見出し画像

結婚式をオンラインで挙げるという新常識

 新しい生活様式では、グループや集団ができるイベントや会合は、すべて自粛の対象となり、ビジネスの会議、スポーツイベント、コンサート、結婚式や葬儀などもビデオライブ配信で行われるケースが増えてくるだろう。その変化に対して衰退していく事業者が大量に出る一方で、新ビジネスも登場してきている。

結婚式場やレストラン運営のサウスオーシャンズ(千葉市)は、ウェブ上で結婚式に参加できるサービスを導入した。新型コロナウイルスの影響で大人数が集まる挙式を見合わせる動きが広がっており、遠隔でも参加できる仕組みで感染不安の解消につなげる。日経新聞2020/5/26

米国コロラド州デンバーを拠点に、2017年に創業した「Wedfuly」は、ビデオ会議システムのZOOMを活用したオンライン結婚式の運営会社で、カップルが親族や友人をオンライ上に招待してバーチャル結婚式を挙げることができる。ZOOMのシステム自体は、無料で利用することもできるが、ビデオ配信中に起こりやすい技術的なトラブルを回避して、円滑に結婚式が行えるように、式のプランニングから進行までを遠隔でサポートするのが同社の役割である。

オンライン結婚式の具体的な段取りは、式の2週間ほど前からカップルとWedfulyの担当者が事前にZOOMで打ち合わせをしながら、招待客のリストや当日のイベントメニューを作成する。メールやSNSメッセンジャーなどで通知を受けた招待者は、指定の日時にログインをすると、ビデオ画面上の結婚式に参加することができる。

Wedfulyの担当者は、カップルとは異なる場所でオンライン待機しているが、カメラとマイクが正しく設定されているのかをチェックして、カップルや司会者の画面上にポットライトを当てたり、結婚の宣誓を行う時には参加者に音声のミュートを促すなど、円滑な式の進行をサポートする。

このサービスは、全世界に住む結婚カップルに対応しており、基本料金は800ドルの設定。さらにオプションサービスとして、サプライズビデオの制作(500ドル)、ビデオ機材のレンタル(350ドル)、結婚式の会場にカメラマンを派遣すること(400ドル)、オンラインでバンド演奏を付けること(200ドル)などにも対応している。

もともと、Wedfulyが手掛けるオンラインウエディングは、地理的な条件で会場まで行くことができない親族や友人でも、オンラインで式に参列できるように考案されたものだが、パンデミック後は「結婚式の新形態」として注目されるようになっている。結婚式にかかる費用を大幅に抑えつつ、ライブストリーミングの技術的には、最大1000組(1000台のデバイス)までの参加者を招待できることも、オンライン結婚式の利点になっている。

米国で結婚するには、各州の役所で結婚許可証(Marriage License)を取得した後、牧師や神父の前で宣誓をする「結婚式」を行わないと、法的な婚姻が認められないのが、伝統的な慣習になっていた。しかし、ニューヨーク州では新型コロナのロックダウン(都市封鎖)に対応して、Zoomなどのビデオ会議システムによるオンライン結婚式を認める州令を4月に出している。こうしたニューノーマル(新習慣)は、コロナ収束後も踏襲されることとなり、結婚式のスタイルは変化していくことになるだろう。

結婚情報誌のゼクシィによると、日本では結婚式(挙式と披露宴)にかかる費用は約340万円が平均値だが、オンライン結婚式であれば、その費用を10分の1程度にまで抑えることができる。コロナを転機として、結婚式の価値観や常識が変わることを想定すれば、Wedfulyのようなビジネスが日本でも成り立つ可能性はある。

画像1

■関連情報
アフターコロナに訪れる生活新様式のビジネスモデル
バーチャル住宅展示場によるマイホームの販売手法
コロナ失業者を救済する従業員一時雇用仲介ビジネス
感染対策として開発される非接触型サービスへの業態転換
JNEWS公式サイト

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。また、JNEWS会員読者には、コロナ危機に立ち向かう副業の立ち上げ、経営者の事業転換や新規事業立ち上げなどの相談サポートも行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?