や価値観、行動規範などを見直す変革
→社員の行動や価値観を変えるために、企業が大事にする考え方、推奨するリーダーシップスタイルなどを見直し、文化的な変革を実行。

5、人材の能力やスキルを向上させる変革
→新しいスキル習得に向けた組織的な取り組み、リスキリング推進、斬新な能力開発の仕組みの導入など、人材のスキルレベルを大きく向上させる変革を実行。

6、リーダーシップスタイルの変革
→リーダーシップの役割や手法を見直し、トップダウン型からボトムアップ型へ転換するなど、新しいリーダーシップスタイルを確立する変革を実行。

その他にも、市場の変化、規制の変更、競争環境の変化に対応するなど、外部環境の変化に合わせて組織的な変更を行うような変革もあります。これらは、個別に行われることもあれば、複数のものを同時に行うこともありますが、組織の状況や目標に応じて最適なアプローチを選択する必要があります。

組織変革のゴールは、それぞれの組織が持っている課題によって異なりますが、最終的には「経営課題を解決する」ためのものです。課題解決に直結しない変革は、意味がないと言っても過言ではありません。

企業の持続的な成長を実現するために、意図的に「組織構造を変えてみる」「既存のシステムを変えてみる」「社風や文化そのものを変えてみる」といった、変化を適切に促すことが必要なフェーズが、どのような企業にも確実にあると思います。

■変革が失敗に陥る理由とは

せっかく変革を推進しても、失敗に終わってしまうケースも多々発生します。
失敗しがちなパターンとしては、以下のようなものではないかと思います。

●新しい「仕組み」や「システム」を導入して、それで終わってしまうパターン
当初は目的があって新しいシステムを導入しようとしたのに、それが大がかりなものであればなおさら、途中から「無事に導入し終える」ことがゴールになってしまうパターンがあります。また、導入し終えた後、しっかり機能させるための運用に注力しないと、いずれ形骸化され、当初の目的が達成されないこともあります。

●そもそも変革をする目的やゴールが、組織全体に伝わっていないパターン
なぜ今の状態から何かを大きく変える必要があるのか、どのように変化に適応していけばいいのかが、社員一人ひとりに伝わりきっていないと、具体的な行動として現れることなく、変化を強制される状況に対してストレスばかりがたまっていく一方です。組織の規模が大きくなればなるほど、全体に変革の意図を浸透させるのは苦労しますが、ここを怠ってしまうと変革が成功しないこともあります。

●変革に必要なリソースが十分確保されていないパターン
変革を遂行する上で、十分なリソースが確保されていないケースや、キーマンの熱量ややる気だけに依存してしまうケースは、なかなか全体に変革の動きが伝わらず、思うような成果があげられないことがあります。ヒトモノカネというリソース以外にも、組織全体の協力体制や変革を推進しやすい雰囲気を作ることも重要です。戦略は描けていたとしても、変革を行う上で必要なスキルが不足していることもあるため、推進する体制をしっかり整えることの重要性も高いと言えます。

●大事な局面で詳しい人や知識のある人に丸投げするパターン
たとえばDXを推進しようとなった場合、それがどんなに会社の業績にインパクトがあるものであっても「詳しい人を外部から呼んできて任せよう」などと、組織のトップが大事な場面で逃げてしまうことは意外と多く起こっています。専門的な知識がある人や経験がある人に任せっきりで、リーダーが全く関与しないというのは無責任であり、組織の求心力も低下し、結果的に変革が失敗に終わってしまう確率が高まります。

●一見、変革が完遂したと見えて、組織の中に定着する前にアクションを止めてしまうパターン
進み始めた変革を組織の中に定着させる前に、一連の行動計画をストップしてしまうという失敗例も多々あります。「理想の状態を維持するための仕組みが機能しているかどうか」「変革をリードした人材だけでなく、変革後の状態を発展させようとしている人材も評価しているかどうか」「新しく構築した組織構造、業務プロセス、文化などが狙ったものになっているかどうか」というような定期的なモニタリングが、変革の成否を分けることになります。

人は基本的に「変化を受け入れる」ことに少なからず抵抗があるものです。ただし、理解・納得できる方向に変わることに対してはポジティブに受け入れてくれることがほとんどです。

組織変革も同様で、なぜ今組織の変革が必要なのか、変革によって実現したいことは何なのかを、社員が納得できるストーリーを持って説明し、協力を仰ぎ、喜んで変革を受け入れてくれるだけの関係性を構築することが必要不可欠なのです。そして、変革によって実現したかった理想の状態が確実に組織の中で維持・定着するまで中途半端に終わらせずに“やり切る”ことが重要ではないかと思います。

■変化・変革を起こしやすい状態を作るために

少し話が逸れますが、こちらの記事には、

選手に寄り添いつつ日々の緊張感も求める監督は、強者となったチームに生まれがちな、現状への慣れと空気の緩みを感じ取っていたという。そこから巻き返すにあたって先頭に立つのは自分ではなく「新しい人がやるべきだ」との強い決意があった。

とありました。ビジネスの場面でも、多かれ少なかれ「慣れ」や「空気の緩み」というのは、知らないうちに組織に蔓延してしまうことはよくあります。それが特に強いチームや、一定の地位を築いているチームほど現れやすくなることもあり、たとえば業界2~3位くらいの企業にいる社員が常に緊張感を持って、1位の企業を追い抜かすために必死で仕事をしていたら、今の地位に甘んじている1位の企業を脅かすことがある、というのも頷けます。

適切な緊張感や明確な目標がある組織と、そうでなく多少なりとも緩みが出てしまった組織とでは、どちらが変革を起こしやすい状態になっているかは言うまでもありません。(だからこそ適切な変化を、チームや組織に投じていくというのは、より成長を促すためにも必要な方法論の一つです。)

企業としては、変化や変革に強い組織を作るために、どのような環境を整えておくことが大事なのでしょうか。具体的にいくつかポイントを挙げてみます。

●社内に危機意識を浸透させる
いくら経営陣の変革への意欲が高くても、実際に事業を推進する社員に変革の意思がなければ行動が伴いません。危機意識ばかり持たせても、逆に不安を煽ることになってしまうのではと危惧する人も多いかもしれませんが、現在、そして未来に自社を取り巻くビジネス環境がどのようなリスクや危機にさらされているのか正しく理解し、これからの行動がどのように中長期的な企業の発展につながっていくかをしっかり伝えていくことが重要です。適切な危機意識がないと、“緩み”を生み出しやすくなってしまいます。

●自ら課題に気づき、自ら行動に移せるような機会を提供する
自分の課題や組織の課題に気づき、解決に向けた行動に移せる人は意外と少ないのですが、それは、「今いる環境に問題意識を持っていない」か「問題だと気付いていても見て見ぬ振りをしている」か「変化させるための行動を起こすことが億劫になっている(メリットが少ない)」などの状況があるからです。習慣として目の前の課題に全く気づかない人に対して、自発的に気づいてもらうのは非常にハードルが高いのですが、何か刺激を与える(たとえば目の前のルーティン業務から離れるとか、ジョブや職種自体を変える、関わる人を変えるなど)ことで、新しい視点から物事を見るため、課題意識を持ちやすくすることは可能なのではないかと思います。そのような人が一人いるよりは二人の方がいいし、二人よりは百人いる組織の方が、変化に強い組織であることは明らかです。

●変革実行のプロセスにできるだけ多くの人を巻き込む環境を作る
変革を実行するにあたっては、どんなに優れたリーダーがいても一人では限界があります。できるだけ多くの人を巻き込み、変革を計画、実行する過程に加わってもらうことが重要です。そのプロセスを通じて、同じような志を持った仲間を増やし、その中から将来、会社の大事な場面で変革をリードしてくれる人材を創出することにもなります。変革実行の場面だけでなく、日常的に経営課題について議論する場や、組織の課題をどのように解決していくかについてアイディアを出し合う場にあらゆる視点を持った人材を巻き込むことで、新しい解決の糸口が見つかることもあり、さらに経営課題に対して当事者意識を持つ人材を増やすことにもなります。

●社員のパフォーマンス発揮状況や、社員が持つ成長実感・貢献実感を可視化する
定量的な成果状況は常に可視化されていることが多いですが、上司と部下とで評価にギャップがあることは多く、過大評価、または過小評価している社員に、上司からの期待値とのズレがどれほどあるかを理解してもらうことは人材育成の上でも重要な要素です。また、社員が「自分が成長できているか」「組織に貢献できているか」について、たとえば5段階評価などで自己評価してもらう機会を定期的に作ると、停滞感を抱いている社員を発見しやすくなり、適切に介入することができます。能力は高いのに貢献実感がない人などをそのままにせず、新しいミッションやさらに成長できるチャンスを提供することが、組織全体のポジティブな「変化」を生み出すことにもつながります。

●社員の仕事の範囲を制限せずに、自由度高く、裁量権を渡す
変革人材を生み出すためには、個々が決められた業務の範囲でのみ仕事をしていても難しいことは明らかです。一人ひとりが個人の業務範囲を超え、“越境”し、他者や他部門の仕事状況に目を配ったり、組織全体を俯瞰してみた時に何が課題かを発見し、解決策を模索し、解決に向けてアクションを取ることが、大きな変化を生み出すことにもなり得ます。
当社では、「自由と自己責任」という文化が根付いていますが、自由度(裁量権)を渡す分、自分で責任を取るという覚悟を持ち、物事に真摯に取り組む姿勢を推奨することが、社員の成長意欲を引き出し自走してもらうことにつながります。組織に変化を起こすには、現状に課題意識を持ち、それを変えようという高い熱量を持った人材を増やすことが重要です。その数が多ければ多いほど、大きな変化や変革の実現につながるのではないかと思います。


変化が激しい現代において、ビジネスにおける変革力の重要性は高まっていく一方です。労働環境の変化や急速なテクノロジーの進化により、私たちを取り巻く環境は日々変化し続けていますが、IT技術を駆使して生産性を上げ、新しいビジネスを推進していくなど「変革」を求められる場面は、これからも益々増えていくでしょう。新規性のある革新的な変革を実現するためには、イノベーション人材の採用や育成も必要不可欠です。

変革の起こせる人材を育成し、能力を発揮してもらうには、育成プログラムの受講や研修制度だけでなく、そのような人材が活躍しやすい組織や文化を構築していくことが大前提として必要です。従来の人事制度や評価制度に固執することなく、新しいチャレンジや難易度の高いミッションを自発的に推進していく姿勢を評価していくような制度や取り組みも求められます。

「変化や変革を推進しやすい組織風土」「課題を発見し、忌憚なく意見交換ができるような機会作り」「失敗を恐れないチャレンジ精神とそれを評価する制度」「社員の自走を促す適切なミッション提供機会の確保」などを社内で確立し、その取り組みが広がっていけば、やがてそれが企業に大きな変化をもたらし、厳しい時代を生き抜くための原動力となっていくはずです。



#日経COMEMO #NIKKEI

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