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"Let's work it out on the remix"

ラップ界ではメンズたちのビーフが盛り上がっている一方、女性アーティストたちの「和解」がポップス界の大きなニュースになった。 Charlie XCXの"Girl, So Confusing"のリミックスに参加したLordeのバースは胸が痛くなるほど赤裸々で、業界を揺るがした。

チャーリーのアルバムに関しては全て良すぎて言いたいことが山ほどあるけど、特にこのリミックスは本当に衝撃。さすがLordeの作詞力、摂食障害や精神的な問題の話をしているのにCharliのポップ文脈に収めつつ、聴く人がカタルシスを感じるように苦しみをブッ刺してくる。

"It’s you and me on the coin / The industry loves to spend"というリリックは特に秀逸で、音楽業界では女性同士が「敵」として競争させられ、見た目や音楽性で雑に括られ、代替可能・使い捨てのように扱われ、意図的に両者が成功できないように仕向けられていることを歌っている。

女性アーティストたちは、内心同じような苦悩や葛藤を抱えているのに、音楽業界の人々やファンによって比較・競争をさせられ、自分でもそれを内面化していってしまう。でも理解し合えば本当は仲間であることがわかるし、最後は「チャーリー、あんたに一生ついていく」と友情の絆で締めてるのが最高。

内省的で赤裸々な心情を歌う、いわゆる「セラピーポップ」がしばらく流行っていてだんだん飽きられてきている今、このようにポップな曲調やクラブミュージックの文脈から外れず、「楽しさ」をキープしながらも愛やリアルさを客演バースの中で築き上げられるスキル。名曲として語り継がれるでしょう。

Guardianの記事より「恐ろしくリアルな紛争がニュースを席巻する中、この問題の解決は、たとえ小さなものであっても、丁重で感動的だ。2人の和解がこれほど力強く感じられるのは、このようなライバル関係がタブロイド紙の世界を超え、アートの中にまで折り込まれることはめったにないからだ。」

「ポップスにありがちなセラピースピークやパフォーマティブなブランド・マネジメントではなく...彼女らの率直な告白を聴いていると、何かとてもリアルでプライベートなものに立ち入ったような気分になる..自分らで作詞作曲し、歌うことで、非常に強い(ナラティブに対する)決定権を持つ。」

急速なスピードでポップスがどんどん「メタ」になっていることを実感する。「過剰なリアル」が求められ続けるけれど、「計算されたリアル」はもう需要がない。(洋楽においては)「共感」とか「エンパワメント」の限界も既に見えてきているし、この曲がその転換点を描き出していると思う。

アリアナの”boy is mine”のリミックスに元祖boy is mineのBrandyとMonicaが参加、インタビューでもこの曲の制作を通して和解を深められたとも話していて良い話。結局女性同士を敵扱いしたり、外部の人がヤイヤイつけ込んでいたのが元凶だったと。

「仕事でもプライベートでも、私たちの関係に他人を巻き込まないこと、そして彼女と私だけの関係性を維持することが重要だとわかりました。(それがわかったら)全てが変わった」



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竹田ダニエル
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