「抜く」「委ねる」「空ける」 〜「触覚のワークショップ」から体感した「オフにするスキル」の重要性
お疲れさまです。uni'que若宮です。
11/23-30の8日間、渋谷でART THINKING WEEKというイベントを開催しています。
このプログラムは、「五感」をテーマに現代アーティストによる会場での展示・公演に加え、アーティスト本人によるワークショップが体験できるというのがなかなかない珍しいイベントなのですが、
その中のひとつ「触覚」をテーマとした舞踏家の松岡大さんのワークショップに昨日参加しまして、そこで感じた意図を「抜く」スキルについて今日は書きたいとおもいます。
「抜く」ってむずかしい
ワークショップの中では、背骨を動かすワーク、というのがありました。これは寝転がったり四つん這いになったりして、お尻から玉が入って背中を通り、首から抜けるのをイメージして、背骨を波打つように動かしていくワークです。
イメージとしては、ブレイクダンスのアイソレーションやウェーブに近い感じでしょうか(ただ見た目を動かすだけでなく、玉が通っていく身体をやるので、正確に言えば少しちがうのですが)。
こんな感じ↓
で、これがめちゃくちゃ難しい…(松岡さんは勿論これをなんなくやられるのですが、)
まずお尻を上げ、腰、背中、肩と徐々に盛り上げる部分を移動させていくのですが、まったくできないのですね…。とくに上半身にいけばいくほど難しい…「全然だめだ!おれのからだは板か!!」と何度も叫びました。
何度かチャレンジして、最終的にも5パーくらいしかできなかったのですが、ほんのすこーしだけコツがわかったのでいうと、ポイントは盛り上げたい箇所よりも「他の部位の力を抜くこと」の方にあるのです。
お尻→腰と動かす場合、まずお尻を突き出し、そのあと今度は腰を上げていくわけですが、腰の部分に玉があるように見えるということは、さっきあげていたお尻の部分はするっと力が抜けて下がっていないといけないわけです。でもこの「さっきまで力を入れてあげていたところの力を抜く」というのが本当に難しい。
玉のある位置に意識を集中し、そこを動かそうとすればするほど他の部分の力が抜けず、全部がガチガチになってしまう。「意識して力を入れる」のに比べ「意識的に力を抜く」ということがいかに難しいか、それを思い知りました。
身体に「委ねる」
その他にも色々なボディワークがあったのですが、これもすごく難しかったのが、上半身と下半身を別々に動かすワーク。
ルールは簡単。まず、ジャンプしながら両腕と両足を開いたリ閉じたりします。ラジオ体操の「両足で跳ぶ運動」でジャンプの時に両手両足を開く運動があると思うのですが、そんな感じです。ただし、その時、上半身と下半身で少しちがう動きをするのですがそれが難しい。
たとえば、
・上半身は両手を「開く・閉じる・開く・閉じる」を繰り返す
・下半身は両足を「開く・閉じる・閉じる」を繰り返す
みたいなことをやるんですが、周期がちがうので、徐々にずれていくわけです。これもとても難しかった…。上半身も下半身もどっちも意識して動かしているとどうしても上半身と下半身が一緒の動きになってしまうw
すごく上手にできている方がいたのですが、コツを聞くと「どっちかを意識しない」ということらしいんですね。身体を動かす時、どちらも頭で意識して動かそうとするとだめで、上半身か下半身かを身体に委ねてしまう。そっちはほとんど自動運動的に動かしておいて、他方だけを意識する。
「空ける」から動きが生まれる
また、もう一つ印象的だったのが、あるワークで松岡さんがおっしゃった「身体を空ける」という言葉。どういうワークかというと、片足だけを地面に足をつけて、足の裏から地面とのつながりを感じつつ、片足だけで重心を支え、そちら側の手まで意識をつないでいく。たとえば左足を地面についている時は左側だけで体を支え、そちら側の身体だけを意識する。そうすると右側にはなにも力はかからず、ゆらゆらと自由自在に動ける感じになります。これが右側の身体を「空ける」という状態。
松岡さんは「たとえば器に水とかが入っていて、その器に何かを入れたいと思えば、一度空けないと入れられない」という説明をされていたのですが、たしかに日頃無意識に身体をつかってしまっている時には、つねにどちらにも中途半端に重みや力がかかっている状態です。こうして片側だけに重さを集中し、完全に片側を自由にすると「空く」という感覚がわかってきます。
アート思考でもよく「余白」という言葉を使うのですが、なにかあたらしい動きをする時には、「空いている」っていうことがとても重要なのですよね。
でも、日頃企業ではなんだかんだ身体が空いていないことが多い。
テレワークの普及など仕事の形は刻々と変化するが、大切なのは「ブルシット・ジョブ=どうでもいい仕事」を減らし、意味の実感できる仕事を増やすこと。これが働き方改革の本丸だ。
余白をつくるとは、
意識的に「オフ」にするマネジメントスキル
今回のワークショップを体験してみてすごく感じたのは、「何かをやらないオフの状態」を意識的にするのが実はすごくむずかしい、ということでした。
僕たちは仕事のときにはどうしてもオンモードになり、意識的にオフをするのがとてもむずかしい気がします。なにかをするdoingだけでなく、そのままにあるbeingということも大事、と最近ウェルビーイングの文脈で言われることもありますが、仕事するというとどうしても、なにか「する」方に意識がいってしまう。
冒頭の玉を通すワークがなかなかうまくできなかったように、どうしてもすべての部分に力が入ってしまって平板になったり、それ以外の部分の「力を抜く」ということができなくなっており、仕事のシーンでもしなやかに動くことができなくなり、創造性を下げてしまっているのではないか、と改めて感じました。
身体を別々に動かすワークでも、「意識的に意識をオフにする」ようなことがコツでした。身体に制御を「委ね」てしまえばいいのに、どうしても人は、両方を制御しようとしてしまって、こんがらがってぎこちなくなってしまう。
また、新しい動作をすっと起こせるためには「身体を空ける」感覚を掴んでいることも大事。片側の仕事をオフにしてしまうわけですね。
アート思考では組織について身体とのメタファーで考えることが多いのですが、たとえば組織をマネジメントする上でも、「抜く」「委ねる」「空ける」というのはこれからますます重要になるスキルなのではと改めて感じました。
組織の中で力を入れる場所だけを意識するのではなく、意識して力を抜く。そして入れると抜くを自在に変化させる。
あるいは頭(トップダウン)で組織の全体をコントロールしようとするのではなく、身体にコントロールを委ねてしまう。
また、新しいことを起こしたい時には一度重さや仕事からすべて解き放って身体の一部を完全に「空ける」。(新規事業とかやる時に「兼務」でやったりするのはやっぱりよくないんですよね)
むずかしいのは「意識してオフ」にすること。「意識してオン」は結構出来るんですよね。だからこそどんどんオンばっかりになって、かえって身体ががちがちになってしまう。よく、仕事では「頑張る」といいます。でもそうして「張って」ばかりいると、しなやかさがなくなってしまう。
そうしているうちに余白がどんどんなくなっていく。抜き、委ね、空いた身体を自由に動かせるスキル。意識的にオフにするスキルを身につけることで、自分らしい身体でいることができ(well-being)、これまでにない動きを生み出していく創造性を発揮できるのではないか。言葉で説明するのはちょっとむずかしいのですが、その感覚を実際に身体で「体感」できたことがとても大きかった気がします。
また、こういう体験をみんなで一緒にすると、身体を通じて場にいる人と繋がれる感じがすごくあります。その上で、場に「自由」が生まれてくる。そういう意味でチームビルディングやコミュニティづくりの上でも、触覚や身体のワークはとても良いと思います。
松岡さんのボディワークに限らずですが、アーティストのワークショップは日頃使わない回路を通すような体験になり、組織や価値観の凝りをほぐし、創造性を発揮できる身体(組織)をつくる上でとても多くのヒントをもらえるとおもうので、ぜひ一度体験をおすすめします。※ご興味ある企業があれば、アーティストにもお繋ぎしますのでご連絡ください!
(↓で他のアーティストのワークショップの模様もお読みいただけます)
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