個人クリエイターが仕事を拡張していく5ステップ
新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

個人クリエイターが仕事を拡張していく5ステップ

別所隆弘

先日、ちょっと同業者の友人と話している時に、「別所さん、2022年は越境の時代になるってこの前書いてたけど、どうやって個人でそんな風にスケール感出せるんですか?てか、仕事って、そもそもどうやって拡大するんですか?ただの一クリエイターにとって、別所さんのいうような仕事の広げ方って割と難しいです」みたいなことを言われて、思わず「むむっ」と唸りました。

確かに僕は、割と上のようなことを言いがちだし、自分のキャリアパスを見返すと、ジャンルを越境しながら仕事の範囲をスケールしてきたので、嘘は言ってないんですが、そういう風に言われると、まるで自分がやってきたことをかっこよく肯定しているように見える言説を後付けで作ってるような気分になってきました

そこで今日は、組織に属さない一クリエイターが、どうやって仕事を拡大して行くのかについて、これまでやってきたことを具体的に思い返してみたいと思います。それはもう一つの話とも結びついてて、ちょうど上のような話を友人とした日の夜に、NHKの関西地域でやってる「かんさい熱視線」という番組で、「定年退職は何歳? どうなる私たちの働き方」というテーマの特集をやってました。

番組中で話されている「45歳定年説」は、サントリーの新浪剛史社長が去年提唱して、非常に話題を呼んだ話なんですが、番組では「45歳の働き盛りで定職をやめても、なかなか実際に次の仕事につけない」というような内容が具体例を伴って話をされていました。

コロナによってこれまでの職業の様相が大きく変わり、今後はどんどんと流動的になって行く中で、「個人」がどうやって潰れずに生き残るかというのは、よく考えるとかなり重要なテーマです。というわけで、前回の話を引き継ぎながら、

僕自身のキャリアが変貌して行く中で見えてきたことをいくつか書いてみようかなと。

(1)意識の変革

まず一番大事なのは、意識の変革です。ここが最初のステップにして、一番厳しい部分。特にクリエイターになってから気づいたんですが、クリエイターの多くの方は、その道の先端まで走っていってトップになって行くと、その自分の専門性にこだわりがちなところがあります。もちろんそれは無理のないことで、一つのジャンルのトップ周辺にいるのですから、その技術や経験には自信も自負もあると思います。でも断言しちゃいますが、その技術的経験的価値は相対的にどうしても低くなるのが、コモディティ時代の宿命です

本当にごく一握りの、それこそ歴史に残るようなレベルのクリエイターでもない限りは、全ての技術はコモディティになり、その結果、少なくとも労働という側面においては、ほとんどの人間や会社は「誰か他の人間」「どこか他の会社」で代替できる世の中になっています。瀧本哲史がかつて指摘した「人間のコモディティ化」ですね。

このことはSNS移行の情報が加速化した時代にはどうしても避けられない運命で、例外はどのジャンルにもありません。人間自身も含めて、全てがコモディティになります。

ですので、意識の改革が必要で「自分の持っている技術や地位はいずれすぐに誰かに代理される」という危機感にも近い前提は持っているべきなんです。

僕がプロとして仕事を始めたのは2017年の1月ですが、その一年前から徐々に仕事らしいことをする中で、僕が一番最初に気づいたのはそのことでした。自分のような大した技術も経験もない人間が生き残るためには、「写真」だけでは到底不可能だと。あれから5年で僕は、幸いSNSのフォロワーはある程度たくさんいてくださってて、いい写真を撮ることが幸運にもできれば、だいたいそれ経由でなんらかの仕事がくるような、そういう状態にあります。そのような恵まれた状態でも、クリエイティブだけで自分の収入を維持するのは、相当しんどいです。おそらくそれは、大半の写真系のクリエイターたちが感じていることではないでしょうか。

SNSで最も拡大したアートジャンルが写真系なのは皆さんもご存知と思いますが、スマホで誰でも綺麗な写真が撮れる時代に、写真だけのクリエイティブで生き抜くことはほぼ不可能に近い。それは他のジャンルのクリエイティブでも全く同じだろうことが推測されます。だから意識の改革が必要なんですね。(あるいは他ジャンルの知識を獲得していく、ってのは前回の話でした)

画像1

(2)アウトプットの柔軟性を獲得する

そのような意識改革を施すと、次第に仕事におけるクリエイティブの出し方も変わってきます。アウトプットの柔軟さが出てきます。

クリエティブにとっての一つの難問が、クライアントとクリエイターの間の意識の乖離です。それは前の記事にも書いたんですが、クリエイターは一つの技術を割と深くやった自負があるので、自分の制作品の価値を高く見積りがちです。

一方クライアントは、そのクリエイティブを使ってKPIを高めたいわけです。そのために代理店なんかを使って、クリエイティブが自分達にとって最大限の効果を発揮するための施策なんかを練るわけですが、クリエイティブを作るときにクリエイターが自分自身の形に固執しすぎると、事態が膠着しがちです。

もちろんこれは、クリエイターに常に折れろということを言いたいわけじゃないです。自負と矜持は捨ててはいけないものの一つだし、最低ラインを維持する美学というのは、クリエイターにとっての生命線だと思うんです。

でもそれと、お金をもらう仕事との間には、少し溝がある場合が多い。そこで、それをどうにかして埋めなきゃいけないんですが、上の段で「自分という存在はすぐに他の誰かに代理されるのだ」という危機感を持っていると、自分の色だけを押しつけるというような行為のリスクの高さを理解できます。

と同時に、自分がそのプロジェクトにおいて、ある程度「求められてその場所にいること」の意味を、自分のクリエイティブの中に還元する余裕も出てきます。こうして、クリエイター側の方が、ある程度クライアント側の意識や方向性を先読んで動く癖をつくと、アウトプットの柔軟性が生まれてきます

画像2

(3)プロジェクト全体における自分の位置付けを理解する

ここまできたら、「一クリエイターが自分の仕事を越境させつつスケールする」という流れの半分ほどは達成です。というか、もはやここまでで「意識的な基盤」は完成してます。あとはこの上に何を乗せて行くかなんですが、上の段で「アウトプットの柔軟性が生まれる」と書きましたが、その基底のところにあるのは、クライアント側の意識や方向性を、言われるままに従うんではなく、「先読みして動く」ことが重要であるってことです。これは言葉を変えると、「プロジェクト全体における自分の位置付けを正確に見抜く力」を持つことに他なりません。

それこそが自分のクリエイティブを柔軟にする基盤にあるんですが、そのマインドセットこそが、「プロジェクト全体を見渡す視野」を育みます。ほら、だいぶ話がスケールした気がしませんか?つまり、クリエイターがやること自体は変わらず、一つの制作物を作るだけなのに、見えてくる視野が一気に広くなった。

その新たに獲得した広い視野の中で、自分の制作物の意味や位置、全体における作用やその結果まで意識するように動き始めると、「一つの制作物を言われるままに作る」のではなくて、プロジェクト全体の構成を理解できるようなマインドセットを獲得できるようになります。クリエイティブを作るのは同じなのに、得ることのできる情報のレイヤーは一気に広がるんです。そしてそれが整った時、皆さんは準備完了です。

画像3

(4)全体の計画に対して意見やアドバイスをできるようになれば、あなたは「領域」を超える準備ができるている

コロナ禍にあって少しずつ増えてきたのは、zoomの会議などでプロジェクトのリーダーだったり、時には会社の社長だったりといった、決裁権を持つ人との直接的な会話の場面が増えたことでした。そう、(3)までのプロセスを経て、自分も含めた全体を俯瞰的に見る癖を獲得したクリエイターは、すでにその専門分野の知見をもとにした「ディレクター的な人材」へと変貌していきます。そういう人は、同時に「クリエイティブコンサルタント」的な動き方もできるわけです。ディレクションにせよコンサルにせよ、やっていることの大元は「自分がどこにいて、何をするべきで、それが全体にどのような寄与をするのか」という視野を常に意識して、それを目に見える形にすることですが、それは本当に意識の改革一つで獲得できる道筋なんです。

そのような知見を、直接決済者に対して話をしましょう。コロナ禍でそれが可能になったんです、zoom会議に社長とか部長いませんか?クリエイティブディレクターとかいませんか?その人たちに、あなたが見た「プロジェクト全体における自分のクリエイティブの意味」を言語化することは、あなたが思っている以上に、全体にとっては非常に貴重な意見です。文字化され、言表されたクリエイティブというのは、極めて有機的な形でプロジェクトに組み込まれるので、全体の効果を底上げすることに寄与します。そしてそのような発言を繰り返して行くことによって、キャリアは徐々にスケールしていきます。いつの間にか周りには、トップクリエイターだけじゃなくて、なんらかの組織のCEOだったり、なんらかのメディアの編集長だったり、そういうクリエイティブ自体がプロジェクトの一部になっているような人たちに対して、アドバイスを送るような立ち位置になります。

というのが、僕がこれまで仕事上で経てきた、そして実践してきたマインドセットのあり方です。さて、ここまで書いておいて、原点に戻りますね。初心はいつも忘れちゃいけないんです。

画像4

(5)原点に帰って、理想と矜持を高く持つ。社会を良くする意識を担う

原点は、「いいクリエイティブをする」なんです。そしてトップ近くまで登ってきた自分のクリエイティブに対して自負と矜持を持ち、そしてさらにより良いクリエイティブを作れるよう、自分の中に理想を持つ。仕事をする中で、時に妥協と言えるほどの歩み寄りをすることも多々あります。それは仕事だからです。でもそのような妥協は、あくまでもプロジェクト全体の利益を考えて行われたもので、あなたの本心ではないはずです。心の奥底まで妥協しないようにして、うまく割り切って、理想と矜持は大事に守ってください

そして同時に、「社会を良くする方向」に参与してほしい。アートやクリエイティブというのは、まさに心の自由が最後に残された場所です。その場所くらいは、「いいこと」「理想」「夢」「希望」のために残しておきたい。そして少しでも次の世代が息をつけるような場所を増やすことに、自分の存在を近づけておいてほしいんです。

これって実は、一クリエイターでありながら、ある意味ではベンチャーのCEO的な発想を身につけることでもあるので、今日の話の終着点なんです。あらゆる新しい企業の社長さんたちは、強烈な熱意で「少しでも自分の意識で社会を変えたい」と思ってる人が多いんです、本当に。なので、そのような振る舞いと意識を持つことは、クリエイターが仕事をスケールして行くときの、原点でありながら、究極でもあります

このような時代だからこそ、理想と矜持、それから社会に組み込まれてることの意識というのは、独立したクリエイターでも必要になってくるんじゃないかというのが、今日の話の落ち付け所でした。

というわけで、友人のYくん、参考になったでしょうか。あの時「うーん」と唸って話せなかった内容は、こんなことを考えてたんです。多分。

画像5


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
別所隆弘

記事を気に入っていただけたら、写真見ていただけると嬉しいです。 https://www.instagram.com/takahiro_bessho/?hl=ja

お暇なとき、またのぞきに来てくださいね
別所隆弘
フォトグラファー, 文学研究者。滋賀、京都を中心とした”Around The Lake”というテーマでの撮影がライフワーク。 Twitterはこちら https://twitter.com/TakahiroBessho