見出し画像

「日本でもDX加速」そのXは本当に変革になっていますか!?

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

6月8・9日に行われた次世代通信規格「5G」などデジタル技術の革新について議論する「世界デジタルサミット2020」が開催されました。国内外の有力企業の経営者が「5G and NEXT」をテーマに議論を広げました。

富士通の時田隆仁社長は「テレワークの導入で話題になった"日本のハンコ文化"は見直しが進んでいる」と述べた。「遠隔医療や遠隔授業の分野でも海外と比較して日本の取り組みが遅れているとの指摘がある」と話し、「日本でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速すると思う」と発言した。

(筆者略)

信頼が確立されたデジタル社会では新しい暮らしや働き方が可能になり、その実現に必要な技術は「5Gの導入が本格化する時期に出そろう」とみる。特に自動車などのモビリティー分野では、飛躍的な発達がみられると力を込めた。

いよいよ政府までもが「新しい生活様式」の中でも「ハンコ見直し、名刺交換はオンラインで」と提言する時代。なるほど、デジタルツールを積極的に活用しなくてはいけない機運は高まっています。

一方で、デジタルツールは以前から存在していました。また、法整備による規制緩和も徐々に進んでおり、1998年に電子帳簿保存法ができ保存義務のある帳票類の電子保存が認められました。2005年には「e-文書法」が施行され、それまでは認められなかった紙文書のスキャナ保存が可能になった他、電子署名と金額制限の廃止、翌2016年にはスマホなどで撮影した領収書も電子保存が可能になりました。しかし、いま周りを見渡してみても、毎月の経費精算のために領収書を台紙に貼り、Excelで計算書をつくり、綴じて押印しているような業務は残っているのではないでしょうか?

画像1

また、提言を出している政府自体のデジタル化はどうでしょうか? 特別給付金をめぐる混乱を例に出すまでもなく、民間よりさらに出遅れていると言えるでしょう。

今回、浮き彫りになった最大の問題は公的な資金援助の関連だ。仕組みが入り組み、どんな条件の人・企業がどの支援の対象かを知るのが難儀だ。危機時の援助は速さが絶対条件なのに、書面手続きがあり、申請者がお金を手にするまでに数カ月かかる例がある。

安倍政権を含む歴代の政権は政府のデジタル化を成長戦略に位置づけ、システム開発に巨額の税財源を投じてきた。しかし肝心なときに役に立たないものをつくったと断じざるを得ない。

コスト肥大を抑えつつユーザー本位の仕組みに再構築すべきだ。重要なのは(1)手続きはデジタルで完結(2)ユーザーが行政に一度出した情報は再提出不要(3)個人情報保護を前提に民間サービスとも接続――という基本原則の再確認だ。

課題はいまだ20%に満たないマイナンバーカードの普及である。カードの位置づけを、給付金の受け取りや自らの医療情報の確認など「必要なときに個人の権利を確実に行使するための必携の1枚」に改める必要がある。

まさに「DX」が必要な事例でしょう。ポイントは、これまでも莫大なシステム投資をしてきたのに、X(トランスフォーム)できていないという事実です。

今一度、DXとはなにかをおさらいしてみましょう。(皮肉なことに)わかりやすいガイドラインが経済産業省から出ています。

この中でのDXの定義は以下の通りです。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

先の政府のデジタル化の例で言えば、社会のニーズは「窓口に出向かず、デジタルで完結すること」でした。そのためには窓口が起点になっていた業務プロセスを変えたり、システム側でもさまざまな変更が必要でしょう。要は既存業務の前提をイチから見直すということです。その完遂のためには「文化・風土を変革」する必要すらあるだろうと、DX推進ガイドラインでは指摘しています。本当にそのとおりですね。

電子メールが普及し始めた初期のころ、今では冗談のような話が実際にありました。

・「いまメールしました!」と、電話がくる
・メールを受け取れるPCが部署に1つしかないため(代表電話?)、各人宛のものはプリントアウトして配布

新しいツールは導入したところであまり効果はなく、前提を変えたり深く業務に組み込むことで真の効果が得られます。いまも「DX推進」の掛け声の元で様々なツールが出てきていますが、RPAを導入してちょっとした手作業を自動化しただけでは(業務の効率化にはなるものの)変革とまではいかないのではないでしょうか。その手作業が発生している大本が何かを突き止めることが大事だと思います。

みなさまのビジネスは、トランスフォーム(変革)しているでしょうか。一度立ち止まって考えてみるきっかけにしていただければ幸いです。

---------
みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!

タイトル画像提供:tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

#COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?