リスキリングで労働市場は流動化するか
リスキリングでAI人材育成、140社が実施 日経スマートワーク調査: 日本経済新聞 (nikkei.com)
今回打ち出された総合経済対策では、これまでの賃上げ促進税制の活用促進や、中小企業の事業再構築や生産性向上支援などが打ち出されています。これは、家計の収入を増やすことで、実質的な負担軽減を狙ったものと推察されますが、この効果が出るかどうかは来年の春闘の結果次第でしょう。
一方、民間エコノミストの予測を集計した物価見通しによれば、来年も家計1人当たりの負担増加額が、プラス1.5万円程度になると計算されることからすれば、来年の春闘で賃上げ率を最低でも3%程度に引き上げることが求められるでしょう。しかし、アベノミクス下でも2%台前半までしか上昇しなかったことを考えると、それぞれの企業が実際にどう対応するか次第というところでしょう。
こうした中、「新しい資本主義」を加速させるとして、リスキリング(新しい知識や技術を習得すること)や転職までを継続して支援する制度の創設など、「人への投資』の関連政策を5年間で1兆円に拡充することや、成長分野における大胆な投資の促進、包摂社会の実現、も今回の総合経済対策では盛り込まれています。
しかし、例えば成長分野に転職するためのリスキリングは、企業が従業員のそうした活動をどう支援するのか、新たなスキルを得た人材をどういった形で受け入れるのかで効果も違うでしょう。また実際に労働市場の流動性が高まり、賃上げが高いスキルの人材を惹き付け、企業の生産性もあがってさらなる賃上げが行われるという好循環が実現するかどうかは、率直にいって未知数と言えます。
となると、本気で労働市場の流動性を高めて賃上げに取り組むのであれば、更に大胆な労働市場改革が不可欠でしょう。
具体的には、正社員の解雇ルール明確化や転職者に対する所得税優遇などにより労働市場の流動化や活性化をすすめることが同時に必要だと思います。しかし、今回の総合経済対策では、こうした点にまでは踏み込まれていません。
そして、『人への投資」は成果がでるまでに時間がかかることや、成長分野における大胆な投資の促進等も中長期的に支出される可能性が高いことからすれば、短期的な経済効果は未知数と言わざるを得ないでしょう。
このため、今回の総合経済対策重要なのは予算規模ではなく、どれだけ賢く支出をして需要を創出できるかということでしょう。