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日経電子版における気候変動関連キーワードを含む記事掲載頻度の傾向

猛暑の夏と気候変動報道の振り返り

2024年8月も終わりに差し掛かり、今年の猛暑を振り返りながら、気候変動に関する報道の傾向について考察してみたいと思います。

国内外の報道機関の報道量などを比較することは統一した指標を見つけにくい、測定が難しいと感じます。ただ今回、日欧米の主要紙である日本経済新聞、Financial Times、New York Timesのウェブサイト内の検索機能を活用し、月ごとの関連キーワードをタイトルや本文中に含む記事掲載数を調べてみることにしました。

▶日経電子版において「気候変動」、「脱炭素」、「再エネ(再生可能エネルギー)」、「SDGs」、「ESG」、「GX(グリーントランスフォーメーション)」をタイトル或いは本文に含む記事の掲載数推移をまとめグラフにしてみました。

日経電子版の検索機能を利用して得られたデータを元に筆者が作成
  • 脱炭素(赤色のライン)が最も多くの記事量を持つキーワードであり、特に2021年1月から2022年1月にかけて急激に増加しています。その後はやや減少傾向にあるものの、掲載頻度においては高い水準を保ってます。

  • 気候変動(青色のライン)も2021年初頭にかけて増加し、同年11月にピークを迎えているものの、その後はやや減少・安定傾向(毎月100〜200件程度)。

  • 再エネ or 再生可能エネルギー(黄色のライン)は、2021年から2022年にかけて記事掲載量が増え、特に2021年末に大きなピークを迎えている。

  • SDGs(緑色のライン)とESG(オレンジ色のライン)は比較的低い水準で安定。

  • GX or グリーントランスフォーメーション(水色のライン)は2022年から2024年にかけて微増の傾向。

▶次に日本経済新聞、Financial Times、New York Timesにおいて気候変動(climate change)を含む記事がどのくらいの頻度で掲載されているかを調べてみました。

各サイトの検索機能を利用して得られたデータを元に筆者が作成

日本における気候変動報道について、以下のような傾向が見られました

  • 報道量:当初は欧米に比べ少ないのではないかと思われていましたが、実際の掲載本数はそれほど大きな差がないことがわかりました。

  • 記事の特徴:

    • 日経新聞:最近はビジュアル付きの長尺記事が増加しつつありますが、短い記事も多く含まれています。

    • FTやNYTimes:調査報道記事として長尺のものが多い傾向があります。

▶国内と欧米の報道の特徴と視点の違い

  • 国内報道の特徴

    • 日本国内においては猛暑や大雨などの異常気象、或いは漁業、農業、スポーツなど様々な分野で気候変動の大きな影響が及んでいることが報道され、対策としては政府の政策、大企業や中小企業の取り組みなどが中心となっている印象です。

    • 最近では日本の気候メディアのポジティブな動きも数多く見られるようになりつつあり、期待も高まっているとも感じます。

  • 欧米報道の特徴

    • 米国においても猛暑、山火事、干ばつ、洪水などの異常気象に関する報道、そしてインフレ抑制法(Inflation Reducation Act)などの政策の関連も頻繁に報じられています。ただ、日本国内と比較した際に大きく異なると感じるのが、気候テック(Cliamte Tech)と呼ばれる新技術やイノベーションを伴うスタートアップ関連の報道数とその広がりです。米国では市場経済、投資家、起業家が社会の大きな動きを牽引する場面が多いことも関係あると思われます。Bloomberg GreenCTVCFastCompany, CipherHeatmap Newsなど、気候テック推し・特化型のメディアも数多く誕生しています。

    • 欧州では米国との類似もありますが、、よく指摘されるようにルール形成・法規制関連の報道が特徴的です。国境炭素税、カーボンクレジットなどに関しては日本で暮らしているとなかなか感覚的に理解することが難しいと感じてしまいます。更に気候変動対策に取り組む市民運動、活動家、訴訟などの動きも特徴的と言えます。

▶気候テック(Climate Tech)の国内での扱い

日経電子版で「気候テック」というキーワードを検索すると、現時点で27件の記事を見つけることができます。多くは欧米の様子を紹介する記事、翻訳記事、日本企業による米ファンドへの投資などの記事が中心です。欧米において気候テックに特化した上記に挙げたようなニュースサイトが数多く生まれている状況とは異なるようです。国内においては資金力や人材を抱える大企業が中心となり新技術の開発が行われるケースが多いですが、GX(グリーントランスフォーメーション)政策の後押しもあり、ディープテック、GXスタートアップ、インパクトスタートアップにも近年注目が集まっているようです。今後の発展、メディアでの報道も盛り上がることを祈念しています。

*以下、先日登壇の機会を頂いた気候テックのトレンドについてのセミナーのレポートになります。


以上、今回は日本経済新聞、Financial Times、New York Timesの検索機能を活用することで気候変動関連報道のトレンドの一つの見方をまとめてみました。

今まで感覚的に理解していたことが、データを踏まえビジュアル化することで少し理解を深めることができました。この点は今後も意識していきたいと感じます。

気候変動というグローバルなテーマの理解を深める上では国内だけでなく海外の動向を理解することもきっと役にたつと思われます。今後も国内外の比較を通じて「気候変動とメディア」というテーマを掘り下げていきたいと思います。


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・Japan Climate Curation(英語): https://bit.ly/JapanClimateCuration

▶2021年夏以降気候変動・脱炭素・クライメートテックについてCOMEMO記事として公開した記事のリス

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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