自分だけが幸せになって、周囲の人は不幸になってしまう「悪い幸せ」
コロナ禍で、コミュニケーション量が減って、働く人や学生のストレスが高まっています。人は、社会的な動物として、孤立すると、どうしてもストレスが高まってしまうのは、自然の摂理です。
それでは、単に人と人が触れ合って、沢山話をすればそれで良いのかというと、そう単純でもありません。
日立製作所フェロー矢野和男さんの著書「予測不能の時代(2021年5月)」では、以下の内容が紹介されています。
組織、チームの幸福
職場でのウェアラブル端末による行動把握と、質問表による主観評価を組み合わせた大量データから、コミュニケーションの量と相手の人数は、職場の幸福感とは全く相関がないことがわかった。そして、ポジティブで幸せな職場には4つの特徴があることが明らかになっている。
■ 幸せな組織の特徴
1. 人と人とのつながりが特定の人に偏らず均等である
2. 5分程度の短い会話が高頻度で行われている
3. 会話中は相手の動きと同調して動いている
4. 発言頻度が平等である
チームメンバーが、各自バラバラに会話が出来る関係にあって、会議体に依存せずに気軽に話し合えていて、相手の話をしっかり同調しながら聞き、発言量に偏りが少ない組織は、幸福感が高いのです。
つまり、コミュニケーションの総量に焦点を当てるのではなく、フラットで共感性が高く、気軽に話し合える組織と環境を整備することが重要なのです。
コロナ禍では、気軽に話し合える環境が減っているので、無理やりにでも作り出していく必要があります。
そして、幸福感の高い組織は生産性が高く、事業成長に貢献することもわかっています。企業経営において避けては通れない課題です。
個人に潜む悪い幸福
上記は組織全体の幸福の観点ですが、個人に絞ってみると別の側面が見えてきます。
人の話はろくに聞かず、微塵も同調せず、自分ばかり話をしている人が存在しているのです。その人自身は、特に不幸を感じることはありません。
そして、そういう人が所属する組織は、必ず組織全体の幸福感が下がります。「自分は幸せでありながら、周囲に不幸を振りまいている」ことになります。
組織から幸せを奪い、状態を悪化させている人は、一説には全体の3割程度を占めているそうです。かなり高い確率で、そこかしこにそういう人は存在していることになります。
そして、組織の、社会の生産性を下げているのです。
由々しき話ではありますが、犯人捜しをする前に、まずは、自分自身がそうならないように、発言のバランスに配慮しながら、相手の話に同調しながら会話をすることを心掛けていきたいところです。