ニュースと SNS の補完法…「エキスパート」の「リスト」
コロナウクライナパレスチナ・・・ややこしい問題が噴出するごとネットに飛び交う情報たちを、僕らはどう扱えばいいのかな? 「ニュースとSNSの関係」に絞って、ちょっと考えを書いておこう。(10/18追記)
基本
結論を先にかくと、基本の使い分けは
全体像=ニュース・新聞など
詳細= 旧ツイッター「リスト」機能的なもの
の順序だと思う。なぜなら、
全体=受動的に流入する情報=バランス&客観性が必要
詳細= 主体的に取り行く情報=目的ごとの専門性が必要
だから。
その逆=残念なSNSの使い方とは、例えば
全体像= SNS の偏ったタイムラインで「わかったつもり」になり
詳細=「自信満々のド素人」と化して変な発信を始める
などのパターンをネットでよく見る。
手法1.ニュースの使い方
1.全体把握のために、バランスと客観性を求めれば、新聞一択。ネットの情報も取材源はほぼ新聞テレビだし、ここ異論ないのでは。
問題は2=詳細の掘り方。そのために使えるのが、日経電子版「Think!」の「エキスパート」によるコメント解説だ。
たとえば、「なぜハマスの攻撃を許したのか 勝ち組イスラエルの失態」(10/12):
今回ガザ地区の件の直接的な原因は、まさに「なぜハマスの攻撃を許したのか」。記事では、編集委員による状況整理した記事があり、池内恵先生など「ひとこと解説」をして、報道と学術研究と、複数視点で見ることができる。これにより、「イスラエルの過信」というキーワードが浮かび上がってくる。
もしかしたら、今お読みのあなたは池内先生を嫌っておられるかもしれない。そこは問題ではない。大事なのは「信頼性の高い専門家を何人か集め、専門家の群れ、として眺めて、ざっくりな傾向を自分なりにつかむ」というやり方だ。
仮に「専門家だからといって全てに賛成する」のなら、宗教であって、専門家に対する態度ではない。
池内先生を嫌う方でも、「中東情勢を理解するために不可欠な専門家の1人」である点まで異論のある人は、あまり見かけない。僕の周りでも「中東はまずは池内恵先生を追っていれば最低限の見立てができるのでは?」というのがほぼ定説。
英語まで含めれば、まずはイアン・ブレマー先生を1人を追うといいと思う。SNSアカウントは、Linkedin365万、旧ツイッター75万、Facebook65万。短い一文に、「欧米世界はどう見ているか」を込める凝縮力がすごくて、達人の技を感じる。(フォロワー数の差から、欧米圏でのリンクトインの強さがわかる)
信頼できるかどうか?の見定めに、新聞のコスト/パフォーマンス(というかタイム/パフォーマンス)はとても高い。
手法2.「専門家の群れ」をカバーする
このような専門家たちを、「スタート地点」として選ぶことが大事。
なぜなら、ネットには「偏ったことを、自信満々に大声で勇ましく叫ぶことで、フォロワーを多数集めるアカウント」が多いから。このタイプを信頼してしまうのは罠。周りがみんな同類となり、気づくことが難しくなる(いわゆるフィルターバブル現象)。予防が大事。
そのために、「マトモな専門家の群れ」を把握するのだ。
「マトモな専門家」の特徴を考えると
専門家は、専門家同士でつながっている
専門家は、他の専門家をリスペクトしている
専門家は、公式な専門用語をきちんと使う
などがある。合理的論理的な論争はすれども、リスペクトなく軽蔑罵倒するようなマネはしない。SNS(だけ)で目立つタイプとはまったく違う。
逆に警戒すべきは「孤高な一匹狼」。ただし「専門家ではないネット有名人どうしで群れている」ことは多いので注意(後述する)。だから「良質な専門家どうしの群れ」であることが大事。
この「専門家の群れ」を効率よく把握するのに、旧ツイッターのリスト機能はとても便利だ。
(僕は、パレスチナ問題などについて、2020年のウクライナ侵攻初期に作ったリストをもとに、「地政学」と改名したリストのを公開しており、今140くらいフォローされてます ↓ ↓ ↓ ※直接フォローしていて重複を避ける等の理由でいれてない大物アカウントもわりといます)
https://twitter.com/i/lists/1495769321460891649
なお、この方法は、佐々木俊尚さんが2022年に『読む力 最新スキル大全』でも紹介していた。もともとはウクライナ侵攻が始まった少し後に紹介されていたと思う。
リストはSNSを効率化する
リストを作るメリットの1つに、「情報摂取のタイミングを自分でコントロールできる」点がある。
たとえば中東情勢について僕はリアルタイムで把握する必要はない。が、世界をみわたすために超重要で、「ざっくり、こういうこと」という見立てをしておきたい分野だ。
こういうテーマは、タイムラインに受け身でダラダラ流れてくるのではなくて、自分がとりにいきたい時に、とりにいけるようにしておく。
ついでにSNSについてオススメを書いておくと、
タイムラインを眺めるのに、スマホは使わず、大画面PC(かタブレット)だけにする
ツイッタは「フォロー先」画面だけを見る
スマホでは常に「おすすめ」画面が出てくるので「フォロー先」に毎回切り替える必要があるのだがが、PCブラウザなら最後に見た設定が残るので、切り替えの必要がない。
「おすすめ」画面もたまには見ると楽しいのだが、そこでもリスト内の重要投稿は結構表示されるので、見たくもないような変な投稿を見る割合が減ってくれて良い。(だからスマホで見る人でも、タイムラインを自己コントロールできる)
背景:"正義ポルノ"多すぎ問題
こうした使い分けが大事だと思うのは、ネット空間では、
「悪と正義」「敵と味方」など事態を単純に二分して
「正義の代表として悪を攻撃する」ポジションをとることで
「正義の味方でいたい大衆」にウケる
という扇動アカウントがともて多いからだ。
背景には「一瞬でスカッと気持ちよくなりたい人たち」が大量にいる。そのニーズに応えている。ある意味「正義ポルノ」のようなものだ。
すると、反発する敵も大量に集まり、バズる。しかも今のSNSエックスは、それによりお金までもらえる。SNSの仕組みが育てている。
たとえばパレスチナには、数千年単位で積み上がった複雑きわまわりない問題が積み上がり、もつれまくっていて、普通の日本人の理解を超えている気がする。しかし石油はこの地域に依存していて、石油以外まるでダメな現状、この地域に大金を払い、機嫌もそこねず(総合商社の担当者さんゴクロウサマです)、石油を売っていただくほかない。
にもかかわらず、こうした複雑な状況を無視/軽視して、事態を単純化し、歪めて、正義の代表ぶるようなアカウントもめだつ。
これら「ポルノ正義アカウント」は、たいてい、孤高の一匹狼ぽいポジションにいることが多い気がする。フォロワーが数百万レベルの著名人で、かつて何かの分野で実力があり、成果をあげ、尊敬された人物であっても、この罠に陥いることはありうる。自意識がインフレしてるのかもしれない。当人にとっての素人分野であっても、知的謙虚さがなく、「私はわかっている」と過信してしまうを。それを盲目的フォロワーたちが称賛するから、なおさら気付かない。
橘玲さんも『世界はなぜ地獄になるのか』ほか多くの著作で、正義の追求が快楽となっている状況を説明されている。
・・・
(*「X」と名乗るSNSについては、いまだにブランド名としてなじんでいない印象が強く、「旧ツイッター」で統一させていただきました)
(ちなみにトップ画像はスタジオのニュース感で選んだ、文字入れ承諾済)
10/18「COMEMO PICK」に選出いただきましたー(よくある)
11/2追記:「基礎から日経」賞 受賞
日本経済新聞とnoteの共同投稿企画「#ニュースからの学び」、2,552件中の5本に入りましたあー
11/2 基礎から日経 (日経電子版)掲載いただきましたああーーー