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バレンタイン2025最前線!カカオ価格の歴史的高騰の影響は?
チョコレート屋さんにとって、一年間で最大商戦であるバレンタインデー。専門店に至っては、この期間に年間売上の半分近くを売り上げることもあります。カカオ豆の歴史的高騰により、チョコレートの価格上昇が叫ばれ、消費者動向が不安な今年のバレンタイン商戦に関して最前線で感じたことをお伝えします。
バレンタインの起源は?その市場規模は?
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チョコレートが1年間で一番売れるバレンタイン時期。
世の中にたくさんのチョコレート商品が登場して、幸せな気持ちになります。
そんなバレンタインデーですが、その起源をたどると、古代ローマの冬至祭の一つ(ルペルカリア祭)が原型になっていると言われています。ルペルカリア祭はカーニバルの一種で、古代では男女の出会いを促す土着の祭り(どんちゃん騒ぎ)でした。
時を経て、ローマ帝国にキリスト教がもたらされると、異教の祭りを問題視する声が挙がり始めます。そして5世紀に、ローマ教皇グラシウス1世は、ルペルカリア祭の前夜祭(2月14日)を3世紀の2月14日に殉教したと伝えられる“聖バレンタイン”のための祝日とする決定したそうです。
日本ではどうかというと、1958年にメリーチョコレートが伊勢丹でバレンタインフェアを開催し、1960年には森永製菓が週刊誌の広告でバレンタインチョコレートを告知するようになったことから今の流れが生まれたといわれています。当初は各社とも、女性に特化した販売戦略があったわけではなかったそうですが、チョコレートの購買層には女性が多かったことから、「愛の日」に「女性から愛を告白しチョコレートをプレゼントする」という日本型の習慣が定着していきます。
ぜひ詳しく知りたい方は、MinimalのJournal記事を参照してみてください。
さて、そんなバレンタインデーですが、各百貨店や商業施設で大規模なバレンタイン催事が全国で開催されています。
正確な統計データを探すことはなかなか難しいですが、バレンタイン期間中の日本に経済効果はここ数年は1,000億円程度を推移しているといわれています。たった2週間強でそれだけの経済効果を生むバレンタインはやはり日本における一大イベントなんだと思います。
カカオ豆の歴史的高騰って?
カカオ豆の歴史的高騰
2024年の1年間は、カカオ豆の急激な高騰が世界中を騒がしています。コモディティのカカオ豆の先物市場の価格は、23年末から高価格を更新し続けて、1年間で約3~4倍程度にまで上がり続けました。24年4月中旬には、史上最高価格を更新し、1トン(1,000㎏)あたり価格が12,000㌦を超え、銅よりも高いという衝撃が世界中に大きな話題を呼びました。
4月中旬をピークに少し価格は下がりましたが、12月にまた上がり、25年に入っても、いまだに8000~9,000㌦/㌧前後の高価格を維持しています。(23年前半は3000㌦/㌧前後でした)
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カカオ関係者の誰一人としてここまでの高騰を予想できていなかったように思います。カカオ・チョコレートのブランドとして、一つの歴史的な転換地点にいると強く感じています。
Minimalは、この先物市場で決定するコモディティよりも品質の高いファインカカオ豆を買っているため、Minimalにも当然この影響は強くでており、買付の価格は非常に上がりました。
高騰の背景①:気候変動
今回の歴史的高騰は、複数の要因が複雑に絡みあい、起こったものです。
まず1つ目の要因として、気候変動によりカカオ豆の収穫量が減少です。特にたった2か国で世界のカカオ生産の約6割を占める、生産大国のコートジボワール(生産量1位)とガーナ(生産量2位)の収穫量が3割~4割ほど減少したことは価格高騰に決定的な影響を与えました。
両国共に気候変動の影響(エルニーニョ現象による気温上昇など)が主な原因だと言われています。
加えて、西アフリカ地域では大雨による洪水にも見舞われて、大幅に収穫量が減少しました。
気候変動による影響と断言はできませんが、上記主要2か国を中心にブラックポッド病カカオポッドがカビにより黒く変色し腐ってしまう病害)と呼ばれる病害も拡がりを見せています。それが収量不足に拍車をかけました。
高騰の背景②:カカオの木の寿命
続いて2つ目の要因は、一大生産地の西アフリカにおいてカカオの木が生産年数としてちょうど寿命がきており、植えかえる必要があるということも関係していると言われています。カカオの木の生産年数は25年~30年といわれており、主要産地である西アフリカ地域でこの寿命のサイクルがちょうど近づいているようです。カカオの木を植え変えて、すぐに収穫ができるものではなく、収穫までに数年かかります。このことからも、今回の不作は一過性の影響ではなく数年以上の長期的な減少を予想しながら世界が動かないといけないと思われます。
高騰の背景③:政情不安
3つ目の要因として、カカオ生産世界2位で約20%程度を占めるガーナの政情不安が上げられます。ガーナは日本との結びつきも深く、日本に流通しているチョコレートの6割程度がガーナ産とも言われています。ガーナでは政府機関であるCOCOBOD(ココボード)が農家からカカオ豆を買い付けて、国が海外に流通させているのですが、実はガーナは少し前から政府がデフォルト(債務不履行)がおこしており、そもそも政府が買付の資金が少なく、農家が生産したものが買えず、国内でダブついてしまっているという話があり、不足の状況に拍車をかけてしまっています。加えて、ガーナ国内では金の違法採掘によるカカオ農園の減少が起こっていたり、政情が不安定な影響がカカオにも拡がっているようです。
チョコレートの値上げ率
カカオ豆の歴史的価格高騰を受けて、初めてのバレンタインが2025年2月でした。すでに24年年末から各社が値上げを発表しておりました。
実際にバレンタインにおけるチョコレートの値上げ率はどの程度かをお伝えすると、(恐らく)ボンボンショコラ一粒で前年から平均5.8%値上がり。同一パッケージ(内容量が変わっているものも含めて)で前年から平均9.1%値上がりというデータがありました。詳細は以下の統計データを参照ください。
Minimalはボンボンショコラは25年バレンタインに初めて商品開発したので、前年比較ができませんが、扱っている商品全体で前年より平均8%程度値上げをさせていただきましたので、このデータ数値は妥当だと思います。
実際にバレンタインの催事を見渡してみたり、各社の担当者の皆さんと話した感じでも大体1割=10%程度上がっているという肌感覚を持っていますので、そこからも妥当な数字だと考えいます。
つまり、各社商品価格が1割程度値上げして商品を投入しているということ
です。
Minimalは内容量や含有カカオ量を減らすことはしていないですが、各社内容量を減らして、価格の値上げ幅を抑えると努力をしていることが多かったと感じました。
今年のバレンタイン傾向
カカオ豆価格の歴史的高騰に端を発して、チョコレート価格が値上げしている2025年のバレンタインですが、その中身というか実態の傾向はどうだったのかを、最前線に出店していた僕の所感からまとめます。
キーワード① ライブ感!
各百貨店などの催事売り場ではこぞって、パティシエが手作りする「実演販売」でライブ感を演出する傾向がより強く感じられました。
その場で仕上げるアシェット・デ・セール(皿盛りスイーツ)の提供や、カカオやチョコレートを使った料理の提供で、目で見て、購買意欲を高める工夫でお客さまを呼び込む傾向がより一層強くなりました。
人気店は数時間待ちの行列にもなって、よりその場で楽しむライブ感が強くなったと思います。
以下記事に各催事の具体例が載っていますので参照ください。
Minimalも阪急うめだ本店で、Minimal麻布台ヒルズ店で提供しているコースを出張出店しました。かく言う僕自身もコースを実際に阪急でふるまってきました。
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キーワード②焼き菓子
統計データがあるわけではないですが、今年は各社焼き菓子がラインナップとしてとても多くなったと感じました。やはり、原材料であるカカオ豆の高騰により、チョコレート含有率が少なく、利益率が高いチョコレートの焼き菓子を各ブランドがこぞって出すという形になりました。
原材料の高騰という面のみならず、現在焼き菓子自体がトレンドやブームになっているので、消費者サイドしても需要があるという点もあると思います。
キーワード③海外勢のボンボンショコラ価格高騰
カカオ豆の高騰に加えて、円安の影響が大きくありました。バレンタインの定番と言えばボンボンショコラです。一粒単価も高く、高利益商材です。
この時期のバレンタイン催事に上陸する海外勢は、今年は原材料高騰と円安で軒並み価格高くなりました。中にはアソートで1万円を超えるものも。
以下の記事になる事故案件のものも、ひと箱1万円以上するといわれている高価格がものだったようです。
そんなボンボンショコラの価格上昇の中で売上を伸ばしていたのが、ケーク類です。だいたい竿の形状で1本3,000円~4,000円前後で、ボリュームがあり、人気が高かったと感じました。
バレンタイン商戦の所感
実際にMinimalのバレンタイン時期の売上はどうであったかというと、大変ありがたいことに、前年比を上回って好調を維持することができました。
出店させていただいた各百貨店の担当の方から口頭ベースでお聞きする速報も、(いまのところは)前年割れてしているというものより前年よりも売上を伸ばしたというポジティブなものが多いです。
カカオの歴史的高騰から始まったチョコレートの値上げを経た初めてのバレンタインでしたが、全体を見渡してみると、お客さまも反応も落ちることなく、盛り上がり、数値ベースでも少しは安心できる結果であったと思います。
本当に良かったです。多くのお客さまに感謝致します。
最後に、この歴史的な節目に、ビジネス全体構造や、自分たちが提供したい価値を考えるタイミングではないかと自問する大きな転換の時だと実感します。
チョコレートは嗜好品です。もしかしたら、生活上なくても成り立つものです。今回のカカオ豆の高騰を端にして、チョコレート価格が高くなったとして、お客さまに選ばれるものであり続けられるかはとても重要な問題です。
廉価なお菓子チョコレートから高級ショコラまですべからくビジネスを見直し、値上げをせざる得ない状況です。これはMinimalも例外でなく、とても厳しく経営の根幹を揺るがす事態といえますが、カカオとチョコレートが本当にお客様にとって必要なものかが問われる状況は、確実に何かしらチョコレート業界を変えるきっかけになると思います。
今回、やはり多くが、カカオの含有量を減らしたり、代替油を使ったりして、値上げ幅を抑える努力をしていました。
Minimalは値上げ幅を、製造工程の改善と利益幅の削減の自社努力で抑えつつ、カカオを減らすしたり、代替油を使うことはせずに、より良質なカカオをより美味しくとどけるという方針を貫きました。
これは、どちらも正解だと思います。
しかし、一方で、お客さまの立場に立つと、これまで食べてきたチョコレートが今までの価格で気軽に手に入らなくなるというお客さまへの影響もあると思います。
その時に自分たちの提供するチョコレートの価値は何か。
カカオとチョコレート産業が抱える問題をどう解決しながら、サステナビリティを担保していくのか。
この歴史的な節目に、そこを徹底的に考えて、実行したいと思っています。
この先も、生産者と消費者、そして社会にとって意味と価値があるチョコレートを届けられるブランドになれるように一生懸命努力したいと決意を新たにしました。
※Minimalチョコレート
まだまだチョコレートが大活躍する時期です。
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