「オールドノーマル」と化した生活様式を「ノーマル」に戻す計らいを
9月26日から新型コロナウイルス感染者の報告が簡略化され、リスクの高いカテゴリーに該当する検査陽性者のみが発生届の対象となりました。ちょうど1週間が経過したところですが、現場での状況についてお伝えしたいと思います。
9月1日の投稿でも明記しましたが、第7波は8月3日の38,940人がピークと推測され、その後お盆休み後に一時的に増加に転じたものの順調に減少し続けています。
私の施設では9月末までに発生届を出した患者さんは7月の10分の1、8月の7分の1と先月はかなり少ない状況でした。さらに9月26日以降は発生届の対象とならない発熱者は原則的に自身で検査を行い、陽性であった場合には登録センターに自己申告するような流れとなった影響からか、医療機関への問い合わせも激減しています。我々の負担が軽減するのは助かりますし、とにかく検査をすることだけが目当てで受診される方も少なくはなかったので、電話対応スタッフのストレスも軽減し、ようやく本来の医療体制に戻りつつあると感じています。実際の診療状況ですが、発熱で受診される方も少ないのですが、検査で陽性になった場合でもこれまで時間をかけて説明していた療養期間、接触者の対応、健康観察の連絡、必要時の処方、HER-SYSへの登録などが一切なくなり、患者さんに対しては登録センターへの登録をするように説明するだけとなりましたので「これまでの労力は何だったんだ」と少し気が抜けた感じもします(良い意味でとらえて下さい)。
また東京都は毎日16時45分に新規感染者数の報告を行っていましたが、これが厚労省からの発表に変わったことで、連日テレビで流してきた「ニュース速報」がすっかりなくなりましたし、新聞でも記事が小さくなったような気がします(今回も引用記事を探すのに苦労しました)。私はかなり前から依頼を受けた夕方の報道番組関係者の方に対しては「新規感染者数の報告に対する受け止めとその日の話題をいちいち有識者に問うべき必要があるのか?」「毎日毎日報告する意義はどれだけあるのか?」などと苦言を呈してきたのですが、この変化だけであっさりとやめてしまうところも何とも言えないもどかしさを感じます(続けて欲しいということではありませんし、ようやくなくなったという感想です)。
そういうことでメディアでの新型コロナの話題もすっかりと少なくなりましたが、最近取り挙げられたマスク議論に乗じて、私が以前より納得し難かった航空機内のマスク着用の義務化(実際に着用していないと注意喚起を受け従わないと降機を指示されることがある)に関して、知人の機長に率直に聞いてみましたのでご参考までにやり取りを以下に記します。
<質問内容>COVID感染対策として、御社は機内でも鼻と口を覆った状態で常時マスクをすること、それが寝ている間でもマスクをしていなければCAが声をかける、搭乗・降機の際には距離をとる、など搭乗するたびにしつこくアナウンスされます。もちろん会社の上には大きな官庁や民間航空協会?のような組織があるのでその指針に従わざるをえないとは思うのと他の旅客への配慮なのは理解できるのですが、半ば強制的でしかも「従わない場合は降機させる」とまでしなければならないのは適正な感染対策を逸脱しているようにも感じます。そもそも機内の空気は3分ですべてが入れ替わる環境は閉鎖空間ではありながらも換気がよくできている環境と思われ、CO2濃度も高くはないように感じます。航空機だけではなく公共交通機関での感染対策は不特定多数の人が密集する環境ですので過剰なくらいの方が安心感は高まるでしょう。ただ2年前と何ら変わりない対策、場合によってはそれ以上の対策は一部の人間にとっては不快に感じることもあり、場合によっては差別や人権侵害にも及ぶような気がします。このあたりの状況をどのように考えておられるのか、個人的なご意見を伺いたいと思いました。
<回答内容>それぞれ考えが異なる個人が数百人存在する機内の特殊性を、より深く配慮することも必要な視点かと思います。マスクの是非についての考え方もそれぞれ異なりますし、そのマスクに関しての考え方を周囲の人にも同調してもらいたい人も一定数いるでしょう。近傍のマスクをせずにいる人を気にする人が、直接もしくは乗務員を通して声を上げることもあるでしょう。声を上げるには気が引けるものの、SNSなどで呟いてみたり、ただ心の中で不快に思うだけの人もいることでしょう。一般的にはリスクが高いと判断したら、そこに留まらず移動するのが得策でしょうが、機内では各自座席が指定されていることもあり、移動はままなりません。私の考えとしては、リスクを科学的に鑑みてマスク着用をお願いしているのではなく、自分で声を上げることのできない方々への安心を分かりやすく提供したい、不安を少しでも解消したいという観点から、全社的に展開しているものと捉えています。貴殿の搭乗便で、もしかしたら遠く離れた席でマスクの着用に関して一部の人が不安に思うような事態が生じていなかったとも限りません。
そもそもアナウンスは貴殿のようにきちんと聞いていてくださる方もいますが、全くもって馬耳東風の方もいます。そのため、少々くどいアナウンスになっているものと思います。チーフパーサーの判断にはなりますが、全員がマスクを着用していただいている便の機内では、度重なるお願いのアナウンスは少ないのではないかと思います。法的には根拠薄弱ですし、貴殿の指摘のように法に抵触している恐れもありうるかと思います。会社として法務対策は抜かりがないでしょうが、コロナ禍における緊急対応の面があるでしょうし、後日の振り返りにおいて判断が異なることもありうると思います。
今出来ることを考えて、より多数のお客様のご利用を見込める対応を模索した結果が現在の状況なのだと考えます。
回答の内容はもっともであり賛同はできるのですが、やはり「感染対策」というより「不安解消」ということが目的だということがよくわかりました。そのような理解であれば、おそらくは新型コロナが世界から消滅するまでこのような対応を続けることになるでしょうし、そうであれば半永久的になるかもしれません。諸外国のエアラインが通常に戻り始めているのに日本のエアラインだけがローカルルールを貫くのも何とも言えないもどかしさを感じました。ローカルルールと言えば、先月の2つの国葬での参列者のマスク着用のあり方が物語っていたと思います。
今月からは水際対策も大きく緩和され、諸外国との往来が回復してくるでしょう。やはり諸外国に比べて日本はウィズコロナへの切り替えに遅れをとっているといわざるをえません。もちろん対策をおろそかにしてまでも追いつく必要はありませんが、いつまでも制限のかかった生活を送っていればそれが原因で生じる健康被害、社会経済の衰退は避けられません。ここでもう一度過去の記事を引用して提言したいと思います。
さらに学会のメーリングリストでいまだにこのような対応がなされていると知り驚きました。投稿した先生もどうしても納得できなかったのでしょう。
新型コロナ発生当初は「ニューノーマル」と呼ばれた生活様式ですが、2年が経過しすでに「オールドノーマル」と化している生活様式が少なくありません。やはり社会全体で「ノーマル」に戻していかなければならないと思います。