この記事の本論である住宅の効率については、住宅設計の基本思想が「夏の蒸し暑さ対策」であった日本では、既設住宅の多くが風通しが良い=省エネ性能に劣るという点は考慮しなくてよいのかしら?と思いますが、それは専門外なので申し上げません。ただ、少なくともドイツのエネルギー政策礼賛の部分は不正確な部分が多いですね。

>2015年、パリで行われた地球温暖化防止のための協定、すなわち「COP21」を遵守するために、各国は2030年までにCO2(二酸化炭素)の削減を行うことを定めました(2013年実績比)

→COP21は会議の名前ですので、言葉遣いを正確にするなら、「COP21で採択された『パリ協定』のもとに提出された日本の目標(2030年に2013年比▲26%の温室効果ガス削減)を達成するために」だという点はさておき、日本の2030年の目標達成を心配するのであれば、同時に、ドイツは足元、2020年の削減目標には10%近くも未達が想定され、目標を「無かったことに」という状況であることも書かなくちゃ。

昨年11月に、ボンで行われたCOP23にメルケルさんも来ましたが、2020年の目標が達成できないことは認め、「それはさておき」と、2050年に向けた大きな目標を語ることで批判をかわしました。

また、

>新しい再生可能エネルギーは7.5%程度です。これらのエネルギーが伸びていって、80%を超えるまでには何年もかかると、つい考えてしまいます。

この文章では再生可能エネルギーの導入量が80%超える日が来ないということを嘆いておられるようですが、重要な目標はCO2の削減量であり、再生可能エネルギーの導入はその手段です。政府が2050年に目指しているのも(これはパリ協定など対外的に出した目標値ではありませんが)「80%の温室効果ガス削減」です。再生可能エネルギーの導入量について語っているのか、CO2の削減量についているのか、執筆された方ご自身も混乱しておられるように受け取れます。

いま、国連の気候変動交渉(COPとCOPのあいだの小さな会議)のため、ドイツのボンに来ていますが、この季節のドイツは本当に素敵です。魅力的です。そのためでしょうか、ドイツの政策や政府発表をうのみにする方があまりに多いように感じます。

あくまで政策の評価は政策の評価として行うべきですし、エネルギー政策は自国の「ライフラインの確保」です。日本ほど、「他国が」や「世界の潮流」といった生半可な言葉をつかってエネルギー政策を語っている国を他に知りません。今回、ドイツのヒアリングでもCDU系シンクタンクのエネルギー政策担当者に「エネルギー政策はコスト。産業界の競争力や国民の生活。その次に安全保障。環境は副産物」とはっきりと言われました。自国の中に大量の褐炭を持ち、他国と送電線も天然ガスのパイプラインもつながっている彼らだから経済性>安全保障>環境という表現になったでしょうが、なんの化石燃料資源も持たず、他国と連系も持たない日本は安全保障>経済>環境とならざるを得ないでしょう。

いろいろな制約の中でどう持続可能な政策を打っていくかです。

他に学ぶ姿勢は重要なので、他国の成功も失敗も冷静に評価すべきであり、無責任な他国礼賛は控えるべきだと思っています。

https://toyokeizai.net/articles/-/219498?page=3

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