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金融政策と日本経済の今後

日銀・中村審議委員、YCC柔軟化「今でない」と反対 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

日銀が7月末に行った「政策修正」 の評価は、今後の日銀の対応に大きく左右されるでしょう。あくまで金融緩和の持続性を高めるための対応として、物価目標の実現を見通せる状況になるまでしっかりと国債買い入れオペ等でイールドカーブの抑制を続けるのであれば評価できるでしょう。しかし、この修正が出口を意識したものであり、将来拙速なマイナス金利解除に向かうのであれば、せっかく動き始めた好循環を阻害する恐れがあることには注意が必要です。

日銀の政策修正が経済・社会へ及ぼす影響としては、既に長期金利が上がっていますので、住宅市場や設備投資に悪影響が及ぶ可能性があるでしょう。今後は海外の利上げ打ち止め利下げ観測で金利には低下圧力がかかると思いますが、当面は積極的な国債買い入れオペでイールドカーブを中立金利水準より下げて、金融緩和的な環境を持続する必要があるでしょう。

なお、足元のインフレ率の半分以上は食料品の値上げで説明でき、内閣府・日銀いずれの需給ギャップもマイナスであることからすれば、現状の物価高はコストブッシュの側面が強いといえます。日銀は2%の物価目標を念頭に置き、名目賃金上昇率は3%、つまり実質賃金が1%上昇する姿が理想であると説明してきた中、植田体制になって日銀はフォワードガイダンスに賃金を盛り込んでいます。このため、現時点で2%台である名目賃金が3%かつ現時点で15カ月連続マイナスの実質賃金が安定して1%を上回る状況を見通せないと本当の意味での日銀の金融政策出口は見通せないでしょう。

そもそも「異次元金融緩和」は、消費税を2回トータル5%も上げる中で、雇用を500万人増やしたという意味では大きな成果があったと言えます。このため、課題はいかに副作用に配慮する形で物価目標の持続的安定的な実現を見通せるまで粘り強く金融緩和を続けられるかでしょう。

一部で中銀の債務超過を課題とする向きもありますが、そもそも時価会計は民間企業が解散や破綻したときに、いくら返済余地があるかを図る会計です。中銀は通貨発行能力があるため時価会計で債務超過になっても業務や機能には問題ないですし、実際に豪州準備銀行やFRBは時価会計ベースですでに債務超過になっているが、いずれも通貨や中央銀行の信任は失われていません。

このため、金融緩和策の「出口」に向けた道筋としては、物価目標の持続的・安定的な実現を見通せる理想的な姿である名目賃金3%、実質賃金1%の状況になれば、YCC枠組み解除、マイナス金利解除の順番で金融緩和政策に向けた道筋が描けるでしょう。ただその状況を確認するには、少なくとも来年の春闘で持続的な賃上げが確認されるまでは難しいと言わざるを得ないでしょう。

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