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「日産e-シェアモビ」活用からみた未来のマイカー所有形態

2020年は、世界で強化される燃費規制をクリアーするために、日本の自動車メーカーからも次々と電気自動車(EV)の発売が計画されている。それに伴い、マイカーの所有形態にも大きな変化が訪れることになりそうだ。

EVとカーシェアリングとの相性は良く、都市部のマンションやアパートに住んでいていてマイカーは月に数回しか使わないケースでは、カーシェアリングでも事足りてしまうし、郊外に住み「日常の足」としてマイカーを複数台(夫と妻用で2台)所有しているケースでも、近隣にカーシェアリングのポートができると、マイカーを1台に減車しても、生活に支障が無くなるケースは多い。

これからの普及が見込まれるカーシェアリングサービスの形態は「マルチポート型」と呼ばれるもので、出発地でレンタルした車両を目的地のシェアリングポートで乗り捨てることができたり、1枚の会員証を持っていれば、移動先で異なるカーシェアリング業者の車両も借りられるようになる。つまり、シェアリング車両がインターネットのように連携し合うことで、利便性が加速度的に高まっていく。

日本ユニシスでは、そうしたカーシェアリングシステムのプラットフォーム「smart oasis」を開発しているが、以下のように多様なカーシェアリングの利用形態を描いている。

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スマートオアシス・カーシェアリング(日本ユニシス)

日産自動車が2018年1月からサービスを開始した、メーカー純正カーシェアリングサービス「NISSAN e-シェアモビ」にも、スマートオアシスのシステムが導入されているが、特徴的なのはカーシェアリング利用時の会員認証と、車両ドアの解錠・施錠システムとして「運転免許証」が使われていることである。

事前の会員登録と車両の利用予約を済ませたユーザーは、予約日時にe-シェアモビのステーションに停められている車両のリアウインドウにに設置されたカードリーダーに運転免許証をかざすだけで、ドアが解錠される。車両に乗り込んだら、ダッシュボードに収納されているスマートキーを取り出して利用するという流れ。

そのため、ユーザーは事前の会員登録さえ済ませておけば、全国に拠点が広がっているe-シェアモビのステーションで車両を自由に借りられるようになる。将来的に、他のカーシェアリングサービスとも連携すれば、会員ユーザーは運転免許証を所持しているだけで、全国各地のシェアリング車両を自由に使えるのはかなり便利だ。

ただし、現状で指摘されているカーシェアリングサービスの欠点は、利用需要が多い週末や行楽シーズンには、なかなか車両の予約が取れないこと。NISSAN e-シェアモビでレンタルできる車両は、最新型のクルーズコントロールシステムやオートパーキング機能を備えた「リーフ」と「ノートe-POWER」であることから、試乗目的での利用も多いのだ。

また、週に数回以上の頻度で利用をしたいユーザーにとっても、年間トータルでみた利用コストが高くなってしまう。NISSAN e-シェアモビの利用金体系は、15分単位のショート利用、6時間、12時間、24時間単位のレンタルを選択できるが、1回12時間×週2回のペースで利用するようなケースでは、同じ車種をマイカーとして購入したほうがトータルコストは安くなる。

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そうした視点からすると、NISSAN e-シェアモビ会員ユーザーの中では、最新型EVに乗ってみた時の感動体験から、マイカーとしての購入を検討する層も、一定数は出てくるのではないかと推測できる。自動車メーカーとしても、レンタル料金設定のさじ加減で、「レンタル→購入」に誘導しようとする思惑はあるだろう。

カーシェアリングの利用は、「車両の予約時間帯に自分のスケジュールを合わせる必要」があり、マイカーのように「自分の都合に合わせて、いつでも自由に車両を占有できる使い方」とは、根本的に異なっている。

カーシェアリングとマイカーとの比較は、車両の維持費用から議論されることが多いが、人生で最も大切な「時間」を買うという視点からみれば、忙しい人ほど自分専用車の費用対効果は高くなる。どちらが良い、悪いということではなく、自分の仕事や生活スタイルに応じて、総合的にメリットが高い自動車の使い方を選択していくのが、これからの賢いマイカー所有形態といえるのだろう。

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