EU予算の成立までの紆余曲折
EU議会は欧州評議会から2021年から27年のEU予算の承認を得た。総額1.8兆ユーロにのぼるいわゆるEU予算には、Next Generation EU(NGEU)の7500億ユーロと、新規の7年にわたる1.1兆ユーロが含まれるものである。
欧州救済パッケージを実施するには、加盟国からの批准が必要だ。しかし、今般、ハンガリーとポーランドが反対しており、目先の予算承認の可能性は低下している状況にある。ハンガリーやポーランドなど中欧諸国はEU復興基金の条件に“EU基本理念に違反した場合の、EU予算の配分の減額・停止”が盛り込まれていることから猛反発している。2国はEU予算への依存度も高いため、予算の確保は必要なのに対し、それぞれ強権的政党の政権維持のためにも、復興基金の条件変更が必須なのだと思われる。最終的には、予算決定には持って行けるであろうが、妥協点の模索には時間がかかると思われ、年内の承認は困難であると考えられる。
現在考えうるポーランド・ハンガリーとEUの合意シナリオは3つ。①現在の予算案(EU救済基金に関する条件)を修正、②EU救済基金をEU予算から切り離し、2国を除いた政府間予算として別途通す(ESMと同様のプロセス)、③EU高度化協力スキームで、少ない加盟国で救済基金の承認をする、のいずれかである。
そもそも予算が通過したことのほうが大きな難関であったこと、欧州は復興基金や雇用に関するSUREプログラムなど共同でコロナ禍を乗り切ろうと結束している最中であること、から、欧州にとって然程大きなリスクでもない。そうはいえ、EU予算承認の遅延は短期的に周辺国のスプレッドのワイド化(価格低下)材料になることは見ておきたい。次回会合は12月10日~11日のEUサミットとなる。油断は禁物である。