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外国人材が日本で働きたいと思う魅力をつくれているか?

「外国人材=中国」は過去の話

少子化による人口減少に起因する人手不足のなかで、外国人材を幅広く受け入れようという動きが進んでいる。その中で、日本で働きたいと考えてくれる国が時代とともに変化している。
10年ほど前は、外国人材というと中国と韓国の出身が多かった。しかし、近年では東南アジアからの人材が増えているという。特に増加傾向にあるのが、ベトナム、ミャンマー、ネパールだ。特に、ミャンマーとネパールは今から10年前に低廉な人件費を求めて、新たな生産拠点を築こうと多くの日系企業が直接投資に乗り出した国だ。これらの国から、日本で働きたいと外国人材が増えている。日本で働きたいと考える理由はシンプルで、母国で働くよりも日本で働くほうが賃金が高く、稼ぐことができるためだ。日本で稼ぎ、母国に住む家族に仕送りとして送られる。
そうして、自国が経済発展し、豊かになると日本で働く魅力が減り、出稼ぎのような人々が減ることになる。一時期はあれだけ多かった中国と韓国からの外国人材が減ったのは、日本で働く経済的なインセンティブがなくなったためだ。

東南アジアでもタイ、フィリピン、インドネシアは来ない

同じ東南アジアでも、タイ、フィリピン、インドネシアからの外国人材はベトナムやネパールと比べるとそう増加傾向ともいえない。インドネシアに至っては、2016年と2017年に急激に増えたが、2018年から減少傾向に転じている。

タイ、フィリピン、インドネシアは、自国での経済発展も進み、日本との所得格差も埋まってきている。すでに大企業の管理職層の給与水準でいえば、これらの国は日本よりも好待遇だ。そうすると、ITエンジニアのような高度専門人材をこれらの国から期待することは難しいだろう。

ただでさえ、日本企業での勤務では「日本語が必須」というハンディがあるなかで、国際労働市場の中であえて日本を選ぶ理由が見当たらない。

東南アジアの人々にとって日本は魅力的な労働場所か

現状では、多くの外国人材が日本で働くインセンティブとして、母国よりも高い給与水準を主目的としている。しかし、これから人手不足を外国人材で埋めていかなくてはいけない日本において、所得格差をインセンティブとして誘因するという戦略で本当に良いのだろうか。

日本は観光地としては世界的に評価され、毎年、多くの外国人観光客が訪れている。一方で、日本での労働に対するイメージは悲観的だ。 "KAROSHI"(過労死) という日本語は英語となり、日本の超過労働体質と人権を軽視した労働環境を指す言葉として定着してしまった。
また、東南アジアには大戦時の置き土産となる、日本の悪いイメージもある。それが "ROMUSHA"(労務者) だ。第二次世界大戦中に日本の占領下で現業系労働に従事した外国人のことを指し、東南アジアは激戦地だったこともあって、悲惨な労働環境が続いた。日本人ですら酷い有様あったのだから、現地採用された外国人労働者への待遇は言わずもがなだ。インドネシアでは「日本は独立のための戦い方を教えてくれたのは良かったが、その代わり、たったの数年なのにオランダの数百年を上回るほど厳しい統治で鬼のようだった」という現地人は多い。
そして、1960年代に日本企業が東南アジアに再進出してきたとき、「企業戦士」と呼ばれた日本企業の働き方は、やはり現地採用のスタッフにとって鬼のように見えた。
つまり、東南アジアの人々にとって、歴史的問題だけではなく、戦後の日本の企業戦士文化も相まって、非常に働く環境としてのイメージが悪い。そのようなイメージの悪い国で、優秀な人材が働きたいと積極的に思うだろうか。

これから、人手不足社会に陥る中で、日本社会は外国人材との共生を本格的に考えていかなくてはならない。その中で、所得格差に起因するインセンティブでは限界がある。特に、高度な専門性を有した人材や、熱意のある優秀な人材を求めるときには、経済的なインセンティブでは不十分だ。
優秀な外国人材に、自分が活躍する労働環境として選んでもらうために、働き方のグローバル改革が求められている。

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