リアル開催を諦めないCESの勝算
新型コロナウイルスの新しい変異株・オミクロン株の流行が世界的に増加傾向ということだ。この変異株に対する警戒のため、一旦は緩んでいた新型コロナウイルスの警戒が強化されてきている。
たとえばフランスでは在宅勤務の義務化や集会等の人数制限が行われるということだ。
こうしたなかで、展示会やトレードショーの関係では、いわゆるダボス会議がリアル開催の延期を決めるなど、影響が出始めている。
こうした中で、まもなく1月に開催予定の CES は、執筆時点でリアル開催する姿勢を崩していない。
CES 自体はリアルに開催されても、リアル出展を取りやめる決断を、大手企業が続々と発表している。また取材するメディアの中にも現地取材を見送る決定を下している会社が出てきている。
こうした中で開催を決行する CES はどのような勝算があるのだろうか。
新型コロナウイルスの流行を経験し2年が経とうとしているなかで、我々が痛切に感じていることは、リアルにモノを見たり触ったりし、そして担当者など人と対面で話をすることによって生まれる価値には、オンラインでは代替しきれない部分がある、ということだ 。あるエレクトロニクス・メーカーの出展担当者が語っていたのは「こうした価値とニーズの存在がはっきりしたので、感染対策をしながら、それをどのように実現するかということを考えることが我々の課題であり、その取り組みはこの1、2年のうちに成果を出す形で試行錯誤することになるだろう」ということ。
しかし一方で、新型コロナウイルスもそうだが、他の伝染病・感染症の可能性も考えれば、多くの人にとっての感染症からの安全に対する対策がとられる必要があることは間違いないだろう。別な言い方をすれば、コロナ前のやり方で開催しても、それが人々を惹きつけるもの、次の時代のスタンダードにはならない、ということになる。
振り返ってみれば、2001年の同時多発テロ、いわゆる「911」以降、空港はもちろんだが、大規模な展示会や(海外の)ショッピングセンターなどでは、入口で来場者に対する手荷物検査や金属探知機での保安検査が当たり前になって、今でも続いている。これによって大規模に人が集まる場所での無差別テロを防ぐことが今では当たり前のことになった。
今回も同じように、新型コロナウイルスの経験を経ていかにして大規模な展示会やトレードショー等で、人々の健康面での安全を確保しながら開催を確保するかということに知恵を絞ることが求められている。911がきっかけで金属探知機や保安要員を新たに用意・配置することになったように、新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策として、どのような設備や人員を必必要とするかは、これからしばらく試行錯誤していくことになるのだろう。
その意味で、今年のCESが感染症に対してどのような配慮を行った上で開催を決行するのかは、出展内容もさることながら、今後の展示会やトレードショーの未来を占う上で、個人的に大きな関心事である。
私自身も、取りうる感染予防対策を取りながら CES の会場に足を運ぶ予定でいる。そこでどのような発見があるのか、変異株感染の可能性については少し怖いところもあるが、一方でどのような CES になるのかを見ることが楽しみでもある 。
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なお、日経新聞とJTBが共催する下記オンライン視察プログラムで、私はスタートアップに関して現地からのレポートを担当予定です。まだお申込みいただけますので、ご参加お待ちしています。