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休刊日の新聞社は何をしているのか?――日経電子版のカイゼンです

こんにちは。コンテンツマーケティング担当の渡部です。きょうは新聞の休刊日です。お手元に朝刊が届かず、ご不便をおかけしました。毎朝早くから新聞を配達してくださっている販売店の慰労のため、新聞を印刷する輪転機のメンテナンスのためなど、さまざまな理由があります。

一方、新聞社に休みはありません。日経は最新のニュースをお届けするべく電子版を日々アップデートしています。やることはニュースの品ぞろえを更新するだけではなく、品質のアップデートにも及びます。実際何をしているのか、その取り組みを一部紹介します。

「オーディエンスエンゲージメント」を高める

日経電子版をより多くの方に読んでもらう。新聞休刊日は紙の読者を集客するチャンスでもあります。日経電子版のアクセス傾向をみると、朝6時から徐々に増えていき、8時前にピークを迎え、9時に一旦落ち着きます。このことからビジネスパーソンの始業前、紙の朝刊と同じような読まれ方をしていると推察できます。

ニュースを期待して日経電子版に来てくれた人を満足させたい。満足しているかどうか判断するには、たとえば「一度の来訪でたくさん記事を読む」「記事を保存する」などが考えられます。ほかにも判断指標はたくさんあるのですがそれらを総合して、ユーザーとの絆(=オーディエンスエンゲージメント、AE)を高めることを目指しています。

AEについて、弊社でいち早くデータ活用に携わってきた山内秀樹デスクは以下のように説明しています。

オーディエンスエンゲージメントの定義はそれぞれ会社ごとに違います。弊社にとっては、毎日読者の方に日経のサイトを訪れてもらって、解約せずに読み続けていただくことだと考えています。そのために、いろいろな行動データや属性データを統計分析しているのですが、(中略)、平日毎日サイトを訪れてくれる人は特に貢献度が高い変数であるといえるのです。

平日毎日サイトを訪れてくれる人が何を期待しているのか?そのニーズを仮定し、検証しながらラインアップを考えています(どういうラインアップが読まれているのかは後述します)。

見出しのパターンテストで品質を高める

ラインアップの改善もさることながら、並べたときの見栄えはもっと重要です。ここでいう見栄えとは(1)見出し(2)サムネイルのことを指します。

コンテンツの中身は同じでも、見栄えによって読まれ方は変わります。きょう山内と私で業務にあたっていた際、G20の記事についてどちらの見出しの方がクリックされる(読まれる)のか議論になりました。

(A) 米中にすくむG20 協調欠くリスクへの備え 財務相会議
(B) G20財務相、米中摩擦へ具体策欠く デジタル課税は前進

Aは「協調欠く」のように意義付けがちりばめられた、いわゆる紙面風の見出し。一方Bはこの会議でどんな議論があったのか列挙した見出しです。元の見出しはAでしたが、私はBの方が内容をイメージしやすくクリックされるのでは、と考えていました。

どちらの見出しがクリックされるか、ユーザーに決めてもらえばいい。そこでパターンテストです。2パターンの見出しが同数のユーザーに表示されるようにコントロールし、クリック率に差が出るかを検証。クリック率が高い方が勝ちです。

結果は想定外でした。

(A)米中にすくむG20 協調欠くリスクへの備え 財務相会議

元の見出しの方が1ポイントほどクリック率が高い(有意差あり)という結果に。Aの方がスケールが大きそうだから?Bの「具体策欠く」が魅力的でなかったから?考えうる原因を洗い出し、よい見出しの知見を集めていきます(同様に実施しているサムネイルのパターンテストについては以下のnoteが詳しいです)。

ニュースの分かりやすさを高める(重要)

最終的に重要なのは記事一本一本の品質。そこで新しいコンテンツにもチャレンジしていきます。あすからこのアカウントで朝刊1面アタマ(トップ記事)の解説、NIKKEI Morning Briefingを試験的に連載します。

Morning Briefingとは
その日の朝、読んでほしいニュースの要点を簡単に要約したもの

先ほど触れた読まれるラインアップの一つがニュースの解説記事です。たとえば「イチから分かるブレグジット」が該当します。今回始めるMorning Briefingは少し趣を変えて、ニュースそのものの解説というより記事の理解の助けになるような解説にしたいな、と考えています。

よく日経の記事は難しいと言われます。役に立つ実感が得られず、残念ながら解約につながってしまうことも。せっかく安くない購読料を払っていただいているのだから、もっと気兼ねなく読めるコンテンツを増やしたい。そうした意識が日経の編集にも少しずつ浸透してきています。人間ドラマを通じて旬のテーマを深掘りする「ストーリー」はその例です。

Morning Briefingも若い人の役に立つコンテンツになるよう、たゆまぬカイゼンを重ねていきます。マガジンをのぞいてみてくださいね。