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一つの会社では生き残れない時代の到来 #複業の教科書

昨日より連載をスタートしている #複業の教科書全文連載

連載第2回となる今日は、第一章『一つの会社では生き残れない時代の到来』をお送りします。

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一つの会社、一つの仕事だけでいい時代は終わった

「複数の会社から給料をもらいたいと思いますか?」

 こんな質問をされると、ちょっと考えたあとに、ほとんどの人が「はい」と答えると思います。

 もっとお金が欲しい。

 それは、だれもが当たり前に思うことです。

 今までは、一つの会社で真面目に働きさえすれば、いつかそれなりの給料をもらうことができる、というのが当たり前でした。

 あるいは、今の会社に不満があるなら、もっと条件のいい会社に転職すればよかったのです。

 しかし、今は同じ会社でそのまま働き続けても、あるいは転職や起業をしても、給料が上がるのか不透明な時代になりました。

 そこで、本業を続けたままお小遣い稼ぎができる副業、あるいは新しく稼ぐ力を身につける「複業」(副業と複業の違いについては2章で詳しく解説します)が注目され始めています。

 そして、まさに今、企業も政府も「副業解禁」へと大きく舵を切ろうとしています。

2016年の「ロートショック」で副業解禁が加速

 かつて日本企業のほとんどが、従業員の働き方のルールを定める「就業規則」の中で、「副業禁止」を明記していました。

 働く側の個人も、「就職したら、その会社に尽くすのが仁義というものでしょう?」という価値観を長らく共有してきました。

 この本を読んでいる皆さんの親世代には「定年まで一つの会社で働き続けてきた」という方が多いのではないでしょうか。

 一社一生。そんな価値観が世の中全体でよしとされてきたわけです。

 ところが。

 ここ数年、ネットニュースや新聞で、「副業解禁」の見出しを頻繁に見かけるようになりました。

 比較的早くから導入していたのは、サイボウズやヤフー、ソフトバンクといったIT系の企業。

 特にサイボウズの青野慶久社長は、複業によって社員一人ひとりが豊かなインプットを得られる利点や、柔軟な働き方によって優秀な人材を集められる成長戦略としての利点を自社メディア「サイボウズ式」や、SNSなどで積極的に発信し、世論を盛り上げてきました。

 しかし、この段階ではまだ「副業解禁なんて、一部のIT系の企業だけの話でしょ」という冷ややかな目線を送る人が多数派でした。

 風向きが大きく変わったのが、2016年6月。東証一部に上場している製薬会社大手のロート製薬が「副業解禁」を発表したのです。

 ええ?!あのロート製薬までが?

 それまで副業解禁を「対岸の火事」と遠目から見ていた企業はざわつき始めました。

 その後、業種をどんどん広げる形で、副業解禁を発表する企業は続き、ついに国家公務員の副業を認める方針を検討していることが2018年6月に明らかになりました。

大手企業や公務員も副業解禁をすすめる理由とは?

 しかも、副業解禁を発表した企業から聞こえてくるのは、「新卒・中途ともに、採用マーケットでの人気が高まった」「離職率がかえって下がった」「社員のモチベーションが高まった」といった、ポジティブな声のほうが大きい。

 向こう岸で何やら赤々と燃えていたのは火事ではなく、〝お祭り騒ぎ〟だったことに、多くの企業経営者が気づき始めました。

 現在、副業を容認している企業は、大企業の一例を挙げるだけでも、表のように、こんなに広がっています。

 全体数としての増加もデータを見れば明らかです。

 2015年の調査では「副業を推進していないが容認している*1」と答えた企業の割合は14・7%だったのに対し、3年後の2018年に「副業を推進している」「副業を容認している」と答えた企業の割合は28・8%に。

 わずか3年で約2倍に増えているというのは、急速な変化が起きている証拠です。

正社員の88%が副業に「興味あり」と答えている

 また、個人側の動向においても、副業が〝自分ごと〟になる人は増えています。

 ランサーズの調査によると、2018年時点で副業従事者の数は744万人に。3年前の533万人から4割増という急増です。

(出典:フリーランス実態調査2018

経済規模で見ても、2・8兆円から7・8兆円と、なんと約3倍にまで伸びています。

 さらに、エン・ジャパンが20〜40代の正社員3000人以上にアンケートをとったところ、なんと88%の人が副業に「興味あり」と答えたのです。

(出典:正社員3000名に聞く「副業」実態調査

 まさに「複業(副業)が当たり前になる時代」はすぐそこまで来ている。そう言って過言ではないでしょう。

 それでも、「そんなに劇的には変わらないでしょう?」と首を傾げる人がいたら、僕は「クールビズの時を思い出してみてください」と伝えています。

 2005年夏、当時の環境大臣だった小池百合子さんの旗振りで始まった、社会的大キャンペーン「クールビズ」は、「夏場はシャツにノーネクタイで涼しく快適に仕事をしましょう」という、今や多くの企業で当たり前の職場習慣を日本中に浸透させました。

 逆に、それまでは、「どんなに暑くてもスーツのジャケットを着る」というのがサラリーマンの常識だったのだと考えると、不思議な気持ちになりますよね。

 たとえ180度転換であったとしても、誰もが納得できる合理的選択であれば、あっという間に広がって、皆にとっての〝新しい当たり前〟になる。

 この事実は、すでに日本社会に暮らす全員が目撃し、体験してきたことなのです。

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第2回はこちらです。

▼第2回:副業「禁止」から「解禁」へ


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