ドイツのスーパーマーケット列車にみる持続可能な取り組み
欧州における鉄道交通の要衝のひとつフランクフルト中央駅で今月、列車内をスーパーマーケットに改装した特別列車がホームに停車、いや、「営業」していました。
筆者もとりあえず見に行ってその模様をツイートしたところ、日本の方々を中心に予想外に大きな反響がありました。そのツイートがこちら↓。
列車内は、地域で収穫された農産物や加工食品とフェアトレード認証を取得した商品を中心に、日用品や酒、パンなど幅広い品ぞろえでした。
というわけで、今回はドイツ鉄道のこのプロジェクトを改めて取り上げ、少し深堀りしてみたいと思います。
持続可能性、サスティナブル、SDGs、、、
といった言葉が最近、ニュースなどでよく見かけられます。より良い社会の実現に向けた取り組みは気候変動といった分野にも広がり、今や世界的な潮流なのかもしれません。
日本での反響、刺さり方は人それぞれ
話しをドイツに戻します。ドイツ鉄道のこのスーパーのツイートへの反響を見てみると、「刺さり方」は人それぞれのようです。
・旧西ドイツの国鉄時代の旧型の電気機関車「110形」に懐かしさを感じる人。
・電車通勤をしている人にとっては、仕事帰りの買い物に便利!という反応。
・物流をトラックの輸送から鉄道に切り替えることで、CO2排出削減に貢献する動きという見方。
・過疎地における買い物支援になるのでは?
などなど、ざっと見てみると、過疎問題との関連で刺激を受けた人が一番多かったようです。
持続可能性をアピールする地域プロジェクト
では、実際の所、この鉄道スーパーは何だったのか?このプロジェクトのために用意された特別サイトには、およそ、地域の食材、持続可能なモビリティ、公正さをアピールするプロジェクトであると紹介されています。(以下は特別サイトのトップページのスクリーンショット。サイトへのリンクはこちら。)
キャンペーンを実施する団体のひとつスーパーマーケット大手のREWEは、キャンペーンのスタートに合わせてプレスリリースを発表しています。少し読んでみましょう。
「列車内のフェアなスーパーマーケット」と名付けられた合同プロジェクトは、ドイツ鉄道の地域列車運営子会社のDB Regioとスーパー大手のREWEの中部地方部門のREWE Region Mitteに加えて、公正な取引、貿易を支援するフェアトレード認証団体による運営だとあります。
11月5日から12月11日まで、ヘッセン州のフランクフルト中央駅を皮切りに、州内6都市で金曜日と土曜日限定で実施されます。
発表には色々と書いてあるわけですが、このプロジェクトは基本的にヘッセン州というドイツのひとつの州に地域を限定し、都市、曜日、期間なども絞り込まれています。つまり、実験的な試みのようです。
人材育成という側面も。。。
筆者が注目したいのは、このプレスリリースの段落最後のこの1文です。
「このスーパーはREWEの職業訓練生だけで運営されます。」
つまり、人材育成の側面もあるわけです。将来に渡って安定的に人材を確保するといった課題も、事業の持続可能性を考えると必要不可欠な要素です。
同時に思ったのは、人材育成という要素が加わることで採算性という考え方から離れて実施することが可能になっているのでは、という点です。
さらに、この鉄道スーパーそのものがキャンペーン・アピールのための宣伝目的なので、そもそも単体での採算性をシビアに問われない性格のものと考えることができます。
プレスリリースでは、職業訓練生の写真が公開されています。以下に1枚転載します。
まとめ:ヒントは貪欲に集めてみれば?
こうして考えてみると、実は中々に理にかなったプロジェクトだなと思えてきました。筆者はよく、ドイツに学べ!とか、日独を比較してドイツが○勝!等々という短絡的な言説から距離を置きたいと考えています。
一方で、SDGsなどが世界的な潮流となり、何かしら取り組もうとした時、実利に適ったプロジェクトにするための工夫は大いにヒントになるのではと思いました。
現在は国際的な活動が難しい時勢となっています。余計なおせっかいかもしれませんが、オンラインのリサーチや近い将来の海外視察の準備は始めておいてもよいのではと筆者は思う次第です。
本稿がより良い世界を目指したいひとたちの一助になれば幸いです。
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タイトル画像:
ヘッセン州中央部の都市ギーセンの駅に停車、営業する特別列車。ドイツの冬は日中でも霧が濃く薄暗い日が多い。筆者撮影。
おまけ:
ドイツ鉄道が公開した列車をスーパーに改装する動画。大掛かりな改装は、期間限定のキャンペーンにしては大規模すぎるように思えます。もしかしたら、今後は人材育成などの用途などでも長く使うのかもしれません。
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