自動車新時代はこれからどうなるかー自動車新時代戦略会議の中間とりまとめに思う
私も参加させていただいている「自動車新時代戦略会議」の中間とりまとめが結構話題になりましたので、コメントしておきたいと思います。
まず、脱炭素化を軸にあるべき方向性を明示したことには高く敬意を表したいと思います。ただこの中間とりまとめはfirst stepであって、更なる議論や実行に繋げることが重要です。まだまだ「作り手側の議論」をまとめたという感じですので、今後の宿題というか、論点として、以下の点だけは指摘したいと思います。
2050年に向けた脱炭素化は運輸部門だけで達成可能なものではなく、消費者の使い方、エネルギーの脱炭素化とあわせた「3本柱」が必要で、このこと自体は資料にも書いてあります。
先日閣議決定されたエネルギー基本計画でも、エネルギーの「脱炭素化」に向け、再生可能エネルギーを主力電源と位置づけると書かれており、社会全体の脱炭素化に向けて整合性のある方針になっていると思います。
今後増加する再生可能エネルギーから供給される電力を運輸部門が率先して利活用していくことが重要であり、自動車産業の持続的なゼロエミッション化の取組みが、エネルギーのゼロエミッション化をけん引していただければと願っています。
政府にはそうした全体感のある制度・政策の立案が求められますし、このようなセクター横断の社会変革の時代の政府の役割そのものも議論されなければならないでしょう。少なくとも今後、この会議にはエネ庁の方や国交省の方にも多く入っていただければと思います。わたしのようなエネルギー政策の研究者を会議に参加させていただいた意義はこれからかもしれません。
また、今後は今の取りまとめに欠けている「ユーザー視点」を強化できればと思います。 社会変革は作り手の側から起こせるものではありません。利便性や経済性などにおいて消費者がメリットを実感し、それを生活に取り入れることで初めて社会全体が動いていくこととなりますので、自動運転等を含む交通サービス全体、場合によっては都市計画にも踏み込んだ議論に繋げていくことが肝要でしょう。この中間とりまとめを契機に、世界の手本となるようなわが国の「自動車新時代」に関する議論がより活性化並びに具体的なアクションプランに展開されることに期待したいと思います。
卑近なところのコメントもすると、温暖化に関する国際交渉の重要ポイントとして、来年のG20があります。ホスト国として何を打ち出すかは非常に重要ですが、エネルギー政策では日本はインパクトのあることを言うのは難しい。現実の制約が多々あるからです。基幹産業である自動車の脱炭素化を通じて世界の低炭素化に貢献する、というのを効果的に発信していただきたいと強く願います。
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