年度後半以降の経済・景気のポイント
大企業製造業の景況感、2期連続で改善 9月日銀短観 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
9月短観で大企業製造業の景況感が改善した背景には、供給網の改善等に加えてここ元の円安が寄与したと考えられます。実際、企業の想定レート調査を見ても、前回調査の1ドル132円台から135円台に円安修正されています。一方、大企業非製造業で改善した背景には、インバウンドの回復やコロナ指定感染症見直し後初の夏到来によるレジャー需要等が増加したことが予想されます。先行きについては、海外経済の減速が見込まれること等から大企業非製造業で低下が見込まれていますが、大企業製造業では小幅上昇が見込まれていますので、国内大企業の景況感は値上げで苦しい家計とは裏腹に、引き続き底堅く推移することが予想されます。
こうした中、世界の消費者物価は、国際商品市況の落ち着きやこれまでの金融引き締めを背景に、財価格の下落を主導に米国→欧州→日本の順番に急速に伸びが鈍化してきました。こうした中、よりコストプッシュの要素が大きい日本のインフレ率は、価格転嫁の遅れによりインフレ率の低下が最も遅れており、国内需給のタイト化や賃金上昇による内生的な物価上昇とはなっていません。
米国では、既に政策金利は上限近くまで来ており、年度後半以降もインフレ減速が継続することでFRBは当面政策金利を据え置くことが予想されます。10会合連続で利上げしてきたECBも当面金融政策は据え置きが予想され、来年後半以降は利下げに転じる可能性が高いでしょう。こうした中で日銀がYCC撤廃やマイナス金利解除に動くとすれば、景気回復の持続により来年春闘で賃上げの継続が確認される来年度以降になることが予想されます。
米国では、今後もこれまでの利上げの影響が見込まれる中、年度後半の米国経済は明確に減速局面に入ることが予想されます。ただ、労働市場の勢いが下支えすることで、景気後退にまで至る可能性は低いと想定されます。足元で悪化が目立つユーロ圏の景気ですが、今後はインフレ鈍化に伴う消費の下押し緩和、エネルギーの供給制約や価格高騰の緩和に伴う生産活動の回復により、来年にかけて幾分景気は持ち直すと見られます。こうした中、デフレリスクが高まる中で、政府の対応が鈍い中国経済が最大の懸念材料となるでしょう。
このように海外経済の減速が予想される中、肝心の日本の景気は相対的に底堅い回復が予想されます。背景には、コロナからのリオープンを原動力としたサービス消費の回復、政府の支援策の恩恵も受けたGX・DX・レジリエンス強化向けの設備投資、インバウンド消費の更なる拡大が期待されることがあります。また、世界的には依然として日本の主力産業である自動車のペントアップディマンドが旺盛なため、以上の状況を総合的に判断すれば、景気の腰折れは避けられると見られます。
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